《武装化顕現》習得への道のり
「条件は一つ、その名、その存在を知っていること! お出でくださいませ始原の御方々、矮小なる我が身、非力なる一つの魂に何卒その偉大なる力をお貸しくださいませ!」
すっかり手慣れた様子で《召喚》を使うアメさん。ダンジョン内で緊張を保ちつつでもしっかりとスキルを使用できるってのは、新人さんだと意外と大きな壁だったりすると聞いたことがある。
俺の場合は条件を満たせばオートで発動するパッシブスキルばかりなので経験することはなかったんだけど、発動が任意で行われるいわゆるアクティブスキルについては、新人さんのうちは扱いにも不慣れだろうからね。
以前の連携不足の一因としても挙げられるかもしれないそんなアクティブスキル《召喚》を、迷いなくスムーズに発動できたのはたしかな成長を感じる。
そんな彼女の呼びかけに応じ、始まりの概念存在達もまた彼方より声を上げて降臨した。
『呼ばれてきたぞ、我らが召喚主アメよ!』
『ついに来たわねこの時が!』
『我らも我らなりに現世に介入する日が来たかぁ。感慨深いなあ』
『よろしく頼むぞアメ、チョコ、ガム』
犬、猫、インコ、女の子。それぞれ1mサイズで次々に現出してくる。
ネムレス、ノナメ、ムメ、ゴンベ。始原概念、始原の4体とも呼ばれる概念存在すべての始祖たる存在達が今また、さっきぶりに現世に姿を現していた。
4者揃ってやる気十分だ、よっぽどアメさんとおかし三人娘の力になりたいんだな。ほぼほぼ傍観者だったモノ達がとんでもない変わりようだ。
それだけアメさんの、召喚者としての才能が桁外れということなのだろう。強いとか弱いとか、上とか下とかでなくただ、向こう側のモノに愛される人間的魅力、素養。
これらは願っても中々手に入れられないものだ。生まれ育った環境もあれば、そもそも生まれ持った素質というものも人格形成に大きく影響するからね。
アメさんはそういう意味で、まさしく天才なのだ。
「始原様方! 今回はよろしくお願いいたします、皆様のご期待に応えられるよう精進いたします!」
『そう身構えるな、アメ! 気楽に行けばいいとそこの山形公平も先程言っていたろう』
『あなたはスキルを覚えてソレを使い、我らはソレによってあなた達の力となり、そしてチョコが我らを行使する。それだけの簡単な話よ、気負うことじゃないわ』
『だけど起点はやはり君だからね、アメ! 頑張ろうっていう気持ちは大事だよ、さすがは我らの召喚主だ!』
心底からの崇敬とともに頭を下げる彼女に、犬と猫とインコがやはり擦り寄ってモフモフしていく。お前ら気に入ってるんだな、ソレ。
まあ当たり前だが向こうからこちらを見ていたようで、大体のことは把握しているみたいだ。ゴンベが俺を見、最後に確認を入れてくる。
『これよりアメに《武装化顕現》の使用承認を下せば良いのだな? そして我らのうち一体がひとまず武器となり、チョコの手に渡る、と』
「ああ、それでいい。そしたら後はチョコさんの出番だ、一戦ごとにお前達それぞれの武器化した状態を確認し、それを用いた戦いに対して慣れていってもらう。アメさんも、スキルを使うことでかかる負荷に身体を馴らさなきゃいけないしな」
『うむ。先のやり取りを領域から見ていたが、チョコは武芸百般のようだ。それならば我らも使われ甲斐があるというものだ、期待させてもらうぞ』
「は、はいっ! 任せてくださいよ、ゴンベ様!」
アメさんだけでなくチョコさんにもかけられる期待。始原達に限らず《武装化顕現》はあらゆる種類の武器を即時的に手にできる可能性のあるスキルだからな。
近接武器ならある程度、なんでも器用にこなせるらしいチョコさんならばスキルの真価を十分に引き出してくれるかもしれないわけだし、期待もそりゃあ高まるか。
チョコさんも緊張の面持ちでしかし、自信ありげに頷く。こちらもモチベーションやテンション的には問題ないな。
これならいけるかと考えていると、香苗さんがふと、カメラを携えて俺を映しながら尋ねてきた。
「一ついいですか、公平くん。《武装化顕現》とは、召喚したモノを現地にて武器にするプロセスなのですか? 概念領域にいるモノを、武器にした上で喚び出すのかと思っていたのですが……」
「その認識で合ってますよ、本来なら。ただ、今回はスキルの修得から始めなきゃなので、そのためにあらかじめ召喚体を喚び出しておく必要があるんですよ」
《武装化顕現》のプロセスとしては武器化して喚び出すで正しいんだけど、修得の際には現地に喚び出した概念存在から承認を得なきゃいけないのだ。
それもあって今、始原達を呼んでもらっているのだ。スキルを覚えるにあたって必要な条件の一つを、今この場にて満たしてもらうわけだね。
「一度覚えてしまったら、後はわざわざ《召喚》を使用せずとも直接《武装化顕現》を使えば武器の状態から喚べますよ」
「なるほど。ではもう一つ質問なのですが、そのスキルを使うにあたり制約はどの程度ありますか? 《召喚》のように定められた召喚条件があり、使用者のレベルによって満たせる条件数に上限があるなどするのでしょうか」
さすが香苗さん、召喚系の派生スキルってことでやはり、召喚条件絡みの疑問を投げかけてきたか。
《召喚》は呼び出したい概念存在それぞれが持つ、召喚条件を満たさないと呼び出せない仕様になっている。一般に上級存在であればあるほどに条件数も多くなってくるし、召喚者のレベルが低い場合は満たせる召喚条件の数も制限されていたりするのだ。
そんな仕様が《武装化顕現》にもあるのかどうか。
俺はアメさんやチョコさん、ガムちゃんにも含めてその辺を説明し始めた。
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