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良かれと思ってやったとしても、無断だったら当然アウト

 始原の4体がすべてひとまとめになって武器化した、謂わば武器化始原概念が解かれて領域へと還って後。俺はアメさんにお願いしてすぐに始原の4体を《召喚》してもらった。

 《武装化顕現》の所感を話してもらうためでもあったけど、それ以上にさっきまでのやりたい放題について少しばかり、俺のほうから言わなきゃいけないことがあったからだね。

 

「あのなあ、お前ら……いくらなんでも独り善がりに暴走しすぎだ、チョコさんが完全に混乱してただろ」

『め、面目ない』

『つ、ついテンションが上がっちゃって……』

 

 最奥一つ手前の部屋、敵を倒しきった後の何もない部屋の真ん中で再度、呼び出した始原の4体が並んで座り項垂れている。いかにもな反省のポーズだ。

 絵面がペット三種と5歳児なのだから愛らしさはあるけど、やらかしたことがやらかしたことなので和んでもいられない。


 リーベでさえも微妙な顔をするほどに今回、こいつらは好き放題にやってしまったのだから。

 呆れとともに、彼女も始原達に声をかけた。

 

「といいますかねー、オペレータのスキル制御の一部をアシストするまでは良いものの、それを利用してレベルキャップを外すのはやりすぎですよー。自分達でもヤバいとかって思えなかったんですかー?」

『お、おかし三人娘にも切り札らしい切り札は必要だろうし、そうなると限界を超えた出力での一撃ってのがお約束かと思って』

『本来チョコにかかる負担については我らのほうで受けるよう設定したから、それなら問題はなかろうと思い……ちなみに我らではレベルキャップの解放は一つしかできなんだ。山形公平やリーベならば全段解放もできるだろうか?』

「できるけどしないぞ? するわけないだろそんなこと」

 

 そもそもスキルの出力制限なんて、探査者のレベルに応じて解放されていくべきであって能動的に手動で外すなんてしちゃいけないんだよ、リスクが高すぎる。

 こいつらはその辺のリスクを自分達で肩代わりしてるからセーフ、と言いたいみたいだけれど、それはつまりこいつらの胸先三寸でチョコさんに反動ダメージが来かねないってことも意味しているんだ。

 やってることは第三者による恣意的な運用そのものだからな。


 酷い話、今後チョコさんが少しでも始原の4体にとって気に入らないことをした場合、その時点で梯子を外されて以降のリスクはすべて自己責任で、なんてことにもなりかねない。

 チョコさんの意志でそれを背負う選択をしたならともかく、一から十まで始原達の気持ち一つでそうなるなんてさすがに認めるわけにはいかない。


 一段階解放程度なら、翌日筋肉痛ってくらいで収まるだろうけど……だからって勝手にリミッター解除されて勝手にリスクを負わされるなんて呪いの武器かよって話だ、許容できるわけもなく。

 少し厳し目に、割とガチトーンで始原達に告げる。

 

「分かってるはずだろ? 概念存在側の都合でスキルを運用しちゃいけない。あくまで主導権はオペレータに委ねられているべきであり、冷たいことを言うようだけど、武器として用いられることを選んだお前達に決定権なんてないんだから」

「といいますかね、これ粛清案件に若干触れてますよー? 概念存在による、スキルを用いての現世への介入に抵触する行為とも取れるんですからー」

『そ、それは……!』

『うう……返す言葉もない。良かれと思って、おかし三人娘の力になればと思ってつい、やらかしてしまった……』


 さすがに粛清案件──下手するとシャーリヒッタが権能持ちで降臨しかねない違法行為──に該当するかもとまで言われれば始原達も、自分達のやらかしたことがどういうことか理解したようだった。

 力なく反省する犬猫鳥に5歳女児。正直、こいつらの善意は理解するし、ここまで言うことに胸は痛むけど……これがエスカレートしたら最悪おかし三人娘に危害が及ぶ可能性がある。こいつらだって、システム領域を敵に回す可能性まであったしね。

 今のうちに釘を差して置かなければならないのは間違いないのだ。

 

「先輩、かなりガチめに叱ってる……それだけさっきの技、ヤバかったってことなんだ……」

「あわわわ。ど、どどどうか怒りをお鎮めくださいませ〜」

「リーベちゃんも始原さん達と知り合いみたいなんだね。ていうかさっきのアレ、反動ダメージとかあるやつだったんだ……別になんともないけどなあ」

「始原の4体のほうで肩代わりしていたみたいですからね。ですがそれが彼らの厚意によるものである以上、いつどこで肩代わりしなくなるのかが分りません」

「あー、だから先輩は叱ってくれてるんですね……期待するのは良いけどそれで私達を縛るなって。善意の手助けで身の丈に合わない力を渡すなって、そういうことなんですね」

 

 後ろで休憩しつつ雑談している女の子達。俺達の様子を見てヒソヒソ話しているけど、概ね現状を理解していただけているようで良かった。

 というかアメさん、俺は別に怒ってないからね? ただ、善意からとはいえ身勝手なことをした始原達に対して忠告してるだけだし。

 

 まあ、あんまり言いすぎるのも良くはないかな……リーベがこれ粛清されかねないよ? と言ったあたりですっかり意気消沈してるし。

 別にこいつらも、悪気があってしたわけじゃないんだ。そこは分かってる。少しでも人に寄り添おうとしたその気持ちまで、否定するつもりはないからね。

 俺はしゃがみ、始原達と目線を合わせて語りかけた。

 

「……だけど。おかし三人娘の力になりたいと思ったその気持ちは素敵で素晴らしいものだよ。そこは間違いない……本当に立派だよ、4体とも」

『こ、公平……』

「さっきの切り札については基本封印するべきだし、使うにしてもチョコさんの意志で使われなければいけないけど……それ以外は俺からはとやかく言わない。ああでも、次からは事前におかし三人娘に説明して、許可を得てから話を進めるんだぞ? 寄り添うってそういうことなんだ。考えて決断するのは、あくまで彼女達なんだから。もちろん知ってるとは思うけどさ」

『ああ……忠告ありがとう、公平。気持ちばかり先走らせて、我らは危うく道を踏み外すところであったよ』

 

 概念存在から指示を出すのではない。それをしてしまうと、現世の存在は上位存在の操り人形も同然になってしまう。

 それでは寄り添っているとは言えないんだ。あくまで現世の者達が自分の意志、自分の思考で動くべきであり概念存在はそこに力を貸すだけなのだ。

 

 いつだって、道を行くのは彼らの歩みであるべきなのだから。

 始原の4体もそれを理解して、俺に深く頷いてくれた。これなら今後、迂闊に勝手な行動をしておかし三人娘を振り回すことはしないだろうね。

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― 新着の感想 ―
アメノが使い魔ポジションで、千代子が魔法少女変身する感じのパーティーになりました(笑) 某勇者アニメのように上からの承認がないと使えない必殺技なんですね。
[一言] これ、召喚系統のスキルの明確な危険性じゃない? 始源だからスキルにも干渉出来るのかもしれないけど
[一言] いきなりヤベーのが出た時に始原が自分をなげうつやつだ…w
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