お金持ちの自室には大体ウォーターサーバーが置いてありそう(偏見)
アメさんのご両親へのご挨拶も終えて、俺とリーベはアメさんの部屋に案内された。込み入った話をするのに、さすがにアメさんパパママを交えるのはちょっとアレだしね。
人の家の二階にまで上がらせてもらうとか、滅多にない経験でやけに緊張する。
御堂本家みたいな、旅館かな? って思うほど大きくて広いと逆に世界が違いすぎてこれはこういうものなのか、と納得できちゃうんだけど……アメさんのお家はもちろん立派なんだけどあくまで日常生活的と言うか。
俺の家をスケールアップしたような規模なため、ちょっと馴染むから変に緊張しちゃうんだね。
「こちらが私の部屋になります先生、リーベ様」
「あっ、はい! …………ええと、リーベからどうぞ」
「挙動不審すぎますよー? もうちょっと堂々としたらいいのにー」
アメさんが自室のドアを開けて誘ってくれるのだけど、ここで分かりましたお邪魔しますーわあここが大人のお姉さんのお部屋かーなどと素面でできるなら陰キャなんてやってない。
そもそも俺から入るのがどうにも躊躇われて困る。というわけでリーベに先に入ってもらうことにしたところ、苦笑いされながらキョドりすぎと言われてしまった。ぐうの音も出ない。
いやでもこの反応は男子高校生なら大体こうなると思うんだよ。関口くんほどの陽キャならともかく俺は陰キャなんですよ?
大体アメさんだって、仮にも異性を自分の部屋に招くというのにあっけらかんとしてるのはマジかよ~って思わなくもないよ。まあこの人かなりの天然さんだし、特に気にしてもいないんだろうけど。妖艶な美女なのに内面は無垢な童女さながらのギャップ!
「お邪魔しまーす! わ、綺麗なお部屋!」
「お、お邪魔します……」
「そちらのソファにおかけになってくださいませ、お二方様」
おずおずと部屋に入ると、これまたすごいお清楚な光景が俺を待っていた。
ベッドにソファ、テーブル、デスク。クローゼットにお化粧台。床から壁に至るまで新装かよってくらいピッカピカだ。来客用に掃除したとかでなく普段から気をつけて生活してるんだろうなって感じの、馴染んだ美しさを感じる。
ていうかテレビはともかく冷蔵庫とかウォーターサーバーまであるよこの部屋! お金持ちだ! すごい!
……俺の部屋にもこれ欲しいな。金銭的には全然余裕なんだけど今までこんな発想自体がなかった。自室専用の冷蔵庫だのウォーターサーバーだのを設置するなんて、ブルジョアジーすぎて考えもしなかったんだね。
リーベも目を輝かせて、特に冷蔵庫を指さして俺の袖をくいくいっと引いてくる。
「あ、あれ! 冷蔵庫、冷蔵庫がお部屋の中にありますよ公平さんー! あれすごいですよ、公平さんも買いましょうよ、設置、設置!」
「俺も今感動してたけどお前、俺の部屋に入り浸ることを前提に話ししてるだろ! お前の部屋に置いたっていいんだぞ、間取り的にはお前か優子の部屋のほうが広いんだから!」
「あーん意地悪言わないでくださいー! 結局リーベちゃんも優子ちゃんもシャーリヒッタも、公平さんのお部屋に集まるんでしょうからー!」
「さらりとシャーリヒッタを加えるなよ! あの子が一番その辺ガチっぽいから困るだろ!」
まだ受肉さえしてないシャーリヒッタをカウントしてまで、俺の部屋に冷蔵庫を導入するようねだるリーベ。
明らかに自分が入り浸ってるからって快適な空間を創り出そうとしているのが見え見えだこいつ、自分の部屋にも置けよ高給取り!
ちなみに今言った通り、山形家の個室において一番規模が小さいのは何を隠そう俺ちゃんの部屋だ。
言ってそこまで差があるわけでもないけど、間取り的にね。
ベッドやテーブル、机もあるしでまあまあ一人用の部屋感出てるんだけど、なんでかリーベと優子ちゃんは俺の部屋に来る。妙に居心地がいいらしいんだけど、だからって冷蔵庫をねだるなと言いたい。いや俺もほしいけどもさ!
ウォーターサーバーもいいなー! 欲しいなー!
とないものねだりを思い切りしている俺とリーベが促されるままソファに腰掛けると、クスクス笑ってアメさんも対面に座った。今のやり取りがツボに入っちゃったみたいだ。
「ふふ、ふふふっ……! なんだか楽しいです、お二人の会話」
「う……すいません、はしゃいじゃって」
「山形家のオアシスをより良い快適空間に仕上げるためについー……」
「いえ、お気になさらず! 本当に羨ましいくらいなんです、家庭内でそんなにも仲良くされているのが」
「え、と。それはどういう……?」
ちょっぴり寂しそうにアメさんが言う。何かあるのかな? と思って尋ねると、どうやら彼女、姉が二人いるらしいのだ。
神社で巫女さん勤めをされている長女さんのほうとは仲良くやってるそうなんだけど、会社勤めをされている次女さんのほうと折り合いが悪く、何かにつけ絡まれるのだとか。
どうやら妹が探査者になりお金持ちになるのが確定したからって、その辺でコンプレックスを刺激されちゃったみたいだとアメさんは分析している。
「昔からその、物欲や金銭欲の強い姉でしたから……お金を稼げるから探査者になりたいともことあるごとに言っていました」
「それで実際に探査者になったアメさんに嫉妬していると。大変ですね……」
「昔は仲も良かったんですけどね、今ではすっかり敵視されていて。ですから先生とリーベ様の楽しそうなお姿が、なんだかとても眩しく映るんです」
「そう、なんですねー……」
内勤はともかく外勤のほうは、お金目当てで頑張るにはちょっと命がけの場面が多すぎると思うんだけどね……
非探査者の方からすると、やっぱり探査者ってばちょっと穴蔵に潜るだけで数百万、平気で稼ぐラッキーな連中に過ぎないと考える人もいるってことなんだろう。
仕方ないとはいえ、ちょっぴり寂しい話ではあるよねー……と。
アメさんが力なく微笑むのを、なんだか神妙に見つめる俺とリーベだった。
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