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大ダンジョン時代の余波を、他の何よりも受けたモノ達

 さてと始まる鬼島への質疑応答。さっきの刑事さんみたいに形式的な質問から始めようかと思ったけど、慣れない進め方をして聞くべきことを聞きそこねた、なんてことになるのも困る。

 元より現世に対して上位層の次元に位置する者同士のやり取りなんだから、もうこの際直球でいいだろう。警察やWSOの方で記録を保管するわけでもないからね。

 

「単刀直入に聞くけど委員会は何を目的に結成された組織だ? 概念存在はどこのカテゴリーのどんな勢力が絡んでいる?」

「…………それは、俺にも」

「自分から話してもらえると、こちらとしても助かるんだけどな。あなたとて概念存在な以上、そんな不明瞭なスタンスで現世に介入などするものかよ──この期に及んで知らぬ存ぜぬが通じると考えないことだ、赤鬼」

「っ」

 

 この期に及んでしらばっくれようとした鬼島をすかさず牽制する。こいつ、案外往生際が悪いな。

 すでにこちらの力は示していて、そのことは当人が一番身に沁みて分かっているはずだ。なんせ概念存在としてのあり方を維持できず、人間になるほどまでに弱体化させられたんだから、これで分かってませんは嘘だよ。

 

 それでも知らない分からないを通そうとしたのは、いかなる理由があってのことか。委員会がそれほどまでに凶悪な組織であるということなのか、はたまた別の何か理由があるのか……

 いずれにせよ嘘偽り、はたまたおためごかしはこの場にて一切許しはしない。魂に軽く威圧をかけて、少しばかり警告する。

 

「あまり強硬手段は取りたくないんだ……今一度言うけど、隠し立てをしないでほしい。嘘偽りも俺達には通用しないから、洗い浚い話してくれ。概念存在・赤鬼」

「真実を話す分ならこの取り調べにおいて、誰にも悪いようにはしないしさせない。これはWSO統括理事として誓おう」


 ヴァールと続けて釘を刺す。

 頼むから下手な義理立てとかはやめて全部話してほしい。弱ってるモノをこれ以上締めつけるのも、無理に喋らせたりするのも……必要ならするけど、しなくていいなら本当はしたくないんだ。


 内心で願いながらの再度通告をすれば、鬼島も相当に頭を回転させて悩んでいたようだ。まあ組織を裏切るようなもんだしな、多少は迷うか、そりゃあ。

 とはいえ背に腹は代えられないのだろう。やがてゆっくりと頷き、苦い顔をしながら悔しげにではあるものの、やつはたしかに俺達に従う意志を述べた。


「俺の、知っている限りでしか話せないが」

「それでいい。委員会の目的はなんだ? どこの概念存在が絡んでいる?」

「……目的については、概念領域と現世のバランスを、大ダンジョン時代以前に戻すためものだと聞いている。そしてそのために神々を除き悪魔、精霊、妖精、妖怪、人間など、概念領域や現世から大なり小なり、同志が集って組織を形成したとも」

「バランスの調整、そのためにカテゴリーの垣根を超えて集った組織、だと……」

 

 薄々分かっていたことだけど、相当に大規模な組織だ。ヴァールが明かされた事実を受けて、盛大に顔をしかめているね。

 概念領域のほぼすべてのカテゴリーが絡んでいる上に、どうしたことか人間まで加わっている……ある意味ドリームチームって感じだ。

 

 こないだ織田が言ってたように神々はまったく、あるいは極一部しか関わってなさそうだったりするな。逆にこないだのぬらりひょんなんかを見るに、妖怪はほぼ総出で動いていたと見える。

 そしてそうまで各所から集まっての目的が、世界のバランスを大ダンジョン時代以前に戻すためときた。ここもいまいち抽象的だな、具体的に何をどうするつもりなんだか。

 リーベがふむと考えつつも尋ねた。

 

「バランスを戻すって、一体どうやってそれを成そうと言うんですかー? そもそも大ダンジョン時代以前のバランスと大ダンジョン時代のバランスについて、委員会の見解はどうなってるんですー?」

「……委員会に絡む概念存在や人間にとり、現代の大ダンジョン時代は異常であり極めて不自然だ。それ以前の、概念領域に住まう概念存在が絶対的上位であり、現世に住まう人間どもは畏怖と畏敬を胸に慎ましく弁えて生きていた時代とは決定的に様相を変えてしまった」


 語りだす鬼島。それは概念存在から見た、かつての世界のあり方と今の世界のあり方の比較だ。

 かつて、概念存在と現世存在の関係は常に一方的なものだった──すなわち畏れられ敬われる側と、畏れ敬う側。超自然的な現象や存在に対しての絶対視こそが両者の根幹にあり、それをもって概念存在>人間という図式が成立していたんだ。


 それが、大ダンジョン時代を迎えて一変した。

 ある日突然人間達に与えられた謎の力、レベル、称号、そしてスキル。まとめてステータスとも呼ぶそれを手にした、いわゆる能力者達の台頭が始まったのである。

 概念存在達にとって、それは衝撃だった。


「探査者達は時間を重ねるごとに加速度的に強くなっていった。今やS級探査者などは概念存在の中でも、最上位格にさえ匹敵する戦闘力を持つに至っている……以前では考えられなかったことだ、間違いなくな」

「油断したりして人間達に討ち取られるってのはそれまでもあったろうが、たしかになァ。素で最高神クラスの人間がうじゃうじゃ出てきてるってんだから、お前らからしたら恐怖か」

「そうだ。ここに至り、大ダンジョン時代以前のバランスは完全に崩壊した。畏怖、畏敬とはすなわち未知への恐怖と、屈服の恐怖──これには敵わない、という恐怖があって初めて成立する。そこから敬意が生まれ、人間は我らを畏れるのだから」


 自嘲気味に俯く鬼島。そこには語ったのとは裏腹の、人間達、探査者達への恐怖が色濃い。

 単純な戦闘力で言えば最高神クラス。そんな人間が今になってやたら出始めた──概念領域からすれば身の毛がよだつ話だろう。自分達の優位性が、ここに来て一気に崩壊したのだからな。

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― 新着の感想 ―
確かに妖怪や悪魔達については「そいつらってモンスターと何が違うん??」ってなるしなぁ。不憫っちゃ不憫な存在だな。 それはそれとして「現世を屈服させるぞうおおおおお!!!」ってシステム悪用して暴れ回るの…
[一言] なるほど、それでも敬われる神様方は不参加なのですねー
[一言] コマプロ「雇われ管理人風情が調子に乗るなよ?」 なおシステムさんからの業務連絡はなかった模様。
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