神の降臨!概念存在の復権!真人類優生思想社会の構築!…………えっ、金目当て?
ダンジョン聖教周りについてはひとまずのところ、WSOが本部から支部までまるごと捜索の形を取ることとなり、神谷さんもそれを快諾した。
もはや疑われるしかない現状、少しでも身の潔白を示したい形だね。エリスさんに泣いて謝罪していた姿はやはり信じたいところだけれど、こればかりは客観的な捜査による判断を待つしかなかった。
「以後、ダンジョン聖教の扱いについてはワタシが預かる。また進捗があり次第諸君らにも伝えるのでそのつもりで頼む」
「なるべく早く白黒つけろよヴァール。インターフェイサーの件もお前と話を詰めなきゃならねーんだし」
「無論だ、そこは同時並行して進めよう……日本の警察による、ウラノスコーポ絡みの捜査も注視せねばならんしな」
いくつもの案件を同時に抱えることとなったヴァールが、苦笑いして肩をすくめる。
大変そうだ……手伝えることがあるなら何かしら手伝いたいところだけど、こればっかりはな。機密も普通に絡んでくるだろうし、社会的には新人探査者の枠を出ない俺では何をどうともできようがない。
せめて彼女にこれ以上、余計な無理をさせないように気を遣えるところは遣っていきたいな。
そう思いつつも議題はいよいよ3つ目、差し迫る首都圏での戦いへとフォーカスが当たっていく。
「さて、最後にサークルについてか……」
「ここに来て倶楽部や過激派とはまた別の、異なる目的によって動いていることが判明しましたね。首都圏で活動している捜査官達からはその辺についての報告はないのですか?」
「特にこれまでのところ、それらしきものはなかったな。アンジェリーナもランレイも神奈川もステラも、組織の支部は毎日ペースで落としているのだが未だに本丸の尻尾は掴めていない」
香苗さんが、取り調べ中に発覚したサークルの新たな真実──関連する組織の中でサークルのみ、別の思惑の下で作られ活動しているという情報──について問い質した。
倶楽部とも過激派とも本来関係がない、まったく別の目的のために活動している組織。となればまずは、その本来の目的について確認する必要があるだろう。
すでに現地でバリバリ活動しているアンジェさん達なら、多少なんらかの情報を掴んでいるのかもしれないと俺も思ったんだけど。どうやらそうでもないらしかった。
難しい顔をしてヴァールが否定し、次いで説明する。
「連中はどうにも拠点を分散して、カムフラージュ用のいわばデコイ支部を大量に拵えているらしい。ご丁寧にダミーの資料まで各所に用意しているという面倒さだ」
「何人も構成員を捕らえてるんですよねー? 取り調べとかで何か白状していたりはしないんですかー?」
「残念ながら、な……構成員どもは口を揃えて"金が欲しかった"と供述しているそうだ。サークルの目的についても、あくまでダンジョンコアを売り捌くことで得られる巨益そのものだと話しているな。幹部とされる者でさえその始末だとか」
なるほど。囮を大量に撒いているから、アンジェさん達だけだと情報の精査が追いつかないのか。ダミーの資料を大量に用意して各拠点モドキに置いておくなんて、悪の組織の割にずいぶんマメな話だなあ。
となると捕らえた構成員達から何か、情報を引き出せることを期待するものの……まさかの幹部まで含めて金目当ての犯行としか言わないらしい。
そんなことある? サークルも犯罪能力者の組織なら、当然オペレータもそれなりの数、いるはずだ。
だったらそれこそ全探組に登録して、正規の探査者として活動すればいいだけの話だ。ダンジョンコアだけでも1個100万円からって相場なんだ、外勤であれば普通に活動していればまずお金には困らない。
たまにモンスターが落とす──俺の場合は確定でだから、あくまで一般論として──素材なんかも足しにできるし、わざわざダンジョンコアなんて売り捌く必要もなければ、犯罪能力者なんかに身をやつす必要だってないはずなんだよ、金を目当てとするには。
思わず困惑を示す俺に、同調するかのように葵さんが戸惑いがちに笑って反応した。
「はっはっはー! ……絶対嘘でしょ、そんなの。わざとらしい言いわけで、真の目的を誤魔化してるだけですって」
「ワタシもそう思う。金銭目的だけで委員会がわざわざ一つの組織を立ち上げるのか、という疑念もあるからな」
「ファファファ、単純に倶楽部だの過激派だのの御題目と比して、俗っぽすぎますしねえ。神の降臨だの優生思想社会の実現だのと来て、今さら金が欲しいため? ファファファ! 逆に大物だよそりゃ」
並べてみると浮き彫りになるサークルの目的の不自然さに、愉快そうに笑うマリーさん。
うん、いかにもこれはないって感じの落差だね。委員会傘下である必要すらない。やっぱり俺の目からしても、なんらかの別な目的があるように思えるよなあ。
俗世的すぎて逆に怪しさ満点だ。
ヴァールもそうした意見に頷きつつ、当面の方針について話す。
「引き続き取り調べは行い、アンジェ達も虱潰しに支部を落として回る。連中の本丸、本部が見つかるならばそれで良いのだ……真の目的も、リーダー格を捕らえればさすがに分かるだろう」
「そして俺達はアンジェさん達に加勢する、と。そういうことだな」
「そうなる。とにかく手勢を増やして首都圏のサークルを一掃する。知りたいこと、分かりたいことはその過程で自ずと見えてくるはずだ」
得体の知れない組織、サークル。
身を隠すことに手慣れた様子のそんな連中を、捜査する者達の手を増やして対応するわけだね。
そして首謀者さえ捕まえてしまえばこっちのもの、と。まさしく首都圏を使ってのケイドロじみた話だなあ、これは。
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