表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
988/1833

どうしたことだ、伝道師と聖女の姿がダブって見える( ;つд⊂)ゴシゴシ

 ブチギレ神谷さんはしかし、先輩方のからかいを受けて気を静めた。さすが年の功トリオと言ったところか、宥め方が堂に入っていた気がする。

 こほん、と気を取り直して神谷さんが居住まいを正した。立ち上がり深々と頭を下げて、アンドヴァリの件について俺達に謝罪してきたのだ。

 

「アンドヴァリが、大変なことをしでかしておりました。今ここで謝ることにさしたる意味も価値もありはしないでしょうけれど、それでも言わせてください──本当に、申しわけありませんでした!」

「頭を下げる、というのはそれそのものが大変なことだ。意味も価値もないとは決して思わんがしかし……はっきり言って今、そのような謝罪の有無に依らずダンジョン聖教そのものが疑わしき立場に置かれている。その認識はあるな?」

「はい、もちろん。先代聖女がかくも組織に関与していた時点で、我々ダンジョン聖教の信用性、信頼性など地に墜ちたも同然。特に、直接あの女を聖女の後継たるに相応しいと定めた私など、共犯と見られてもなんらおかしくはないでしょう」

 

 言うべきことを淡々と告げるヴァールに、厳正な面持ちで頷く神谷さん。

 残念ながら二人の問答は正しい。アンドヴァリが聖女になる以前から委員会とつながりがあったなんて、その時点でダンジョン聖教自体も疑惑の組織になってしまったんだからね。

 

 無論、個人的にはダンジョン聖教そのものまでもが連中の息のかかった組織だとは思わない。神谷さんのこれまでを見ていてもそう思うし、ウィリアムズさんという命懸けで倶楽部からデータを回収してみせた人さえいるんだ。

 それに首都圏では当代聖女のシャルロットさんまでもが、過激派を追って活動している。少なくとも彼女や彼女達の派閥はシロだと見たい──おそらく他のみんなも同じ思いだろう。


 だけど、クロでない保証だってないんだ。だからみんな、ひとまずは疑念を抱かざるを得ない。

 参ったな……先代聖女アンドヴァリ。その存在そのものがこちらの信頼関係を崩すある種のトラップだったなんて。

 苦い思いを禁じ得ない俺をよそに、ヴァールはなおも告げる。

 

「すまんがWSO、および捜査官による捜査をダンジョン聖教本部並びに関係支部も受けてもらう。それに伴いある程度の結論が出されるまでは神谷、お前は我々と行動をともにせず本部に戻り調べを受けるように」

「かしこまりました」

「……これはお前達を疑うためのものでなく信じるためのものだと理解して欲しい。新たな戦いが始まらんとする今、潔白は証明せねばならないのだ」

「承知しております。私どもとて、これで何もなしに信じてほしいなどと言えるわけがありません。我らが矜持、我らが信じる"神"の名の下において、我々は必ずや身の清廉なるを明かしてみせましょう」

 

 微笑む神谷さん。自分達が疑われることを当たり前と断じ、信じてもらうために腹を探られることをもあえて許容する。潔い態度だ。

 さすがは先々代聖女、ということだろうね……エリスさんがそんな神谷さんを褒め称えた。

 

「神谷くん、君はやはり素晴らしい聖女だと思うよ。私なんかよりずっとね。ありがとう、ごめんね。私個人は君達を信じているけれど、それでも見過ごせないこともあるんだ」

「初代様……! こちらこそ、温かいお言葉感謝に絶えません。偉大なる初代様に薫陶を受けた2代目様が、正しき教えを胸に創設されたこの教団の頂、聖女。そこにおぞましい企みを抱えた者を据えさせたのは他ならぬ私です。心の底から己を情けなく、罪深く思います」

「気にしない気にしない! 私だって一度アンドヴァリくんとは会ったけど、彼女は完璧な聖女って感じで非の打ち所がなかったんだ。話を聞くに相当長い間仮面を被ってたってことだろうし、騙されたって無理ないよ。ま、ダンジョン聖教は基本クリーンですよって表明するいい機会をもらったと思いなよ」

「…………申しわけありません…………!!」

 

 初代聖女として、聖女にとっての聖女とまで呼ばれ尊敬されているエリスさん。

 その彼女から暖かな言葉をかけられて、神谷さんは涙をこぼしながらその場に跪いて祈りの態勢に入った。


 アンドヴァリを次代に指名した本人として、ダンジョン聖教を、ひいては歴代聖女を穢したくらいにさえ考えていたのかもしれない。

 それを他ならぬ初代から慰められて、弱っていた心に沁みたんだろうね。御高齢にも関わらず前線に近い位置で倶楽部との戦いに臨んでおられたあたり、責任感が相当強い方なのは間違いないわけだし。

 

 しかし……当のエリスさんは案の定だけど、祈られて大層困っていらっしゃる。冷や汗をかいて、やんわりと神谷さんを宥めていた。

 なんともはや、相変わらずどこかで見た光景だよ怖ぁ……

 

「ハッハッハー、分かったから! もう止めようよそれ、なんかあるとすぐ祈りだすけど、それ私にやられてもご利益とかないからね!?」

「初代様を御前に、お言葉をもいただき……これをもって祈らずにいるなど、聖女を経験した者には不可能な話でございます。あの愚かなるアンドヴァリでさえ、貴方様の尊き御姿の前には罪深き五体を地に伏せ、罪を自覚し罰を請うことは間違いありません」

「そうなんですか? はっはっはー! じゃあ師匠はアンドヴァリの前になんとしても立たせないといけませんね。控えおろー! なんちて」

「ハッハッハー、印籠かな?」

 

 困り果てたエリスさんに、弟子の葵さんがからかいの言葉を投げる。

 いつもの2人の空気感に、場の雰囲気も多少、柔らかくなるのだった。

ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いしますー


【お知らせ】


「攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」のコミカライズが配信されております!

 pash-up!様

 (https://pash-up.jp/content/00001924)

 はじめ、pixivコミック様、ニコニコ漫画様にて閲覧いただけますー

 

 能勢ナツキ先生の美しく、可愛らしく、そしてカッコよくて素敵な絵柄で彩られるコミカライズ版「スキルがポエミー」!

 漫画媒体ならではの表現や人物達の活き活きとした動き、表情! 特にコミカライズ版山形くん略してコミ形くんとコミカライズ版御堂さん略してコミ堂さんのやり取りは必見です!

 

 加えて書籍版1巻、2巻も好評発売中です!

 ( https://pashbooks.jp/tax_series/poemy/ )

 よろしくお願いしますー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] ちょっと思ったんですけど、おそらくは第三部での敵対組織(ダンジョン聖教過激派・委員会・サークル)は、「神の器」が破壊されたことは把握しているんでしょうか? ※もし知らなかったら、最終…
[一言] 調査にエリスを同行させればアンドヴァリと繋がってる連中簡単に見つけられそう。 先代聖女でこれだからそれより下の信者はもっと委縮するだろうし。
[一言] そっかー エリスさんは初代東野さんの時から見てたんだw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ