覇王忍者に、ガムはなる!!(たぶん)
戦闘も終わり、武装化したムメもまた消えていく。これで現世に留まっている始原概念はゴンベだけになるね。
また会おうねー、などと上機嫌で光る泡のようになっていくガントレットに深く頭を下げてから、アメさんがふと俺に尋ねてきた。
「あの、先生。《武装化顕現》は一度の戦闘ごとに解除するものなのでしょうか? つまりは探査中、戦闘がある度に使用する形になるのですか?」
「あ、それ私も気になりました山形さん。ネムレスさんやノナメさんはともかく、直に両手にフィットするムメさんはこう、毎回付けたり外したりするのも違和感あるなーって」
チョコさんも同様の疑問を抱いたのか続けて聞いてくる。
いい傾向だ。与えられた力、スキルに対して好奇心旺盛にいろいろ尋ねてきてくれるのは、こちらとしても頼もしいし助かるよ。
さておき、《武装化顕現》にて現出させたモノ達の持続時間か。たしかに戦闘の度、一々消えては出して消えては出してを繰り返すのも手間だよね。
そのへんの時間間隔を適当に扱うと、下手したら戦ってる最中に武器化した概念存在が消えてしまうかもしれない。そんなリスクを考えても、制限時間周りについて知る必要は当然ある。
まあ結局、スキル使用者……すなわちアメさんの実力に比例するんだよね。俺は頷き、答えた。
「スキルの持続時間は使用者である、アメさんのレベルに比例して持続しますね。概ねレベルが1上がるごとに対して1分、 スキルの使用時間が伸びます」
「ということは……今、私のレベルが16ですから……」
「15分ちょいってことかぁ。一度のバトルだとそこまで問題ないけど、次のバトルまでの移動時間とか考えるとちょっと出しっぱなしは難しいですね、それ」
ガムちゃんが現状のスキル持続時間に対して、探査中の指揮官としての見解を述べる。
まさにその通りで、10分程度だとバトル中は中期戦、長期戦にならなければ問題ないけどそこから次の部屋まで移動して二戦目をおっ始めるのは、よっぽど急ぎでもしない限りは無理だと俺も思うよ。
ちなみに聞けば現在、チョコさんはレベル18でアメさんはレベル16、ガムちゃんがレベル20とのことだ。
やはり指揮にサポートにと、身体も頭も動き回るガムちゃんが一番成長速度が早い。《忍術》もデフォルトの火遁に加えてレベル10で水遁、レベル20で木遁を覚えたとのこと。
「前に先輩が言ってた話だと、レベル30で覚える土遁を最後に以後100レベルまで動きはないみたいですね……ちょっと焦れったいです」
「そうかもね。でもガムちゃん、レベル100で《忍術》が《忍法》に進化したらそこから一気にできることが広くなる。自由度が高くなるんだ。だから──」
「だからそうなるまでに、基本属性の忍術を磨き上げたりして地に足つけろってことですね。土台をしっかりさせてなきゃ、せっかくの自由度だって何をしたらいいのか分からなくなりそうですし。そうなると覇王忍者への道も遠のくばかりですしね」
微笑み、ウインクしてくるガムちゃん。さすがだと俺は微笑み、またこの子の頭を撫でた。
本当に頭が良く、そして真面目な子だよ。自身の目標とする覇王忍者に向けてしっかりと得た情報から道筋を見出し、長期計画を自分で立てて、そこに向けての地道な努力を惜しまない。
とても妹ちゃんと同い年とは思えない姿勢だ、実は人生二周目とかしてない?
年上二人を鮮やかにフォローしたり積み重ねの大切さを知っていたりと、ずいぶん大人びている印象があるな。
「覇王忍者の意味がいまいち分からないけど、ガムちゃんは今言った通りの道を歩めば必ず強くなれるよ。俺が保証する」
「今度覇王忍者についてたっぷりプレゼンしますから覚悟しといてくださいねパイセン。一日かけて私のビッグドリームを理解してもらいますから、私の師匠として!」
「あ、いえそれはちょっと……」
「私の師匠として! パイセ〜ン、逃しませんよ〜」
逃して。お願い逃して覇王忍者見習いさん。
ひっしとしがみついて絡んでくる忍者の卵さんから俺は顔を背けて逃げ惑うのだった。
ともあれ、そんな話を挟みつつこのダンジョンは最奥の一歩前の部屋まで辿り着いた。つまりは最後のモンスター戦を目の前にしているわけだね。
部屋にいるのはゴブリンが2体とスライムが3体。ここに来てちょっと多めだ、チョコさん一人じゃ厳しいかな?
いざとなればおかし三人娘全員で切り抜けるだろうな、と考えていると、最後に残る始原概念ゴンベがさてと切り出した。
『最後は我だがアメよ、頼めるか?』
「もちろんですゴンベ様! さっそく始めましょう──スキル《武装化顕現》! 対象は始原概念ゴンベ様!」
4度目のスキル発動。先の3体と同様にゴンベの姿が消え、チョコさんの眼前に光が迸る。
────いや、ちょっと待って。なんかおかしいぞ、光が4つある。こんなのゴンベ以前にあったか?
目を丸くしてリーベを見る。何か知ってるか目で問うと、彼女も驚いた様子で首を左右に振っていた。知らないのか。
『──4体で語らった結果、我だけは趣向を変えることにした』
光の1つから声がする。ゴンベの声だ。
ていうか、概念存在の気配が4つある。これは、始原の4体を一度に呼んでいる? ゴンベを呼んだらネムレス、ノナメ、ムメもともにやって来たのか。
自身の召喚に他3体を紐付けさせたんだな。理屈は分かるがなんでそんなことを、あくまで呼ばれたのはゴンベなんだから、武器化するのはあいつだけだろうに。
困惑する俺の耳に、さらに始原達の声が響いた。
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