祝！グッバイ倶楽部パーティー（雨天決行現地集合、各自公共交通機関を使ってネ！）
「システム領域……至高の救世主たる山形公平様が本来座していらっしゃる究極的高次元に一度帰省なさるのですねああ私も叶うならば同行したいできれば使徒達も連れてシステムを司るコマンドプロンプトとしての御方の有り様やお姿をこの目に焼き付け未来永劫讃え伝え広めそして語り継いでいきたいですがそれはさすがに只人の身では許されないことなのでしょう私も伝道師なればこそ理解しております人の身にて踏み入ること許されぬ領域があると残念極まりないですがその分今まさに目の前にいてくださる救世主様の存在がどれほど奇跡的なのかを改めて思い知り私は再度畏敬と尊敬と愛情と好意と忠誠と忠義とそして伝道への熱き想いと篤き使命感を禁じ得ません」
「本日何度目！？」
俺がシステム領域へと一度、還りますよーっていう決意表明をしての伝道師さんがこれである。飛ばすねー今日も。
取り調べも終わったし話し合いも終わって駐車場にて、警察本部を出てみんなでじゃあ帰ろっか！ という空気になり始めた矢先に句読点さんが先にお帰りになられてしまったみたいだった。お疲れさまです。
まあとは言え、今日の予定はまだあるんだよね。それも仕事の関係とか堅苦しいやつとかでない、楽しい一時が。
そう、宴会──倶楽部案件完全終了を祝してのパーティーを開くんだね。前からやろうやろうって言ってた話を、いよいよ隣県は繁華街にある市場の居酒屋で行うというのだ。
ヴァールがベナウィさんやサウダーデさん交えて語る。
「当然ながら酒も交えるだろうし、そうでなくとも繁華街だ。車で行き来するのは常識的見地からも交通量の多さからも認められん」
「この間もミス・香苗の実家付近とか、あのへんはいっつも渋滞気味でしたからねえ」
「というわけで車で来た者は一旦帰ると良い。公共交通機関を利用するのだ。言うまでもないが飲酒運転など、何があろうと絶対に許さんぞ」
「酒を飲むなら車を運転しない。あまりにも当然の話ですね」
飲むなら乗るな、乗るなら飲むな──言われるまでもない話だけど、だからこそ繰り返し言わなきゃいけない話ではあるよね。
とはいえここにいる皆さんは揃って常識と良識を兼ね備えた探査者界隈の大御所さんが多く、そのへんはバッチリと認識して頷いていらっしゃる。
社会秩序と常識をきちんと護る正義の探査者さん達なのだ。
というわけで車で来た組は一旦自宅に戻って、その後電車なりバスなりタクシーなりに乗って現地に向かうことになる。
具体的にはスポーツカーで来た香苗さんとシャーリヒッタ、レンタカーらしい銀のワゴンで来た葵さんとエリスさんの二組だね。他の方々は宿が近くにあるから徒歩なりタクシーなりで来たみたいだった。
「ハッハッハー、レンタカー返すのに私いらないよね？ みんなで一緒に行きたいから葵とはここでお別れだ。じゃあね愛弟子、どうか末永く元気でやりなさいねー」
「はっはっはー！ 言って一時間くらいしたら再会するでしょ師匠ー。コンビ解消はまだまだ遠いですよー？」
「あ、オレも父様といたいから一緒にゃ戻らねーからな御堂香苗。急に現れて、しかもここまで連れてきてもらって悪かったな。助かったぜ、サンキュー！」
毎度お馴染み、と言えるくらいにはいつものことに思えてきた師弟漫才はさておいて。シャーリヒッタも香苗さんとはここで別行動を取り、俺と一緒に隣県まで行くみたいだ。
まあ香苗さんの家に行く必要ないしな、この子については。むしろ受肉した以上はそのまま俺の家に転がり込むんだろうし、そうなるとリーベ同様、山形家の一員として扱うのが筋合いってやつか。
あー、そう言えばこうなったら家族にも連絡しとかないといけないな。
こないだ親元に帰省した時にシャーリヒッタ絡みについては粗方説明したけど、さりとてそこから今日まで進行が早すぎる。
さぞかし面食らうだろうなあ、こんなに早く家族が増えるなんて。
しかも俺のことを父と呼ぶ自称娘だ。一応そのへんも説明はしてるけどいざ実際に見たらインパクトすごいだろう、なんせ見た目ほぼ同い年の美少女だし。
というかこれで父ちゃん母ちゃんが擬似的とは言えじいちゃんばあちゃんとか呼ばれてしまったら、あの二人白目剝いて泡吹くんじゃなかろうか。
怖ぁ……自称孫ができそうだよ、我が家。戦慄するものを覚えていると、香苗さんがにこやかにシャーリヒッタへと応えた。
「こちらこそ貴重な体験ができました、使徒シャーリヒッタ。あなたにも今後、救世主様の偉大さを世に広める使命を果たしてもらうことになりますのでよろしくお願いします」
「ん？ おう、任せてくれよ！ 使徒ってかオレは娘だが、だからこそ父様の素敵さ素晴らしさを世間に知らしめたい思いは人一倍ってやつだぜ！ なんならリーベよろしく歌って踊っても良いかもな！ ははは、オレのが人気出ちまうかも！」
「まさかのアイドルライバルー！？ くっ……こちらも負けていられません、ヴァール！ リーベちゃんとコンビ売りアイドルしましょうー！」
「ワタシを巻き込まないでくれ」
えぇ……？ シャーリヒッタまでアイドル路線行くの？ 供給過多じゃない……？
リーベもリーベで負けじとヴァールを巻き添えにしようとして素気なく断られているし、精霊知能三姉妹の愉快さが留まるところを知らない。
ますます賑やかになりそうだな、山形家。
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