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契約を交わす以上はしっかりと、相手方の同意を得ましょう(戒め)

 アメさんの力になりたいがため、プライドを曲げてまでスキル《武装化顕現》の獲得を提示している始原の4体。

 それに対して召喚主たるアメさんの答えは、居住まいを正して深々と頭を下げての、ただひたすらの感謝であった。

 

「お申し出、ありがたく頂戴いたします……! 始原様方がこうまで言ってくださること、ご期待をかけてくださっていること、全身全霊をもってお答えしたく思いますから!」

『うむうむ、いい返事だねアメ。もし断られてたら我ら、他に提案もないからどうしようかなって思ってたんだ。ちなみに公平、代案とか何かあったか? 我らが明確にアメの力になれるような、《武装化顕現》以外のスキルとか』

 

 極めて真面目に、かつ真剣に始原の4体の期待に応えようとするアメさんの姿は頼もしく、そして好ましい。たしかにこれは、始原概念達さえ惚れ込むのも分かるなって思うよ。

 それを受けてゴンベが一安心って感じに胸を撫で下ろしながら俺に向けて質問してきた。どうやら《武装化顕現》以外にあてはなかったようで、仮に拒否られた場合の代案については俺に丸投げするつもりだったみたいだな。

 

 ふむ、と少し考えて──そもそもアメさんに追加でスキルを覚えてもらおうって話自体が今この場での流れで決まったことだ、代案なんてあるわけもないんだけど──俺はそうだなあと口を開いた。

 パッと思い浮かぶスキルといえば、アレくらいかなぁ。

 

「……《サモン・ユニオン》とかかな? 喚び出した概念存在の魂をスキル使用者に纏わせて、一時的な身体能力の向上を図るスキルなんだけど」

『あー、あったなそんなの』

「でもあれは使用者のポテンシャルを参照して出力を引き出すタイプだから、どうあがいても《武装化顕現》よりは最終的には弱くなるんだよ。そもそもアメさんは後衛だから、身体能力の向上はそこまで重要なところでもないし」

「召喚体とともに前線で戦うようなタイプの探査者なら使い道がありそうですね……メモメモメモり、メモメモメモり」

「完全に後衛からのサポーターな私だと、せっかくのお力を無為にしてしまっていたかもしれませんね……メモメモメモり、メモメモメモり」

 

 地味に伝道師のメモ芸が継承されている。怖ぁ……何をそんなに二人してメモることがあるっていうの。

 さておき、俺からのパッと思い浮かぶ代案なんてそんな程度のものだ。家に持ち帰って深く考えればもうちょいなんかあるかもだけど、始原の4体の強み、無闇に高い魂の格とかまで考慮に入れるとやはり、《武装化顕現》がベストに近いのかなーって思えてきたよ。

 

 ちゃんと考えてたんだなあ、始原達。

 よっぽどアメさんの力になりたいのだろう。そんな思いに、これはちゃんと今日、頑張って彼女にはスキルを修得してもらわないとなーと意気込む俺だ。

 

「……というわけでそうと決まれば話は早い。さっそく《武装化顕現》の修得に移りましょうか」

「はいはーいパイセーン、そんな気軽に言いますけど、簡単に修得できたりするスキルなんすか、それー?」

 

 善は急げと提案する俺に、挙手してガムちゃんが質問してきた。お手軽なノリで話が進んでるけど、いつでも冷静に指摘してきてくれるのはこの子の強いところだね。

 スキルを、それも《召喚》からの派生スキルの修得なんてそんな簡単にできるものなのだろうか──できちゃうんだなあ、これが。


 こと《召喚》絡みの派生スキルに限り、修得は条件さえ満たせば即座に行えてしまうものが多いのだ。

 俺はガムちゃんのみならず、この場にいる他の面々へも説明する。

 

「召喚系スキル、とりわけ派生スキルについては修得条件が一律して決められています。"そのスキルの存在を知っていること"と"概念存在からの承認を得ること"、この2つですね」

「前者は始原様方の召喚条件によく似ていますね。後者は、ええと?」

「《武装化顕現》が概念存在の人達からは嫌われてるスキルなんですよね? なのにその修得にそれって、なんか矛盾しているように思えますけど」

 

 おっとチョコさん鋭いご指摘。そうだね、普通に聞いてたら明らかにここはおかしいよね。

 他はともかく《武装化顕現》については概念存在のほぼすべてのモノから忌避されがちなスキルだ。さっきも言ったけどわざわざ物扱いされにいく概念存在なんてほぼいないし、そもそも提案した時点でキレられてもおかしくない程度には無礼扱いされちゃうスキルでもあるし。

 

 しかしこれも時と場合によるのだ。

 たとえば、と想定し得る修得パターンを指折り数えて挙げていく。

 

「《武装化顕現》を修得しなければ召喚主の命が危ないパターンですとか、あとは修得そのものは認めるってスタンスの概念存在に話を通すとか。武器にされるのは嫌でも、スキルを身につけること自体は良しとするモノもおそらくはいるでしょうね」

「あとはアメちゃんと始原の4体みたいにー、召喚主と召喚体の関係が極めて良好な場合とかですねー。こっちは本当に稀なパターンですよ、誇っていいですー!」

「あ、ありがとうございます! 始原様方の御慈悲に感謝いたします〜!!」

「つまりは概念存在側の胸先三寸ってわけですか……他の派生スキルもそんな感じだとするなら、召喚系スキルってやっぱコミュ力ありきなんですね。そう考えるとアメ姉、適正はあるのかも」

 

 大体の場合、結局相手側である概念存在の意向も関わるんだよね。これは《武装化顕現》に限らず他の召喚系派生スキルすべてに当てはまる話だ。

 だからガムちゃんの言うように、コミュ力ありきの陽キャチックなスキル群であるとは言えるのかもしれない。人柄が良く、健気で始原の4体までも魅了するアメさんにはなるほど、なんだかんだベストマッチと言えるのかもしれないね。

ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いしますー


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[気になる点] 「召喚系スキル、とりわけ派生スキルについては修得条件が一律して決められています。"そのスキルの存在を知っていること"と"概念存在からの承認を得ること"、この2つですね」 >そのスキル…
[気になる点] もうこれを自由研究にしてしまってもいいんじゃないか
[一言] そのサブスキル取得に関するメリットとデメリットをパワポとかにまとめてガチプレゼンして契約する、営業タイプのサモナーとかいそう
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