鹿児島さん家にこんにちは!
帰宅して昼飯食べて後、その日は一日のんびりと自室にて過ごして翌朝。
俺はリーベを引き連れて約束通り、アメさんの実家という神社を訪ねさせてもらっている。ローカル鉄道で何駅か移動して、そこからさらに歩いて少ししたところにある、町中に大きな敷地を持つ立派なお社だ。
毎年、初詣でも訪れたりしていて馴染み深い神社だよ……アメさんってここのお家の人だったんだね、すごくビックリだ。
朝早くからでも参拝客がチラホラいる光景を見つつ鳥居をくぐれば、その先にある門の前にてお目当ての人物が折り目正しく挨拶してくる。
アメさんだね。巫女装束に身を包み、黒髪を後ろに束ねて結っている。
「先生! ようこそお越しくださいました! 本日はお世話になります〜!」
「どうもこんにちは、アメさん。今日はよろしくお願いします」
深々と頭を下げる彼女は、相変わらず俺のことを先生だと言って師匠扱いを憚ることがない。そこまで大層なことをする気もないし、そもそも年上のお姉さん相手に偉そうにしたくないなあと心から思うよ。
ガムちゃんもいたらここでまた絡んでくるんだろうなあ、と、もう一人いろいろお伝えしているおかし三人娘の一人を思い浮かべる。
あの子は少し時間をずらしてから来るそうなので、昼前くらいになるかな? みんなでお昼ごはんを食べた後、軽くダンジョン探査をしてもいいかもしれないな。
「こんにちはー! かわいいかわいいリーベちゃんでーっす! 鹿児島さん、よろしくお願いしますー!」
「っ! やはりあなたがリーベ様なのですね! お話はかねがね、始原の方々からお聞きしていました! お会いできて光栄です〜!」
「え……何を話してるんですかネムレス達……」
一方で連れてきたリーベも挨拶したところ、まさかの始原の4体から詳しく聞いていたみたいで逆に面食らうことに。
小さく始原に対して抗議を呟いているね。この調子だとこの子が精霊知能ってことまでアメさんは御存知なんだろう。
熱い視線が俺へのものと重なるし。やーい狂信され仲間ー。
「いつもこれの数億倍の規模の発言をしてくるんだよあの伝道師さんは。お前今度いよいよ例の会のアイドルになるそうだけど、ヴァールみたく呑み込まれないように気をつけるんだぞ」
「深淵か何かですかねー……というかヴァールの、公平さん絡みでの押しの弱さはなんなんでしょうかー? 恋愛ゲームなら開始1クリックでルート突入できちゃいそうなくらいチョロいんですけどー」
「お前それは本人に言うなよ。絶対喧嘩になるから」
ヴァールがやたら伝道師に押されまくった挙げ句、ついに新たなる使徒としての道を見出しつつあるという恐怖体験。揶揄されても仕方ないくらいにあの子、伝道に弱い一面をこの一月ほどで何度も晒しているからなあ。
これをリーベのみならずシャーリヒッタまで知ってたら、いよいよ末っ子ヴァールちゃんが定着しちゃいそうだ。怖ぁ……
門前で軽く、そのようにワチャワチャしていると通りすがりの参拝客の視線を惹くばかりだ。
なので俺達三人はその場でのやり取りはこの辺に切り上げて、アメさんの案内を受けて境内へ入る。社の左手にある脇道を抜けた先にある民家が今回の目的地、鹿児島家のお家らしいけど、その前に神の住地にお邪魔しているわけだしね。
一応お参りという形でご挨拶はしておこうか。
賽銭を入れて二礼し二拍手、そして一礼。
慣れた人は祝詞だかまで唱えるのだろうが、俺は別にそこまでじゃないしな。ただ、お騒がせしますお邪魔します、とだけ念じるばかりだ。隣ではリーベもそうしているね。
ことが済んで、いよいよアメさんのお家へ向かう。道中、俺達が先にお参りを済ませたことに彼女は喜色満面に笑いかけてきてくれた。
「お気遣いくださりありがとうございます、先生! きっとこの地におわします神々も、先生のことをお見守りくださっています!」
「ま、まあ見守ってはいる……のかなあ?」
「見張ってるってほどでもないですし、まあ見守ってるでいいんじゃないですかねー」
────きっとも何も、バッチリ見られているんだよなあ。
鳥居をくぐったあたりからこっち、ここを仕切ってる神とその取り巻きが、ほうほうふむふむって感じで見てきてるのを俺とリーベは感知していた。
なんなら見えるもの。鳥居の奥から数体の概念存在が、精神体の状態で集まってるのが。
敵意はもちろんないし、やはり好奇心ばかりだけれど居心地の悪さはすごいある。たしかここの祭神さんはかなり高名で位のある神だったと思うし、どっしり腰を据えて見てくるだけなのが救いといえば救いかな。
さっさとアメさん家に入って、お互い注視し合う微妙な空気から逃れようか。小声でリーベが尋ねてくる。
「ないとは思いますけど、しかけてきたりしますかねー?」
「それはないと思う……織田も動いているだろうし、そもそも日本神話勢は日和見主義みたいだしな。少なくとも俺らがやらかさなければ向こうもノータッチのはずだ、たぶん」
数日前、織田が語ったところによれば日本神話の神々は根本的にことなかれ主義らしく、大ダンジョン時代そのものに対して静観を決め込んでいるとのことだ。
魂の規格が人間になっている俺はともかく精霊知能としての魂を維持しているリーベなんてさぞかし目立つんだろうけど、向こうもことを荒立てる気はないはずだ。
まして北欧神話の最高神がストッパーとして動き始めているだろうし、こっちが下手を打たなければ早々変なことにはなるまい。
半ば織田に丸投げするような、そんな心地でそう思う俺であった。
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