別れと予感
そして、ルカは朝日と共に古城に戻った。リュウはルカの帰りが遅いのを心配していたが、無事なのを見て安堵していた。
ユーリはリュウがすぐに助けたお陰で無事だった。これからずぐに麓の町へ出発出来る。ルカ達は古城から出て馬車を走らせた。
そして、ユーリ達とそこで別れると、ルカ達はその足で教会へ向かった。リリアのロザリオを返す為だ。ルカは神父にリリアの話をした。神父はリリア自身は知らなかったが、この教会が吸血鬼に襲われた話は知っていた。その頃は神父自身は産まれていなかったというので、リリアは長い間吸血鬼として存在していたのだろう。
ルカはリリアのロザリオを返すと、リリアの遺灰を見せた。リリアが最期に祈る姿を見ていたルカは、形だけでもいいから元居たこの教会で弔って欲しいと話したのだ。
本来、吸血鬼は教会のような聖域には入れてはならないのだが、リリアの話を聞いた神父が、リリアのお墓を造るのを提案した。リリアの灰は庭に埋められ、立派な墓石が建てられた。
「リリアさんに神の救いがあるかは分かりません。私に出来るのはこれだけですから。」
神父は完成したお墓を見ながら、ルカにそう言った。
「吸血鬼というのは悲しい存在ですね。ですが、それと同時に人々の生活を脅かす存在でもあります。隣町では吸血鬼が出没していると聞きます。吸血鬼狩りのお二方、その吸血鬼の退治をお願い出来ませんか?」
神父の頼みにルカとリュウは頷いた。
「分かりました。我々がこの町に蔓延る吸血鬼を退治します。」
「ありがとうございます。」
ルカとリュウは神父に挨拶をすると、吸血鬼が現れるという町の中心部へ向かった。
その町は、山に囲まれていたが、ルカが今まで行ったどの町よりも栄えているように見えた。
ルカはそこである人と出会った。それはリンとミミという姉妹とジョンという青年だ。三人は一つ屋根の下で暮らしている。
「この町に現れるという吸血鬼を知らない?」
三人は顔を合わせて考え込むと、ルカとリュウが吸血鬼狩りである事に気付いた。
「吸血鬼狩りの方でしょうか?実はあなた方に伝えたい話があるのです。」
ルカとリュウはジョンに招かれて家の中に入った。
三人の家は簡素な造りだったが、必要最低限の物があった。二人は椅子に座って三人の話を聞こうとする。
その時だった。何かの気配を感じたルカは辺りを見回した。だが、ルカを含めた五人以外はそこに居ない。
「どうしたんだ?」
「私が、いや、私を探している人がここに居る…?」
ルカはその人が居ないのを確かめると、改めてジョンの話を聞いた。
「それで話って何?」
「この町に古くから伝わる吸血鬼の物語です。」
ジョンはその物語をゆっくりと語り始めた。それを聞いてルカは驚いていた。何故ならそこに登場する吸血鬼こそがルカが追っている存在、ベルモンドだったからだ。