古城の少女
ルカ達はその古城の中に入った。中は薄暗いが、朝までは過ごせそうだった。ルカは、ランタンを着けて奥へ向かった。すると、中に誰かが居るのに気付いた。
「ここまでよくいらっしゃいましたね」
誰も居ないと思っていたこの古城に人が居た。その人は女性で、ルカと同じくらいの背丈だった。
彼女はリリアと名乗った。どうやらこの城で一人籠っているのだそうだ。リリアはルカを部屋に招いた。この古城は古びた家具が置かれている以外は空っぽだった。とても人一人が暮らせそうな環境ではない。リリアは、ルカ達を快く中に入れたが、ルカは彼女を不審に思った。
リリアは、蝋燭で周囲を灯した。ベッドは古いが、全員分あった。これで今夜は眠れる。寝床の場所を確認したルカは、リリアの方へ向かった。
何かないかとリュウは食料庫を探したが、そこは空だった。
「リリアさんは食事はどうされているのですか?」
リリアは首を振った。何も食べていないという事だろうか。それにしても、この森には食料になりそうなものはない。ここで何も食べずに一人で居ては飢え死にしてしまうはずだが、リリアにはそのような素振りはない。
今日は山を抜ける予定だった為、何も食料は積んでいなかった。仕方ない。今日は食べずに寝て明日の朝早くに出発するしかない。
その日の晩、ルカは眠れなかった。ルカは布団から顔を出して皆の様子を眺めていた。
その時だった。ルカの背後から叫び声が聞こえた。ルカがそれを探ろうとしたその時、誰かがルカの首筋に触れた。ルカがそれを振り解いて背後に向かうと、そこには、首筋を噛まれたユーリが倒れていた。入口の方から誰かが走り去る音がする。
「リュウはユーリさんの手当てをお願い!私は吸血鬼を追う!」
ルカはそう言うと外へ飛び出した。残されたリュウは、鞄から注射器と薬瓶を取り出し、その中身をユーリに注射していた。
外は真っ暗だった。ルカはそこから誰かを追っている。この森に吸血鬼が出るのは本当だったのかとルカは思った。そして、ルカはその吸血鬼を探して殺さなければならない。ルカはランタンを手に森を駆け回った。
そして、森の開けた場所で何者の姿を見た。ルカがその場所照らすと、そこには口元に血が着いたリリアが立っていた。リリアが吸血鬼だと察したルカは腰からナイフを抜き取り、リリアに向けた。リリアはそんなルカを見て、逃げようとも襲おうともせず、じっと立っていた。