吸血鬼騒ぎ
これは、現在からそう遠くない過去の物語だ。ヨーロッパにある今はイギリスと呼ばれているこの国は、かつてこの世ならざるものが大勢存在していた。その中には、人を襲うものもあった。
その中でも特に人々が恐れたのが吸血鬼の存在だった。彼らは元々人間だったが、何らかの原因で死に、そして蘇ったものだ。彼らは人やその他の動物の生き血を啜り、死に至らしめる。また、吸血鬼に襲われたものの中から新たに吸血鬼になるものもあった。それもあって人々は吸血鬼を恐れていた。
そんな吸血鬼から人々を守るべく日々夜闇を駆け巡る存在が居た。彼らは“退治屋”もしくは『ヴァンパイアハンター』と呼ばれていた。彼らは騒ぎを聞きつけると、何処からともなく現れ、吸血鬼を狩るのだ。
その中の一人が今回の主人公ルカ・レイラだった。彼女はれっきとした女性だが、名前と風変わりな見た目のせいでよく男と間違えられている。
そのルカの相棒がリュウ・ルイスだ。リュウはアジア系の血をひく青年で、常にルカと共に行動していた。
この二人は、今宵も騒ぎを聞きつけて、ある人物に会っていた。そこに居たのは、ルークとユーリという男女一組だった。二人はどうやら、この山道を抜けてある町へ行きたいのだそうだ。ところが、この山には吸血鬼が現れるという噂がある。その吸血鬼を退治して欲しいというのが今回の仕事だ。
ユーリもまた女性なのに男性の名前を付けられたのだそうだ。話を聞けば、両親はずっと男と勘違いされて育てられたのだそうだ。両親は、ずっと男の子を産んだと主張するものだから、もしかすると親とは血が繋がっていないのだとユーリは思っている。自分と同じだとルカは思った。ルカはとある事情から血の繋がりという話が嫌いだったのだ。
そんな話はルカにとってはどうでもよかった。それよりも、この二人を襲おうとしている吸血鬼を見つけて退治し、二人を目的地へ送り届けるのが責務だ。ルカとリュウは二人が乗る馬車に乗り込み、山を抜ける。
その日の山は深い霧に覆われていた。馬車はそこを進んでいくが、中々進めない。
その時だった。霧の中に古びた城を見つけた。ルカはその城を不審に思うが、リュウは霧が晴れるまでその城に居たらどうかと言う。ルカは、仕方なくリュウに付いて行き、その古城に入っていった。