『公平ー、パチモンスキル改善しようぜー。あの羽虫は抜きでなー』
おかし三人娘とのダンジョン探査を終えて翌日。清々しい朝を迎えて起床した俺は、パジャマ姿のままリビングに下りて朝ごはんを食べていた。
今日は特にやることもないし、ちょっとだらしなくてもいいかなーって。だいたい外は猛暑真っ盛り、インドア派な俺ちゃんとしては室内でクーラーでも効かせてダラダラ過ごしたいところなのだ。
「ま、昼過ぎになったら探査に行こうかなーくらいは思うけど」
「真面目だねー兄ちゃん。今日くらいダラダラしたらー?」
「急ぐ案件も特にないしなあ。でもまあ、探査はほぼ日課だし」
いつも通りのベーコンエッグを頬張りながら、妹ちゃんに答える。彼女も今日はのんびりモードか、着替えはしているもののあきらかに気の抜けた顔をしている。
こういう日あるよね、別に体調が悪いわけでもないのにやる気があんまり出ない日とか。俺は割とすぐにやる気だって出せちゃうほうだけど、優子ちゃんはこうなるとその日一日はひたすらアンニュイなのだ。
なんなら俺にまでグータラしようぜと言ってくるけれども、さすがにそうはいかないかなって。倶楽部案件も終わったことだし、盆の帰省も終わったんだからそろそろダンジョン探査のペースを平常のものに戻していかないと。
具体的には一日1つ2つってとこかな? 学校が始まったらたぶんもっと頻度は下がるかも。
夏休み前に比べてガクンと減ってるけど、それでも平均よりは頻度が高いんだよね。
いろいろあった以前とは異なり、もう完全にマイペースにことを進めていいもんだから、俺もちょっとは落ち着いてやっていこうと思うのだ。
「まあ、またすぐに首都圏行くんだけどね。そっちは空間転移使って実家と行き来するにしてもまたまた面倒な連中絡みだし、本当に日々が落ち着くまでには時間がかかりそうだよ」
「そっかー……大変だねー」
「まあなあー……ごちそうさまー」
ご飯を食べ終えて食器を片付ける。父ちゃんも母ちゃんももう仕事に出ていて、リーベはさっきダンジョン探査にでかけた。アイ? 俺のベッドでまだ寝てるね。
さて、どうしたもんか。ゲームとかネットしようかと思ったけれど、夏休みの自由研究にも取り掛からなきゃいけないのを思い出して若干アンニュイ〜だよ。それ以外にもなんかやることあったかな?
食べ終えた妹ちゃんの分の食器もまとめて洗いながら考えてると、脳内でアルマが提案してきた。
『こないだのアレ、《神魔終焉結界─天地開闢ノ陣─》の改善作業やろうよ、公平。あんな不完全なスキルが君のステータスにあるのは許せない。というか、僕の究極権能のパチモンがあんな程度であってほしくないからね』
パチモン言うな。
たしかにいろいろ改善点のあるスキルだけれど、本家本元の天地開闢結界の開発者も製作に絡んだ正真正銘の正規品スキルだろ。
自分で自分を刺しているアルマにそう指摘すると、うるさいよ! とだけ返ってきた。面倒くさいなーアルマくんちゃんは。
これたぶん、あのスキルをキッチリ完成度高めに仕上げないと納得しないんだろうなあ。
優子ちゃんに聞こえない程度の小声で、ため息交じりに答える。
「リーベがいないだろ。あのスキルの改善をするなら俺、お前、リーベの三者が揃ってないとできないぞ」
『あんな羽虫いらないだろ! いやマジで正味な話、あんな雑なスクリプトしかできないならいたって邪魔なだけだよ。システム側の規則や標準的仕様については詳しいだろうけど、プログラミング能力については所詮精霊知能の枠を出てないんだよあいつ。公平だってそこは分かるだろ』
「たしかに、技術的な面では俺やお前には及ばないだろうけどさあ……」
スキル作成に対してアルマの求める基準が高すぎる。リーベだって別に、プログラミング能力が低いわけじゃないんだぞ。
むしろ天地開闢結界を理解して解析、三界機構ともども封殺しきるための決戦スキルを創り出した以上、あの子のスキル製作技術はシステム領域でも随一と言えるだろう。
ハードウェアそのものとさえ言えるワールドプロセッサやコマンドプロンプト、つまり俺やアルマだからあの子の技術に対してマウント取れちゃうってだけで、そんな言うほど低い技量じゃないんだよ。
そのへんをつらつら説いた上で、俺はさらに小声で訴えた。
「天地開闢結界を、その内部構造まで含めて客観視できるのはあの子だけだ。俺はあの結界についてはそこまで詳しくないし、お前は言わずもがな主観にすぎる。決められた枠組みの中で最大限のモノを作る際、第三者の視点がどれだけ重要なものか、それこそ《神魔終焉結界─天地開闢ノ陣─》を作る際に第三者だったお前なら分かるだろ?」
『ぐ……む、う』
「あのスキルのリスク軽減、完成度の向上についてはもちろん課題だ、改善は近々まとまった時間を設けて行うよ。ただしリーベは必須だ。あの子抜きでこのスキルは弄れない」
そこまで言うと、さすがのアルマも不承不承ながら納得したみたいだ。面白くないだろうけど、単一の視点からだけでは物事は完成し得ないんだよ。悪いな。
食器も洗い終えて自室に戻る。優子ちゃんも自分の部屋に戻ったけど、もしかしたらアイを目当てに俺の部屋に来るかもね。
そろそろ起きてるかな? と思いながらドアを開けようとした、その時だ。
「……電話? こんな朝早くから、なんだろ」
俺のスマホに着信が入った。発信元は──ソフィア・チェーホワ。
WSO統括理事がなんの用だか、まだ8時にもなってない頃合いに電話をかけてきたのだ。
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