今はもう三種競技AとかBとかじゃないらしい(ジェネレーションギャップ)
戦闘も終え、ノナメが自身の領域に還っていき、俺達は次の部屋を目指しながら先程の戦闘を振り返っていた。
ちなみにネムレスもだけど、還った始原概念を今すぐに呼び直したりはしない。毎回一体ずつ《召喚》を使うのも手間だしね。
段取り的には始原達を全員武器化して、使ってみてから改めて4体を再召喚して、かのモノ達の意見や感想を聞く手はずになっている。
なので残るはムメとゴンベの2体。彼らを武器化して使ってダンジョン踏破を済ませてから、4体揃って召喚し直すって流れになっていた。
「それにしても先程は見事な体捌きでした、チョコさん」
歩きがてら香苗さんが、チョコさんへと話しかけた。S級の彼女からしても新人らしからぬチョコさんの動きは驚くべきものだったようだね。
手放しで賞賛しつつ、気になったところを彼女に問いかけていた。
「もしや何かの武術を修めていたのですか? そうでなくとも何かしら日常的に身体を動かしていたのか。でなければあそこまで慣れた動きというのは難しいでしょう」
「えっ。あ、いえ! あの、陸上競技はしてました! 四種競技!」
「…………っていうと、えーっと?」
「走り高跳び、砲丸投げ、200m走、100mハードル走です!」
なるほど、体の様々なところを日常的に動かしていたのか、探査者になる前から。
道理で素人離れした動きをできているわけだよ、レベルの効果で新人さんでも、常人よりは強化されてるからね。
そうした基盤が整っていたってのも、チョコさんが剣だけでなく様々な武器をある程度でも使いこなせるに至った要因の一つだろう。
無論それだけでなく、やはり彼女自身の持つ天性の才能がなさしめたのは言うまでもないけど。いやはや、おかし三人娘……天才ばっかりか!
「スゴイですねー……っていうかさっきの槍技とか、もしかして剣技を槍用に使いまわしたりしてましたー? どことなくそんな動きの予感がしましたけどー」
「アハハ、さすがバレちゃうね! そうだよリーベちゃん、私が使えるのは剣技、関口さんから教わったブレイブブレイバーだけなんだ! それをいろんな種類の武器で使えないかってのは前から試してて、実戦で初使用してみたってわけだね」
『ははあ、なるほど。道理でどことなく動きが不自然だったわけか』
『槍で剣の技をあのレベルで放てるのはすごいね、チョコ。慣れたらさらに槍に適した技を開発できるかも』
ゴンベやムメまで褒めちぎる。戦闘者、探査者としてのチョコさんは見事に始原の4体のお眼鏡に叶ったみたいだ。
ていうかやっぱ、適正武器種が違う技を無理矢理放ってたんだな。それであの程度の違和感に留めたのはやはり、体捌きの成せる業か。ムメの言うように今後、いろんな武器を使い込んでいけばそれぞれに最適化された技を使えるようになるだろう。
そうなればさらにチョコさんの実力は高まる。まったくもって行く末が楽しみなオペレータだな、これは。
ガムちゃんやアメさんにも感じた可能性をチョコさんにも感じつつ、そろそろ次の部屋が見えてきた。中には一体、コボルトがいる。
狼人間のF級バージョンみたいな犬人間で、格闘戦を仕掛けてくるから後衛にとっては距離を置いた戦い方を学ぶにふさわしいモンスターだね。
「コボルトかあ。至近距離用の武器って、ムメさんかゴンベさんなったりできますか?」
『ハハっ! それなら我に任せてくれよ、チョコ! アメ、次は僕だ!』
「はいっ!! スキル《武装化顕現》発動! 対象、始原概念ムメ様!」
至近距離を仕掛けてくるモンスター用の武器、とチョコさんの求めに応じてムメが叫んだ。アメさんに呼びかけ、さっそく《武装化顕現》が発動する。
ムメの姿が消え、すぐにチョコさんの眼前にて光となって顕現し直す。武器化した姿での召喚だ。
『ネムレス、ノナメがある程度距離を取った立ち回りを要求する形になったんだ。だったら我は逆を行く、ショートレンジ用の武器になろう!』
「えっ──うわわわ光が両手に纏わる!?」
「チョコさん!? ちょ、あれ大丈夫なんすかパイセン!?」
眼前にて姿を表していたネムレス、ノナメと異なり今度のムメはチョコさんの両手に光を二分して纏わりついていく。
いきなりそんなことされたもんだからチョコさんは慌て、ガムちゃんも焦って俺にしがみついてきた。アメさんもあわあわしているね。
いや俺にどうにかしろ的なこと言われても、万一変なことしでかしたらムメは出禁にするねとしか言いようがないんだけれども。
まあ心配はいらないだろう。アメさん大好きな始原の4体がアメさんの悲しむようなことをするとも思えないし。
実際ほら、光が収まってムメが何をしたかが分かってきた。チョコさんの両手に、鋼鉄の煌きを宿すガントレットが装着されているのだから。
『ビックリさせちゃってごめーんね! 武器化ムメ、只今参上!』
「ムメさん!? こ、これって一体!?」
『我が象りしはガントレット! 殴って防げて攻防一体の、近接格闘用武器さ!!』
両手を前腕部まで覆う白銀の輝き。西洋甲冑のガントレット。
極めて高い硬度を持っているのが見ているだけでも分かる、超強力な至近距離用武器。
それがムメが選択した、チョコさんのための武器の姿だった。
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