世界の理レベルで知的生命体のために在るモノ達
武器化ネムレスの強力さを考えれば当然の話なんだけど、瞬殺だった。それぞれ一撃ずつでの撃破で、なんなら技だって使う必要なかったんじゃないかなってくらいの速攻ぶりだったよ。
それでもチョコさんの現状の実力や、武器化したネムレスに対してアメさんの実力上、どれだけ力がセーブされているのかは大体見えたよ。
戦闘終えて束の間、自分でもこうまであっさりと倒しきれると思ってなかったのかチョコさんが驚きも露にはしゃいでいるのが見えるね。
「っ……す、すっごーい!! え、嘘、自分の攻撃じゃなかったみたい!」
『はははは! そうだろうそうだろう、これが武器化した我の真なる威力よ! いや案外悪くはないものだな、こうして振るわれてモンスターを屠るのも!』
「さすがですネムレスさん! いつもの私だともっと手こずってました!」
『ふふふははは! 良いぞ、もっと褒めるがいい! 我は大変気分が良い、ふふふは! これが始原概念ネムレスの底力よ!!』
分かりやすく調子に乗ってるなあ、ネムレス。武器化することそのものにはあんまり肯定的じゃなかったくせして、一発でモンスターを直接斬り倒す感覚を気に入ったみたいだ。
戦闘や殺戮への快楽というよりは、生まれてはじめて概念らしい圧倒的な力、威力を誇示できたことで自己顕示欲が刺激されたって感じかな?
みんなで部屋に入り、チョコさんと合流する。あまりのスムーズさに驚いたのはアメさんやガムちゃんも同じのようで、それでも我がことのように喜びながら彼女を讃えていた。
「すごいわチョコちゃん! ネムレス様の力をあんなに見事に振るって!」
「いや、むしろチョコさんの実力をネムレスさんが引き出したってほうが近い気もしますね。どちらにせよマジで強かったですけど」
「ありがとう二人とも! ネムレスさんの……そしてアメさんの《武装化顕現》、本当にすごいよ!」
褒め合う3人。そりゃー強力な武器が手に入りチョコさんが強化され、結果としておかし三人娘のパーティーとしての総合力がアップしたんだからはしゃぐよね。
本当に仲良しさんで何よりだ。俺もリーベも香苗さんも、そしてノナメにムメ、ゴンベも彼女らに近づき、話しかける。
「お疲れ様ですチョコさん。いい感じみたいですね、《武装化顕現》。ネムレスはどうだ、違和感とかないか?」
『うむ、公平よ。中々良いものなのだな、こうして現世のモノの力になるというのも』
「"現世に存在する知的生命体のために生きる"、概念存在の本懐を果たしているわけだしな。お前達にとっては初めてだろうから、いろいろ新鮮だろうさ……それが、お前達の後に続いたモノ達の存在意義なんだ」
概念存在とはつまるところ、現世のために存在している。現世の者達の力となり、やがては乗り越えられていくことこそがその存在の意義とさえ言っていい。始原の4体以外は知らないことだけどな。
寄り添うなり協力するなり、あるいは敵対したり踏み躙ったりするなりと、そのやり方はいろいろだ。
だが最終的には現世の者達は、そうした様々な手口で絡んでくる概念存在を乗り越えて独り立ちする。今でなくとも遠い未来、ここでなくとも遥かなどこかで、ね。
これはこの世界、あらゆる宇宙のあらゆる星のあらゆる知的生命体に適応されるこの世の理だ。つまりはワールドプロセッサとコマンドプロンプトが現世の創世、ビッグバンに際して策定した絶対不変のルールの一つと言っていい。
そのルールの一部を今、生まれてはじめて始原の4体は理解したのだ。プロトタイプゆえに関わり合うことがなかった"現世の力となる"使命を果たす歓びを今、ネムレスは味わっているわけだね。
『これが……この歓喜、この慈愛、この充足が。我らを素にしたモノ達の、到達すべきものの一部なのだな……』
『ちょ、ちょっとネムレスだけずっるい! 次我、次我ね行くわよおかし三人娘ほら早く!』
『急かしちゃ駄目だってノナメ! でもできれば早く我らも使って見てほしいなあ。とっておきの武器を模すからさあ』
『お前も急かしているじゃないか。気にせず暫し、使用感をたしかめなさいおかし三人娘』
「そう言いつつもゴンベもソワソワしてますねー」
すっかりご満悦らしいネムレスが羨ましいのか、他3体もニャーニャーピーピーソワソワ騒ぎ出している。
そう焦らずとも、どのみちこのダンジョンを踏破する中でお前らも武器になるんだからちょっと辛抱だ、ちょっぴりだけ待っていてほしいね。
「概念存在の喜び、存在意義……! これは救世主神話伝説における世界の成り立ちにも由来する重大な一節と言えましょう! 使徒天乃! メモメモメモり、メモメモメモり」
「はい! メモメモメモり、メモメモメモり! これは余さず記録して学会へと持ち帰り、考察と議論の場を広く設けなければなりませんね!!」
「いいえ使徒天乃、これは極めてデリケートかつ大変な話です。表沙汰にしてしまうと大きな問題になってしまう可能性が高いのですから、ここは我々使徒の間だけで密やかに、かつ濃密なやり取りを行いましょう──」
『何やら怪しげな活動に精を出しているアメはともかくチョコよ、我を扱う際の間合いについてはもう少し──』
「あ、そうですねそれは私も考えてました。なまじ普段遣いの剣より大幅に長いからちょっと慣れるまでに──」
一方で逐一、俺の漏らした言葉をメモっている伝道師と使徒。学会ってなんだよ不安になるだろ、考察とか議論とか何をどこで誰とやってるんですかね怖ぁ……
チョコさんはチョコさんでネムレスとあれこれ、武器の使い方について話ししてるし。あっちは真面目さんだなあ。
「パイセーン。救世主権限でちょっとお二人のカルトムーヴ自重させてもらっていいっすかね?」
「残念ながらそんな権限俺にはないんです……」
ガムちゃんがニヤニヤしながらからかうように当て擦って来るんだけど、法に触れてるわけでもない思想活動に対して俺に止める権利ってないからなあ。
なんなら今ここであれこれ話し始める狂信者2人から、視線を逸してしゃがみこんで地面に落書きを始める。そんな俺とガムちゃんだった。
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