排出率0.001%もなさそうな山形
結局、リーベによる決戦スキルの説明をある程度──主にアドミニストレータについてだな──端折り、さらにシステムさん直々の説明としてみんなに伝えることにした。
リーベの存在は説明が面倒だし、今この状況においてはノイズにしかならない。アドミニストレータにしてもそうだ、システムの向こう側に寄った話をしすぎると焦点がぼやける。
この辺の話はもう、リーベが顕現したら本人の口から説明させるのが良いだろうな。
「ステータスを作った者、システムさん……神のようなもの、なんだろうねえ」
「にわかには信じがたいですが、実際に異様極まるスキルや称号を見ては、ですね……《鑑定》スキルが今日ほど疑わしかった日も、早々ありませんよ」
「そして決戦スキル、ですか。邪悪なる思念を弱体化させるために必要な、4つの特別なスキル。それの一つがマリーさんのスキルだと。なるほど……」
三者三様にリアクションを返してくる。特にマリーさんの受けた衝撃は相当だったようで、穏やかながらもどこか、震えと昂りが抑えきれていない様子だ。
人生をかけて待ち続けたスキルの正体が明らかになったんだ、無理もない……同時に邪悪なる思念なんていう化物を相手にしなくてはならない事実も判明したんだけど、そこはさすがS級だ。全然気にしてない感じだった。
「ふーむ。私のスキルの正体が知れたのは良い。人生の謎が解けたもんで、もういつ死んでも悔いがないくらいさね」
「縁起でもない……」
「だけどそうなるともう一つ、疑問が生まれる。何で公平ちゃん越しにシステムさんとやらは、この決戦スキルについて知らせてきたのかねえ? 別に直接言ってきたって良いだろうに」
まあ、そうなるよね普通。俺だって、直接言えやと思うし。
その辺はたしかに気になる。レベル300とか言ってないで今すぐ出てきて説明してくれよ、リーベ〜。
『いやー、さすがにそこは……リーベちゃんが出てきて色々暴露すること自体が、この時代にとっての一つのスイッチなんですよ。もう言っちゃいますけどー、第1段階はアドミニストレータ用スキルが人間の手に渡ること、第2段階が精霊知能のこの世界への顕現、および世界の真実を暴くことです。ちなみに第3段階はすべての決戦スキルが、アドミニストレータの元に集うことですよ』
おいこら第3段階、既に一人目の前にいるじゃないか。ていうか前にもなんか言ってたな、スイッチがどうたら。
その段階ってのはいくつあって、全部クリアするとどうなるんだ?
『全部で第4段階ありますねー。最後の段階になると、いわゆる最終決戦開始です。こちらから打って出ますから、本当の本当に準備が整ってからにしたいですよねー』
ですよねー、じゃないよ。最終決戦開始ってなんだそれ怖ぁ。つまりはその段階とかスイッチって、ラスボス戦へのフラグみたいなもんじゃないか。
しかし聞く限りではその、最終段階ってのは任意でスイッチを入れられるみたいだけど。となるとまだ一応、第1段階な今は全然、慌てる段階じゃないってことか。助かるー。
『前も言いましたけど、全然焦る必要ないですよ? 白状しちゃうとシステムさん的には、あと1000年くらいは待たなきゃいけないとか思ってたっぽいですし。予定よりずーっと早くアドミニストレータ用スキルを獲得できる公平さんが現れてくださって、すごく助かってます』
1000年……それはまた悠長というか、気長というか。アドミニストレータ用スキルを使える人間が現れるのってそんな、レアだったのか。山形UR説あるなこれ。
なんか気が楽になってきた。俺の存在がそんなに余裕のある状態で現れたんなら、いずれ邪悪なる思念の本体との決戦はしなきゃならんにせよ、タイムリミットにテンパることはないってわけだな。
『あ、でもなるべく、早めにもーっと強くなってくださいね! アドミニストレータ用スキル保持者が、決戦スキル持ちに負けてるなんて状態、普通に悔しいですし! ましてや公平さんほどの方がそんなの、理不尽すぎてムキーってなります! なってます!』
分かった分かった。何をそんなにムキになるんだか知らんけど、まあボチボチレベル上げにしろ何にしろ頑張りますよ。
俺はそこで一旦、リーベとの会話を打ち切って面々に告げた。
「えー、ちょっと色々と段階を踏まないと、皆さんの前にシステムさんの遣い的なものをお見せできないそうです。なんでもラスボス戦のフラグが一つ立つとか」
「ゲームみたいなこと言うね。ラスボスとは、邪悪なる思念とやらのことで良いのかな?」
「みたいです。なんか4つくらいフラグを立てると挑めるみたいで、今は一つだけ成立してるみたいです」
「本当にゲームみたいだねえ。システムさんという名称といい、世界がシステマティックに思えてくるさね」
たしかに。マリーさんの言うとおり、なんだかゲーム的すぎて現実味が薄くなってきている気がする。
けどまあ、紛れもなく世界の真実なんだろう。現実の裏側に潜んでいた光景が見えた気がして、俺は肩を竦めた。
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