顕現せよ!武器化ネムレス!!
さて、概ねザックリとだけど説明も終えた。となればいよいよスキルの修得と試しがてらの実戦だな。
準備はすでに整っている。アメさんは《武装化顕現》についての知識を得ているし、始原の4体による承認は済まされている。
であれば後は使うのみだ。ナビゲートは俺が務めよう。
「それじゃあアメさん、《召喚》をもう一度使ってみてください」
「は、はい──えっ!?」
「ど、どうしたのアメさん!?」
導かれるままに再度スキルを使おうとして、何か異変があったか叫ぶアメさん。
チョコさんがビックリして近づいているけど心配はいらない。派生スキルの条件を満たした状態で該当スキルを使うと現れる、ワールドプロセッサからの音声ガイドを受けているんだろうから。
ああ、ちなみにこの手の音声ガイドは生声でなく録音というか、前もって用意されている音声を使用している。
一々世界中の探査者に対してリアルタイムで音声を伝えるなんてしてる暇もないしね。アメさんの脳内に流れているのもその手の音声なのだろうさ。
「"特定条件の満了を確認しました。派生スキル《武装化顕現》を修得できます"……って聞こえました! 先生!」
「そのまま修得すると答えてください。それをもって新スキルが手に入ります」
「は、はい! ……修得します! 新たな力を、スキルを私は手にしたいです〜!」
別に叫ぶ必要はないんだけれど、まあ気分の問題か。
遠くからチラチラこっちを見ていたゴブリン達がビックリして、いよいよ敵認定したのか害意も露に向かってくる。
少しだけ足止めしようかな? と思った瞬間、俺より先に動いた人がいた。香苗さんだ。
「彩雲三稜鏡──モンスターを仮初めの檻へと閉じ込めなさい」
「グギャッ!?」
「グゲゲゲゲ、ゲ!?」
「──大人しくしていなさい。若き才能が今、新たなる一歩を踏み出す時を迎えているのです」
師である青樹さんからのプレゼント、彩雲三稜鏡。普段は腕輪だが香苗さんの意志に応じてマントだったり足場だったりと自在に姿を変える漆黒の粒子が、今はモンスタをー取囲み閉じ込める檻を形成していた。
足止め、ありがたい。香苗さんを見ると、彼女もまた微笑みとともに俺達を、アメさんを見る。
「使徒天乃。救世主様の導きを直接授かる立場にあるあなたは我ら救世の光大幹部にあっても一際特殊な立ち位置にいます」
「伝道師香苗様……! は、はい! 承知しています!」
「常に精進を怠らず、自身の向上に励み、しかして時には心身をも休めつつ──そして救世主様の教えを世に知らしめるのです。私や他の使徒達もそうしているようにあなたももう、尊き至高の教えを伝道する使命を担っていることを胸に掲げてください」
「使命……わかりました! 使徒として恥じることのない心と身体で先生を讃え、先生の教えを広めます!!」
「ねえパイセンなんなんですこれ?」
「俺に聞かないで?」
どんな時でも一切ブレないカルト宗教。なまじっかアメさんがマジで使徒になっちゃってるから、伝道師もこの際ノリノリで激励だかなんなんだか分からないことを口走っちゃってるよ怖ぁ……
ガムちゃんの呆れ声に俺はなんとも応えられない。なんなんですって聞かれてもなんなんだろうねって言うしかないし。チョコさんとリーベは真剣にアメさんと始原の4体を見守っているから、温度差がすごいや。
コホン、と咳払いをしてアメさんへと告げる。
獲得の意志を告げたことで《武装化顕現》は獲得したはずだ、あとはそれを使えばいい。
「あーっとそれじゃあアメさん、《武装化顕現》を使ってみてください」
「は、はい! 《武装化顕現》! ──ええと、が、画面が出ました! 始原様方の名前がリストっぽく載ってます〜!」
「よし。後は武器化対象を指定して宣言、武器となって現世に来てくれるよう、頼み込むだけです。他の誰でもないあなたの言葉と心、あなた自身でね」
「──対象、始原概念ネムレス様!」
スキルは獲得できた。あとはアメさん次第だ。
でもまあ、始原の4体とも心を通じ合わせた彼女であれば、あとは何も心配いらないな。やがては始原達だけでなく様々な概念存在達とも交流し、触れ合い、そして力を貸してもらえることだろう。
概念存在の始祖たるモノ達に愛されるならば、末裔たる概念存在達にもまた、愛されるだけの魅力が彼女にはあるのだから。
ネムレスの名を呼ぶ。同時にかのモノは居住まいを正し、他の三体も周囲から離れた。
同時に犬の身体が煌めき始めたな。武器化して現れる前に一旦、領域へと帰るわけか。やがて姿が消え果ててなお、アメさんは確信した面持ちで大きく強く宣言する。
「我が願い、我が求めに応じて御身の力を武具と成されませ──お願いします! 私に力を貸してください、私達を助けてください!」
『もちろんだ、アメ──ああ、良き願い、良き求めだ。応えるだけの価値がある!!』
無垢な願い。現世の知的生命体からのひたむきな訴えに応え、彼方から声が響く。
彼女の眼前にて開くワームホール、極めて小さなそこから、途方もない力を持つモノが姿を表した。本体だと大したこともないのだが、魂そのものを力とする武器化した状態ならばなるほど、目に見えてエネルギーを放ちもするのか。
現れる一振りの大きな剣。アメさんの眼前、ダンジョンの床に突き刺さり担い手を待つように煌めく。
黒い刀身に華美な装飾の柄。見るからに名剣と言えよう美しい大剣から、ネムレスの声が響いて聞こえた。
『始原概念ネムレス、武器化体──ここに顕現せり!』
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