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これは彼女達の人生。彼女達の歩み、彼女達の戦いであるべきだから

 俺とリーベからの言うべき忠告はしたし、始原の4体もすっかり反省しておかし三人娘に謝罪している。チョコさんの意向を完全に無視して、強引にことを進めたのは謝らないといけない点だからね。

 とはいえおかし三人娘からしたら、そのへんの事情なんて知ったこっちゃないに決まってるんだから慌て戸惑っている。この世の神々や悪魔のプロトタイプに、揃って頭を下げられたならこうもなるよなあ。

 

『すまなかった、おかし三人娘……次からは必ずお前達の意向に従おう。二度と勝手な真似はしないと、我らの名にかけて誓おう』

『ごめんなさいねアメ、チョコ、ガム。我らちょっと、善意を履き違えてしまっていたのよ』

「え、ええとその……ど、ドンマイってことで、ね!?」

「どうか頭をお上げくださいませ始原様方! 私共でしたら大丈夫ですので!!」


 落ち込む犬と猫、ネムレスとノナメにフォローを入れるチョコさん、アメさん。困りきった様子で2体を慰め、また励ましている。

 力を貸すはずがさっそくやらかして慰められたんじゃ、始原達もさぞかし情けない気分だろうな。可哀相だけれど、これを教訓として次からはしっかりと段取りを踏んで行ってもらうしかないね。


 一方でガムちゃんはさすが、覇王忍者というべきかクールかつ物怖じしていない。

 ムメとゴンベに淡々と、自分の思うところを述べていた。


「まあ、意志持つ武器が担い手を無視して暴走するとかどう考えてもヤバいんで。力を貸してくれるって言うならこっちの意志は優先してもらったほうがいいですし助かりますけどね」

『うん、ごめんね……』

『あくまで我らは力に過ぎない。使うのはお前達なのだから、使う先はお前達が決めるべきなのだろう。公平の言うとおり、決定権はいつだって現世にあるべきなのだから』

「正直、パイセンのお叱りの内容もよくわからない部分は多いですけど……それでもそこらへんはたしかにそうですね。これは私達の人生で、私達の探査で、私達の戦いなんです。だから、私達の責任で私達はあなた達の力をお借りしますよ」

 

 それで良ければ今後ともよろしくお願いします。なんて、そう語るガムちゃんに始原の4体達は深く頷いた。

 少し離れたところから、そのやり取りを見ていた俺やリーベ、香苗さんもまた顔を見合わせ、頷く。


 なんていうか、やっぱりガムちゃんだけは明らかに考え方やスタンス、在り方がしっかりしている。探査者としての姿が他2人と比べ、完全に独立して完成されているんだ。

 今回、おかし三人娘の中でパワーアップしたのはアメさんとチョコさんであり、ガムちゃんはぶっちゃけ蚊帳の外だったわけだけど……それはガムちゃんが一人取り残されたというのを意味しているわけでは断じてない。


 というか言っちゃうけど、むしろ逆なんだ。

 そもそもガムちゃんだけが実力を持ちすぎてるんだよ、このパーティ。

 

「実力的にも、在り方的にもあの子は最初から飛び抜けている。ガムちゃんだけ今すぐ他の、それもある程度上の級の探査者パーティに移籍したってまったく問題ないほどに」

「徳島さんに鹿児島さんはまだ新人の、F級でしかないと見るからに分かりますが……新潟さんは風格からしてすでに一人前です。雰囲気だけでなく心構えや言動、咄嗟の動きを見てもまるでルーキーとは思えません」

「今回のおかし三人娘へのテコ入れ、ぶっちゃけ突出してるガムちゃんとの格差を埋めるためのチョコちゃん強化なところ、ありますしねー」

 

 小声で3人について語る。今回の強化でガムちゃん一人が取り残された、というわけではない。元々一人突出していた彼女に、アメさんチョコさんが追いつくきっかけが今回の強化で与えられたのだ。

 なんなら《武装化顕現》を身に着けてもなお、3人の中ではまだまだガムちゃんの実力が飛び抜けてるほどだもの、現状だと。

 

 彼女は最初期の時点から一人でアタッカー、サポーター、指揮並びに連携のフォローまで全部こなしていた規格外の化物だ。

 そんな彼女のクオリティの高さは、今日ダンジョンに潜っている中で普通に探査を進める姿を見ただけでもよく分かることだった。


 だって指揮はもちろん斥候、警戒に至るまで新人離れした手際の良さで済ませてるんだもんよ。

 正直、アドミニストレータやコマンドプロンプトとしてのスペックでゴリ押し気味な俺では、ここまで丁寧な進め方はできない。


 そんなレベルで一人だけ完成しちゃってるガムちゃんに、仲間のアメさんとチョコさんが並び立つためのキッカケとなるスキル。

 それこそが今回得た《武装化顕現》というわけだった。

 

「単独で飛び抜けてるガムちゃんに、コンビで追いつけ追いこせしていくアメさんチョコさんって構図になる。始原の4体はこれを狙ってチョコさんの強化をアメさんが行う《武装化顕現》を提案したんだろうな」

「すべてはおかし三人娘という、パーティ単位での戦力強化のためにですね。たしかにこれで、3人それぞれにはっきりとした役割が割り振られました」

「近接戦闘のチョコちゃん、召喚スキルで遠距離やサポートを行うアメちゃん、指揮中心になんでもござれのガムちゃん! んー、将来が楽しみな三人組ですねー!」

 

 明るく朗らかに笑って彼女達を見る、リーベに頷く。

 先生だの師匠だの柄じゃないけど、こうやって俺が伝えたもので彼女達が前に進んでくれるのはひどく嬉しくて、とても喜ばしい。

 きっと始原の4体もこんな気持ちを味わいたいから、おかし三人娘に寄り添っている部分はあるんだろう。

 

 なんだか見守りたくなる存在になりつつある、そんなパーティ三人組は俺達のほうにやってきた。始原の4体達はすでに領域に還っている。

 彼女達も一件落着の雰囲気を出しつつ、笑顔で俺達に感謝を述べてくる。


「みなさん、お待たせしました! 今日はいろいろ、本当にありがとうございました!!」

「始原様方とは今後も、より対話を密にしてお互いに納得できる形でともに戦いに臨めるかと思います。《武装化顕現》も含めてすべて先生のおかげです。本当にありがとうございます!」

「もちろんパイセンだけじゃなくてリーベちゃんも御堂さんも、いろいろありがとうございます。いつか何かの形で返したいですね、この御恩は」


 新たなスキル、新たな力を手に入れてアメさんもチョコさんもまた少し、自信を身に着けたように思う。力強い輝きを秘めた瞳。

 今後はこの子達も始原の4体とうまくやり取りして、自分達の思うほうに力を使っていくだろう。


「どういたしまして。どうか新しい力を使って、探査者として高みを見据えていってもらえると嬉しいですよチョコさん」

「救世主様から授かったその力は世のため人のためのもの。そのことを忘れることなく精進してください、使徒天乃」

「ガムちゃんも、辛いことがあったらすぐに仲間に相談するんですよー! あ、なんならリーベちゃんとも友達、友達!」

 

 期待の新星達へとそれぞれ、こちらからも激励を告げて。

 ダンジョンの最奥へと向かいコアを回収し、俺達は探査を完了するのだった。

次話から新エピソードになりますー

ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いしますー


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― 新着の感想 ―
[一言] 「とか言いつつパイセン。可愛い弟子の覇王忍者にも何かあるんですよね?ほらほら、勿体ぶってないで早く出してくださいよ。さあさあ。 え、ない?本当に?まったまた~」 みたいなやり取りが裏であっ…
[一言] やはり覇王忍者は完成された存在……
[一言] 覇王忍者…いずれ本当に覇王になるかもしれない逸材だったw
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