ハジマリ達とともに征け、勇気ある者よ!
ゴンベのみならずネムレス、ノナメ、ムメさえ含めた始原の4体、全員でまとめて武器化したそれは言うなれば武器化始原概念。
白銀の剣、そしてその周囲を浮くいくつもの小さな槍。チョコさんの右肩から先を覆う甲冑。いずれも遠目から見ても凄まじいエネルギーを放っている。
「な、なんというエネルギー……! S級モンスターと相対した時にも似た、途方もない圧力を感じます!」
「し、始原様方がその力をお束ねに……!? な、なんてパワーなの!?」
これにはメモを取る伝道師や使徒もさすがに動きを止めざるを得ない。特にこれまでに何度かS級モンスターを間近で見ている香苗さんは、武器化始原概念から同じような雰囲気を敏感に感じ取り思わず警戒態勢に移行していたほどだ。
さすがだよ香苗さん、伝道師してても咄嗟の時にはすぐさまS級探査者としての、プロ中のプロとしての姿に切り替わるんだな。
しかし、たしかにとんでもないよ、アレ……チョコさんがおっかなびっくり握るのを、遠巻きに観察する。
言ってはなんだが、今現在のチョコさんには明らかに過ぎたる武器だ。S級モンスターを相手取るような領域の探査者、すなわちS級並の人が本来、扱うような武器だろう。
ましてここまでの威圧を放ってなお、アメさんのレベルの低さゆえ本来の全力からは程遠い出力しか出せないはずだ。
チョコさんも、ソレが今の自分には手に負えない類の武器だと感じ取ったんだろう。酷く困った様子で、言いにくそうに始原概念達へと告げていく。
「あ、あのーう、そのー……すみません、私の実力だととても使いこなせないと思うんです、情けない限りですけど」
『そうだな。今の我らはお前の手には余るだろう。しっかりと現実を見据えてよくぞ告げたものだ、チョコ』
「えっ……」
てっきり怒られると思ってたんだろう、チョコさんにネムレスが優しく言葉をかけた。
戸惑う彼女。その姿にクスクスと笑って、ノナメの声が響いた。
『大丈夫。この形態は最初から、成長した後のあなたを想定している武器化だもの』
『あくまでデモンストレーションに過ぎないんだよ、チョコ。今の君でもコレを使って、一撃二撃くらいは振るえるはずだ。それだけでも単純な火力は君達の持つ手札の中で最大最高をマークする』
『つまりはほぼ一回コッキリの大砲と思うがいい、今はな。アメやお前の実力が上がればさらに力を発揮するだろうし、そうすればするほどにうまく我らを扱えるようになる』
続けてムメ、ゴンベも言葉を重ねる。なるほど、デモンストレーションをかねての一発だけの試し打ちをさせたいんだな。
今の時点だとチョコさんでは、武器化した始原概念を振るうことはできまい。扱うエネルギーが身の丈を超えるから反動ダメージを受けるだろう。
それでもその威力は紛れもなく絶大だ。仮に格上と相対した時用の切り札にはなるから、一発コッキリの大砲ってのはそういう方向性の武器として認識しろってことか。
──と、武器化始原の姿がにわかに薄れてきた。光の粒子を放ってるけどこれ、現世の顕現可能時間が近づいてる?
「ちょっと待てお前ら、持続時間何分だ!? ひょっとしなくても短すぎるだろ!」
『今のアメでは3分が限度なのだ。ちなみにレベルが10を刻むごとに1分伸びるから、頑張って我らを長いこと現世に留めさせてほしい』
『ガンバ!』
『フレー! フレー! おかし三人娘ー!』
「えぇ……?」
もうあと1分くらいしかないじゃん。チョコさんというかおかし三人娘を囃し立てるネムレス、ノナメ、ムメに思わず戸惑う。
他の武器化に比べて保持時間が大分短いし、レベルによる持続時間の伸びも滅茶苦茶悪い。現状、明らかに短期決戦用の武器として使用するしか道はないんだな。
立て続けて再度《武装化顕現》で呼び出したところで、そもそも反動ダメージの関係で一発しか打てないし。
マジで切り札感あるのはロマンがあって良いけど、使い所をミスると後が怖そうだなあ……
『言ってる場合か! ほらチョコ、とりあえず戦え、すぐに終わるから! 我の初武器化をタイムアウトで終わらせないでくれ!』
「えっ、あっ、は、はいいっ!?」
「ドタバタしてますねー」
記念すべき? 初武器化をまさかの不戦敗に終わらせたくないゴンベが焦った声色でチョコさんを促す。じゃあ事前に説明してスムーズにことを運べという話なんだけど、外連味を気にするからなあ、こいつら。リーベも呆れ気味だ。
ともあれチョコさんは部屋へと躍り出た。警戒していたゴブリンとスライムがやっとかとばかりににじり寄って来るのを受けて、彼女は叫んだ。
「い、行きます!! っていうかこの槍なんですか、邪魔な気がしますけど!」
『あなたの意志で動くフルオートスピアリングシステムよ! 心を我に向けて、心で動かすことをイメージなさい!』
「きゅ、急な話すぎる……! えーと、えーとっ、動け!!」
剣を持つチョコさんの周辺を飛び交う槍がたしかに邪魔だ。思わずイラついたんだろう、ちょっと語気が荒くなった彼女にノナメが叫んだ。
使用者の思念で操作する、いわばプチ《念動力》みたいなものか。便利そうなのは便利そうだが、いきなり過ぎてチョコさんがパニクってるんだが?
何してんだ始原……と呆れ返って見ていると、それでもチョコさんは言われるがままに思念を飛ばした。
無秩序に飛び交っていた槍をすべて制御して、並みいる敵に向けて切っ先を突きつける。
初めてなのにずいぶんうまく動かせてるな。おそらくノナメによるアシストが入っているか。
《念動力》に近い思念での操作を初めてながらそれなりのクオリティで行い、慌てふためきつつもチョコさんは続けて叫んだ。
「えーとえーと! い、行きますっ、えーとブレイブ、いやもうこうなるとオリジンだね、ブレイバー!!」
『うん、勢いで技まで行くんだね! やっちゃいなよチョコ!』
「は、はい! ──改めて、オリジンブレイバー・ノーネームシューティング!!」
手にした剣を敵へと向ける。同時に思念で操っていた槍が、一斉に敵へと向けて飛びかかっていった。
ブレイブブレイバーならぬオリジンブレイバー。始原の4体の力を大きく使った、おかし三人娘最強の技の一つってことでオリジンという名を取り入れたのか。
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