劇団桜町
それから、家に帰ってからも飛鳥と優斗は劇団桜町について考えていた。初めての演目に取り掛かる時はいつもそうだ。二人は劇団桜町の中でも重要な存在だ。
「リュウは和人がやるって言ってたな。」
優斗はそれぞれの役割が書かれた紙を見ながら、何かを考えているようだった。
「そういえば飛鳥、劇団桜町ではルカの最期のシーンまでやるのか?」
「みんなにそれが伝わるかどうか分からないから、ベルモンドを倒したところで終わろうと思うの。」
「そうだな…。でも、俺はルカが処刑されるシーンも大切だとは思ったんだ。吸血鬼退治という物語の都合上、残酷なシーンは避けられないよな。」
「御伽噺でも残酷なシーンはあるし、小学生には分かりにくいという理由で話を省くのは良くないかもしれないね。」
飛鳥と優斗の話し合いの結果、劇団桜町ではルカの最期まで演じるようになった。
「そういえばこの話のタイトルは何にするんだ?」
「まだはっきりと決めてはいないけど、『吸血鬼退治屋ルカの物語』にしようかなって思ってるんだ。」
飛鳥はそう呟いた。
それから、優斗と飛鳥は夕飯と風呂を済ませた後も劇団桜町について話し合っていた。
「他の準備もある。練習期間は短い。瑞穂が校生と編集を終えるまで動けないが、それぞれの役割を把握しておかないとな。」
飛鳥は優斗の話を聞きながら、ノートを開いて何かを書いていた。また夢の出来事を思い出したのだろうか。飛鳥は、夢に居るルカの話を聞けたら良いのにと思っていた。
翌日、飛鳥が教室に入ると、既に瑞穂達団員が入っていた。
「みんな、それぞれのパートの台本が出来たよ!」
飛鳥は、瑞穂からノートと台本を受け取った。
「飛鳥ちゃん、ノートありがとう!あの後パソコンでデータにして、いつでも見られるようにしたんだよ。」
他の団員達も瑞穂から台本を受け取った。
「流石、国語の成績学年トップなだけはあるよ。」
「桃ちゃんは音楽造ってるの?」
「やっと取りかかったところ。毎回思うけど難しいね。音楽の先生に頼んで既存の曲を使えるか頼んでみようかな。」
飛鳥はその台本を早速読んだ。飛鳥が見たぼんやりとした夢は、瑞穂の手によってしっかりとした輪郭を持った。これで、今から個人練習が出来る。
それから、飛鳥達は勉強以外の暇な時間を全て劇団桜町に注ぎ込んだ。本番までは時間は短い。その時間を最大限に使うようにした。
飛鳥達が準備するのは台詞回しだけではない。衣装や音響、大道具等の舞台セットも準備しなければならない。特に、舞台のセットは大仕事だ。そこは、優斗達男子団員の出番だ。彼らは自分の役を練習しながらそれに取り掛かっていた。
一ヶ月後、遂に劇団桜町の公演の日になった。飛鳥達はこの日までずっと準備をしていた。瑞穂がインターネットで宣伝をした甲斐もあって、客は今まで以上に集まっていた。大勢の客を前に飛鳥は緊張していたが、それを押し殺した。まずは自分達で楽しもう。そして、集まってくれた全ての人を楽しませようと意気込むのだった。




