徳島千代子……天才じゃったか!!!
ダンジョンへと向かうにあたり、俺やリーベ、香苗さんにチョコさんガムちゃんはともかくアメさんは少しばかりの準備が必要だ。
着替えとかもしなきゃだしね。というわけでお客人だった俺達は一足先に鹿児島家を出て、家の前にてしばしの待機時間を過ごしていた。
「《武装化顕現》……徳島さんが専用武器を得るにあたり、使徒天乃の存在が必要不可欠になりかねないわけですか。これからは2人とも、互いに切磋琢磨しながらの連携がより重要になりますね」
「そうですね。スキルで生成した武器の強さはアメさんの力量にも左右されますし、何より実際に振るうチョコさんの技量も関わってきますから。どちらともある程度釣り合いが取れていることが今後、理想的な関係と言えるでしょうね」
香苗さんと2人、《武装化顕現》を得て以降のおかし三人娘の方向性について議論する。
スキルを修得して使うのはアメさんだけど、恩恵をダイレクトに受けるのはチョコさんだ。そして彼女が強化されればされるほどにおかし三人娘のパーティーとしての実力も底上げされていくわけなので、このあたりの話はほぼすべてが密接に関与していると言ってもいい。
そうなると重要なのはチョコさんとアメさんの実力的なバランスだ。釣り合いが取れてないとそれぞれ、手にした力を使いこなせないという事態に陥りかねないからね。
特に実際に武器化した始原概念を用いて戦うことになるチョコさんはいろいろ、慣れなきゃいけないことも多いだろう。俺は彼女に対して今からサクッとレクチャーを始めた。
「始原の4体がどんな武器を模すつもりなのか……おそらくはチョコさんに合わせて剣になるやつは必ずいますが、他にもいろんな状況に対応できるように槍とかになるつもりのやつもいるかもしれません」
「ってことは、私《剣術》以外にも《槍術》とかを修得したほうがいいかもってことですよね? うわ〜、大変だあ」
「言ってもチョコさん、スキルを持ってないだけで普通にその辺、武芸百般って感じじゃないですか。あくまで今はF級相応なんで、見習いってレベルですけど」
おかし三人娘における前衛アタッカーであるチョコさんは、それ故に前線での対応に臨機応変さが必要となってくる。
それを踏まえておそらく始原達はある程度武器種をバラけさせて顕現すると思うんだけど、そうした事態に慣れていかなければならないわけだ。
言うまでもなく大変な労力が必要、かと思ってたんだけど。どうやらガムちゃんの言うところによると彼女、すでに槍や斧などの近接武装についてはある程度動きを会得し始めているらしかった。
「剣はもちろん槍に斧、杖……棍? 棒? ですかね。加えてハルバードやら鎖鎌やら鎌やらトンファーやら鞭やら」
「えぇ……?」
「果てはパイセンよろしく素手やプロレスまでなんでもござれですよね? 最近になって模擬戦でいろんな武器を使い分けているの見て、正直ヤベーなこの武器マニアって思いました。斐川さんや荒牧さん、早瀬さんも唖然としてましたし」
「武器マニア!? 違うよ、前衛として使えるものはなんでも使えるようにしようと思ってるだけだよ!!」
剛速球を投げつけるガムちゃんは相変わらずの毒舌気味だけど、今回はチョコさんへの敬意というか畏怖のほうを強く感じる言い回しだ。
武器マニアと、たしかに言われてもおかしくないくらいいろんな種類を使いこなせるんだな、この人。前衛としてすごく立派な心構えだけど、やろうと思ってできることじゃ中々ないと思うんだよね。
しかも、あの葵さんをして唖然とさせるってあたり練度もそれなりのものだろう。各種技術に対応したスキルを持ってないのは、おそらくだが飲み込みが早すぎで習得条件と熟練度の伸びに乖離があるんだと思う。
はっきり言って天才だ……あの香苗さんやリーベまでもが驚きも露にチョコさんを見ている。
「徳島さん……ある意味それは、スキルよりもよほど大きな武器ですよ。数多の武器を状況に応じて使える、それもどの場合でもそれなりの練度で、なんて」
「各種武器に対応したスキルを身につけていければ、それたぶん……《武器術マスタリー》まで行きますよたぶん。ね、公平さんー」
「あ、ああ……すごいな。下手するとおかし三人娘の中で一番ストレートに強くなれるのは、チョコさんかもしれない」
「そんなに!? ていうかなんなんです、《武器術マスタリー》って」
揃って賞賛する俺達に、チョコさんは目を白黒させてガムちゃんは驚いている。いや、俺たちのほうがよっぽど驚きなんですが。
《武器術マスタリー》……《剣術》や《槍術》のような武器習熟速度アップ系スキルを一定数獲得することで統合される形で発生する、統合スキルの一種だ。
サウダーデさんの《格闘術マスタリー》同様に武器使用時の威力や技術に大幅なバフをかけるそのスキルは、獲得難度の高さに恥じない強烈な効果を持つ。
というかマスタリー系のスキルってマジで、努力だけで修得できる領域のものじゃないからね。少なくともチョコさんにはやり方次第で、いずれサウダーデさんにも届き得るだけの才覚が眠っているって可能性があるかもしれないのだ。
「……もっとも、実際に修得できるかはやっぱり努力も大きく関係してくるけど。それでも今の時点ですでに可能性の片鱗が見えているのは、相当異様なことだと思うよ」
「え、すごっ……チョコさん滅茶苦茶ド派手じゃないですか。最終的に面白みの塊じゃないですか」
「わ、私にそんなすごいスキルを修得できる可能性が……!?」
なんだかんだやっぱり、さっきゴンベに言われたことを今でも引きずっていたんだろう。思わぬ超特別スキルを得られる可能性に、唖然としながらもチョコさんの瞳が野心に煌めくのを見る。
この手のマスタリースキルは、普通のスキルをたくさん束ねて辿り着けるタイプの特別なスキルだからね。
アメさんやガムちゃんみたく最初からってわけじゃないけど、それでも努力を積み重ねていけば二人さえも凌ぐ特別に至ることもできる。
そんな、大器晩成型の探査者。
それが徳島千代子という、ある種の天才の正体なのかもしれなかった。
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