科学者じゃなくても「こんなこともあろうかと」は言えるものなら言いたい台詞
今後、アメさんが《武装化顕現》で武器化した始原概念を振るうことになるチョコさん。
ゴンベの言葉に落ち込んでいたけど、励まされて今はどうにかテンションを持ち直している。
アメさんやガムちゃんにはない、スキルに由来しない才覚を持つんだからそこは大きな武器だと思うんだけど、まあ一人だけ特別レアなスキルがないとこうもなるよね。
ただ、こんな風にコンプレックスを抱えているのも今のうちだろう。戦えば戦うほどに花開く才覚は大ダンジョン時代において、探査者を続けるならば覚醒と成長の機会に困ることはないからな。
ましてや《武装化顕現》によって武器と化した始原の4体を振るうともなれば、おそらくはチョコさんこそがおかし三人娘に決定的に不足している部分を補うピースとなってくれるはずだ。
俺は自分の見立てを半ば以上に確信しつつも、立ち上がり皆さんに告げた。
「よし! それじゃダンジョンに行って実地でスキルの修得を行いましょうか。今からちょっくら組合に行ってきますんで、皆さんはその間ゆっくりと準備を──」
「パイセンパイセンパイセンパイセンパーイセーンパイセン」
「何かな急に!?」
さすがに武器を取り出すスキルを一般民家の室内で習得させるわけにもいかない。サクッとおかし三人娘のランクに見合うダンジョンでも見繕って、探査がてら特訓と洒落込もうかとした矢先にガムちゃんが突然歌い出した。
テンポよくパイセンこと俺を連呼するのビックリするから止めて! 思わず叫ぶと年下の小悪魔後輩ちゃんったらまー嬉しそうににんまりしちゃって、探査用の肩掛けカバンから一枚の紙を取り出して俺に渡してきた。
これ……ダンジョン探査依頼書だ。しかも今日に申請受理されてる!
まさか! と彼女を見ると、ガムちゃんは渾身のドヤ顔とともに胸を張って宣言したのだった。
「ふふーん。こんなこともあろうかと……こんなこともあろうかと! 先に前もってよくできる覇王忍者のこの私が見繕ってたりしちゃってました、イェイ!」
「じ、準備が良い!? こうなることを見越してたの、マジで!?」
「いえまあ、実際のところは話が終わったら午後から軽く探査しようかって流れをイメージしてたんですけどね。わけ分かんない派生スキルについてはもちろん想定外です」
「そ、そうなんだ……」
こんなこともあろうかと、は覇王忍者というより天才科学者の領分なのでは? と思わなくもないけど、この準備の良さは驚愕だ。
どうやら元から軽く探査する程度を想定していたみたいだけど、タイミングがバッチリすぎてすべてを見通していたのかと一瞬ドキってしちゃった。
《未来予知》とか《状況演算》みたいな予知系スキルまで獲得したのかと思っちゃったよ。そこまでいったらさすがに盛り過ぎだもんな。
改めて依頼書を見る。F級で階層は1、部屋数は5つと極めてシンプルかつ初心者向けの構造だ。
これなら安心安全にスキル修得のための戦闘ができそうだ、場所も位置的にここからそう離れていない、民家の軒先だから行き帰りも楽ちんと言うことないね。
サムズアップでガムちゃんに最高! と示す。彼女も同じくサムズアップで返しつつ、やはりドヤ顔で笑って言った。
「いやーさすがは覇王忍者! 私とチョコさんに加えてパイセンと御堂さんまで来られるって聞いた時点で、じゃあ御堂さんを監督役にして探査してもいいじゃんって念のため依頼しといて正解でした! パイセンも私を讃えてください、この覇王忍者に凄絶なる御嘉賞をば!! なんならリーベちゃんも!!」
「忍者とは一体……うおー覇王忍者ー!」
「ガムちゃんってば楽しい子ですねー! いよっ! はおーニンジャー!」
めっちゃ褒めてムーヴしてくる覇王忍者様を、言われるがままリーベと二人で讃える。むふー! と鼻息荒くして御満悦なのがなんともはや、これが覇王忍者かあ。
まあともかく、これで準備が整い次第いつでも行けるわけだな。俺は始原の4体に向き直り、今後の段取りについて説明する。
「というわけで俺達はこれからダンジョンに潜る。戦闘が始まり次第《武装化顕現》の修得に移るから、その時また揃って召喚すると思うしそのつもりで一旦、還ってくれ」
『うん、承知したよ。言うまでもないけど、あのスキルによって武器化される我らは本体よりよっぽど危険物だからさ。おかし三人娘への説明はしっかりと頼むよ?』
「ああ、分かってる。そこまで含めて教える側の責任だ」
ムメの返事に俺もまた応える。
基本的には無害というか、なんの力も持たない始原の4体だが《武装化顕現》によって武器化された際には、おそらくフルポテンシャルだと超威力を秘めた危険物に早変わりするだろう。
無論、最初はアメさんの実力が低いからそんないきなりサウダーデさん並の火力を発揮する、なーんてことはありえないけど、無茶な使い方をすればどうなるかは分からないしね。
そのあたりは教える側の俺がしっかりと、責任を持ってレクチャーするつもりだ。というかそうでもしないとあんなスキル、ピーキー過ぎて使いづらいからね。
『アメ、何かあったらいつでも我らを喚ぶのだぞ!』
『《武装化顕現》、無理せずゆっくりと身につけなさいよ、アメ』
『お仲間さん達もアメをよろしく! 特にチョコ、君には期待してるよ』
『それでは一旦我らは還るとしよう。さらばだアメ、おかし三人娘! あと山形公平とその仲間達!!』
口々に別れの言葉を述べて始原の4体が去っていく。本来の住処、システム領域より一つ下の階層へと帰還したんだ。
まあそんなに間を置かずすぐに呼ぶんだけどね。まったく騒がしい動物園カルテットだったなと、俺は思いながらも彼らの帰還を眺めていた。
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