娘5人、寄らばコイバナ
段々と堂に入ってきた、風格すら漂ってきた伝道師とそれに追従する使徒については壮絶にスルーするとして。
メンバーも揃ったわけなので俺は早速、アメさんのさらなる強化に対しての意見を広く募集することにした。
「かくかくしかじかぐーてんもーげん……てなわけでアメさんには《召喚》からの派生スキルを習得してもらいたいわけなんですけれども」
「当たり前のようにしれっと言いますけど、派生スキルの習得条件なんてそんな簡単に分かるものじゃないでしょうに、パイセン……」
「本当にスキル博士なんですね、山形さん! 関口さんも言ってました、山形さんの知識量は明らかにおかしいって。自分も負けていられないな! って!」
「別に勝ち負けじゃなし、雑学程度のことでしかないんだけどね」
システム領域にまつわる部分を概ねカットしつつ事情を説明したところ、ガムちゃんとチョコさんのお二人から何やら変なところで感心されてしまった。
そりゃたしかに、なって半年の新米が知ってることか? 感はつきまとうけど……少なくともガムちゃんについては《忍術》の派生スキルである《忍法》について教えたりしたこともあるわけなので今さらではあるよね。
チョコさんは相変わらずの関口くんラブを隠すことない感じでごちそうさまだ。
関口くんのモテ方は本当におかしいくらいだしライバルはガロン単位で数えてもいいくらいいるだろうけど、俺個人はチョコさんを応援しているよ! 無理せず恋してね!
「ふむ……それで徳島さんと新潟さんにも意見を求めていらっしゃるのですね公平くん。使徒天乃の強化はすなわちおかし三人娘というパーティーそのものの強化。パーティーにとってより良い選択をしたい、と」
「そうですね、香苗さん。何しろ《召喚》にまつわる派生スキルって種類も多ければ方向性もそれぞれ多岐に渡りますから」
「アメちゃん本人を強化したり、他の仲間を強化したり、あるいは喚び出したモノを強化したりといろいろなんですよねー」
香苗さんが俺の、おかし三人娘全員へと強化案の方向性について尋ねた意図を言い当てる。
伝道師だけどそれ以前にS級探査者だからね、この辺の考え方や知識、経験はそれこそ世界屈指と言ってもいい。こういう場面で理解を示していただけるのは正直、とても助かるよ。
そしてリーベも、ざっくりとした方向性についてサンプルを挙げてくれた。すなわち自分か仲間か喚び出したモノか、いずれかに対して効果のあるものだと提示したのだ。
こちらも明瞭でありがたいなあと感謝していると、そういえば! と彼女が不意にチョコさんとガムちゃんへと向き直った。
なんだ?
「なんかナチュラルに接してましたけどー、お互い名乗りもまだでしたねー! 公平さんの相棒、F級探査者のリーベですー! よろしくお願いしますー!」
「え、あっ……そういえばそうでした! なんかすっかり馴染んでましたね、ごめんなさい! F級の徳島千代子、通称チョコです!」
「たしかパイセンと初めて会った時とか、こないだの宴会の時にもいましたよね。どーも新潟花夢です。読み方はかのんですけどガムって呼んでもらえればそれで」
そう言えばこの中でリーベだけ、おかし三人娘とは面識はあれどやり取りはなかったな。さっきアメさん相手には俺ともども正体まで含めて打ち明けたけれど、残る二人に対してはまだ名乗りもしてなかったか。
立場的には同じF級同士で、リーベも三人娘も人懐っこくて明るい人達だ、すぐに仲良くなるんだろう。ていうかリーベのコミュ力がヤバいから、次の瞬間マブダチになっていても不思議ではない。
「へー! チョコちゃんは関口くんのことが好きなんですねー! 青春、青春! リーベちゃんも陰ながら応援しちゃいますよー!」
「えへ、えへへ……でも中々ライバルも多くて。人脈も豊富な人だから、最近だとアイドルの人達と一緒に写真を撮ってSNSにあげてたりして、なんかすごく焦っちゃうなあって」
「いつものセレブ気取りパーティーに呼び寄せた客寄せパンダとつるんでるだけの写真じゃないですかねそれ……てか普通に考えて弟子のチョコさんのが距離近いでしょ、グイグイ行かなきゃ」
ほら見ろ、もう仲良しだ!
チョコさんの恋模様についてすでに3人、和気藹々と語らっていらっしゃるんですけど何この打ち解けスピード、怖ぁ……アメさんに香苗さんまで目を丸くしてるじゃん。
あと地味にアイドルとプライベートで交流してるらしい関口くんはそろそろ派手に炎上すると思う。ガムちゃんが最近鳴りを潜めていた毒舌を披露するけど、普通に疑惑の写真扱いされてもしかたないんじゃないかなあ。
まあ、チョコさんのが普段から弟子として交流してるだろうからチャンスの数は多いだろうけど。見た感じ普段はアクティブなのに、ことこういう話になると引っ込み思案になるみたいだ。
リーベが彼女の背中をパシパシ叩いて励ました。なんなら俺達のほうを向いて、同意を求めるように尋ねてくる。
「行かなきゃー! アタック、アタック! ね、公平さんにミッチーにアメちゃんもそう思うでしょー!?」
「…………えっ。えっ、それ俺に聞くのか!?」
「私に聞かれましても……悔いのないようにすればいいのでは? とだけ」
「れ、恋愛話についてはあまりその、疎くて……」
言っちゃなんだが俺も香苗さんもその辺のことを聞かれたって答えようがないよ。陰キャとつい最近まで人間不信だった人だぞ。
アメさんも困惑しているけど、この人もその手の話には食いつきが薄いんだなあ。
これだけの美人さん、人当たりもいいし人気あると思うんだけど。本人が気づいてないだけで、結構な男の人から想いを寄せられている可能性もあるよなあ。
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