君の願いは
ベルモンドは本気を出すと言っても何も変わっていないように見えた。いや、そう見せているだけだろうか。ルカはナイフを構えてベルモンドに向かっていった。
「流石だ、それでこそ私の孫だよ。」
ベルモンドは、平然とした態度でルカの攻撃を受け止めた。ベルモンドの剣とルカのナイフがかち合う。二人の激戦の間には誰も割り込めないだろう。
すると、ベルモンドがルカから離れた。一体何をするつもりだろう。ルカは身構えた。その時、ベルモンドは手から蝙蝠を纏った炎を繰り出した。それはルカを焼き尽くそうとしていた。ルカは慌ててそれを避ける。
吸血鬼はその力が強くなると魔法が使える。ルカはそれを知っていたが、あまり使う所は見た事はなかった。まさか、ベルモンドが魔法を使えるとは思えなかったが、それだけベルモンドの吸血鬼としての力が強大なのだろう。
ベルモンドが魔法を使えるのならば、自分も使えるかもしれない。そう思ったルカはベルモンドのように手をかざした。すると、青い波動がベルモンドに向かって飛んだ。ベルモンドはそれを剣で弾く。ベルモンドのものとは違うものだったが、ルカにも魔法が使えるようだった。
「御伽噺に出てくるような便利なものとはいかないわね。」
ルカは残念ながらそれを使いこなせなさそうだった。魔法に頼らずにベルモンドを倒したい。そう思ったルカは、吸血鬼としての力を更に覚醒させた。
吸血鬼としての力が強くなる程人間から遠ざかり、吸血衝動が高まるとされている。吸血鬼の力を扱う人間はルカ以外にも居たらしいが、皆最終的に人間を失い吸血鬼になってしまったそうだ。
それでもルカが人間を失わない理由は、リースの耐性もそうだが、ベルモンドの力が強いのも影響している。そして、ルカの決して吸血鬼にはならないという意思が、ルカの人間の形を保っているのだろう。
今のルカには怖いものなどなかった。ベルモンドの攻撃も読めるようになった。ベルモンドは、だんだん自分を追い詰めているルカに驚きながらも、その成長を喜んでいた。
そして、ルカはやっとの思いでベルモンドの心臓にナイフを突き刺した。ベルモンドは驚いていたが、何故か笑っている。
「大人になったな、ルカ…」
心臓から血を流しているベルモンドはその場に倒れた。
「ようやく私が終わるのか…。私は、ルカに殺されるのが本望だったのかな…。」
ベルモンドはそう誰にも聞こえない声で呟いた。
朝日が昇るのが見えた。ベルモンドは灰となっていく。その灰をルカは一掴み取り、袋に入れた。
「お祖父ちゃん…」
ルカはその場に跪き、崩れ込んだ。顔にあった痣は消え、代わりに戦いの傷痕が着いている。ルカの意識は朦朧としていた。
「ルカ!大丈夫か?!」
倒れそうなルカの前にリュウが現れ、その身体を受け止めた。どうやら、ルカが姿を消したのに気付いて探していたらしい。
「ありがとう…、少し休ませて」
ルカはリュウの腕の中で倒れた。一晩中戦っていたのだ。かなり疲れただろう。リュウは、そんなルカを抱えて、ジョンの家に戻った。




