表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
909/1833

空間転移は転移先の状況、状態、現地の方々の了承を得た上で合法的に使いましょう(戒め)

 翌日朝。起床した俺とアイは揃って顔を洗い、縁側で陽の光を受けながら軽く柔軟体操なんてして身体をほぐし、それから親族揃っての朝食を食べた。

 御堂本家と違ってうちの朝食ったらシンプルなもんで、ご飯に味噌汁にお漬物、あと卵焼きくらいなものだった。

 


『ふむ、まあ朝だしこんなもんか。欲を言えばウインナーくらいくれよって感じだけど、盆? だかの時期にはあまりよろしくないんだろ? ならいいさ、その土地の文化ってやつだ』

 

 

 アルマがちょっと物足りなさそうにしてるけど、贅沢言うなよなあ。十分ご馳走だろうに。

 盆を気にしてそこまで喚かないのは助かるけど、個人的には意外に思う。こいつそんなの関係ないだろって言いそうだと思ってたんだけどな。

 まあ端末で動いてた時期も割と、揉め事を起こさないよう社会のルールには合わせてたみたいだし、そのくらいの分別はあるのか。

 

 考えながら味噌汁を啜る。うん、いい塩梅。家で母ちゃんが作るのよりちょっと塩分控えめって感じでいいね、お漬物とよく漬かっていておいしい。白米に合う。

 卵焼きもフワフワしていて美味しい。昨日の夕食は寿司だの刺身だの食べてたからね、そこからの今朝はむしろこういうのがありがたいんだ。

 

 

『ふむ……質素といえば質素だが悪くはない。素朴というべきかな。ゴージャスでボリューミーなものも素敵だけれど、こういうのもいいねえ、美味しい!』

 

 

 なんだかんだ脳内のアルマにも好評のようで何より。こいつ案外、どんなものを食べてもポジティブに受け止めるなあ。

 いいことだ。あれが足りないこれが足りないとぶつくさ言い続けるよりも、今あるものにひとまず満足して感謝するほうが健全だと思うからね。さすが美食家の端くれなら、その辺の意識はあるってことなんだろう。

 

 朝食も無難に食べきって、俺は歯を磨く。

 こうなるといよいよ帰省も終わり、家に帰る頃合いだ。俺は荷支度、ってほどじゃないけど準備を整え家の外、庭に出て車の中に荷物を詰めた。

 他の親族のみなさん、洋介さん御一家や二宮さん御一家も同様にして、帰る段取りをテキパキと整えていた。

 

「今年の盆も短かったなあ……公平や優子とはまた一年、会わないわけかぁ」

「リューちゃんや春香ちゃんは近くに住んでますけど、公平ちゃん達は、ねえ……」

 

 庭先で集まる親族、じいちゃんとばあちゃんが寂しそうに俺達を見る。

 洋介さんの家と健吾さんの家はこの近辺だし、会おうと思えばいつでも会える。実際リューさんは頻繁に会いに行ってるみたいだし。


 でも俺と優子ちゃんはそうもいかない。車でもそこそこ長い時間をかけなきゃ行けない、バスなんて一日に数本しか通ってないような田舎にそう足繁く通えるわけもないのだ。

 ……去年までならね。俺は笑って二人に教える。

 

「俺とリーベは、遠く離れた場所にも瞬時に行くことができるスキルを持ってるんだ。だから今年からは、もう少し頻度多めに顔を出したりできるかも」

「! 本当か!? そう言えば一昨日も、なんの前触れもなくゾロゾロと大人数でやってきてたが、あれも!?」

「はいー! かわいいかわいいリーベちゃんのスーパースキルでーっす!」

 

 思わぬ申し出に驚くじいちゃん。ばあちゃんや他のみんなも目を剥いて驚いている。

 まさかワープ機能搭載山形くんになっていたとは思いもしなかったろう。リーベなんかドヤ顔でピースしてるけど、みんな唖然としちゃって若干滑ってるし。怖ぁ……

 と、リューさんが困惑しきりに尋ねてくる。

 

「お、お前じゃあなんでおじさん達と車で来たんだ……そんな便利パワーあるならサクッとワープして到着でいいだろうに」

「さすがにいきなりだと驚かせちゃうかなーって。電話で説明した上で転移しても、初めて見る人は腰抜かしかねないくらいには変な光景だろうし。ちゃんと会って説明して、許可を得てからしたかったんだ」


 せっかく便利な力があるんだし、それ使ってぱぱっと移動しちゃえばいいじゃん、となるのは当然の話だ。

 しかし何しろ転移先に人がいるパターンの転移になるため、しっかりと許可を得てからスキルなり権能なりを使いたい思いももちろんある。


 下手すると不法侵入とかだし、そうでなくとも遠方にいるはずの孫達がいきなり顔を出したら何事かと思うだろうからね。

 そんなわけでできる限り最初は、事前に事情を説明して許可を得たかったのだ。

 加えて家族の事情もある。父ちゃんが続けて話した。


「あと、公平とリーベちゃんに頼りっぱなしになっちまうからな。この子達が個人で移動する分ならともかく、家族みんなでってのはちょっと危なっかしいと思ったんだ。二人がいないとここからバスと電車で帰らなくちゃいけなくなるしな」

「ああ……ここ車じゃないと時間もお金もかかり過ぎちゃうものね」

「万一がないとも限らないってわけかあ」

 

 俺とリーベ、どちらかの力で移動するということは、俺とリーベがどちらもいなくなった場合、父ちゃん母ちゃん優子ちゃんにとってここは半分くらい陸の孤島と化す。

 そのくらい交通の便が自家用車以外に存在してないんだよ、何しろ山間の田舎だからね。

 

 その辺のリスクも合わせると、やはり家族みんなで訪れる時は車で行って、俺やリーベが個人で訪ねる時は転移にする、くらいの塩梅がいいだろうと判断したわけだった。

ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いしますー


【お知らせ】


「攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」のコミカライズが配信されております!

 pash-up!様

 (https://pash-up.jp/content/00001924)

 はじめ、pixivコミック様、ニコニコ漫画様にて閲覧いただけますー

 

 能勢ナツキ先生の美しく、可愛らしく、そしてカッコよくて素敵な絵柄で彩られるコミカライズ版「スキルがポエミー」!

 漫画媒体ならではの表現や人物達の活き活きとした動き、表情! 特にコミカライズ版山形くん略してコミ形くんとコミカライズ版御堂さん略してコミ堂さんのやり取りは必見です!

 

 加えて書籍版1巻、2巻も好評発売中です!

 ( https://pashbooks.jp/tax_series/poemy/ )

 よろしくお願いしますー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 空間転移スキルって人やそこにある物体を避ける余地はあるのだろうか?(急ぎすぎて石の中だったり、その場に居た人と入れ替わりで転移したりする可能性があるのでは?) [一言] 精霊知能「…
[一言] 4次元ポケットスキルを実装しようw
[気になる点] ふと思ったんですよ。 アルマちゃん味覚や食感を共有してるけど、もしかして性的なあれこれ共有しますか?…脳内性獣爆誕したりしますか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ