システムさんの切札
名前 マリアベール・フランソワ レベル1487 ランクS
称号 ソードマスター
スキル
名称 ディヴァイン・ディサイシヴ
名称 居合術
名称 気配感知
名称 環境適応
名称 身体操作
名称 状態異常耐性
名称 精神異常耐性
「つっよ」
「やはりS級ともなれば、レベル4桁も当然ですか」
「才はなくとも私ゃ、70年もダンジョン踏破してるからねえ。御堂ちゃんほどの麒麟児ならそうさね、あと10年くらいでこんくらいにゃなるさね、ファファファ」
御堂さんですら化物級のレベルだったのだが、文字通り桁違いの次元をマリーさんは示してきた。これがS級か……ヤバぁ。
というかこの人、剣士なんだな。居合とはまた、ずいぶんコアなところを攻めるというか。見た目からは想像できないけど、とにかく強いんだろうなあ。勝てる気が一切しない。
『いやいや公平さん? 今現在のあなたでも、スキルがフルに発動したら勝てますよ? モンスターおよび邪悪なる思念特効も30倍までパワーアップしてますし、《誰もが安らげる世界のために》、今なら恐らく50倍まで出力出せますし』
と、リーベが言ってくる。いやそれ、モンスターか邪悪なる思念を相手に、絶対に負けてはならない戦い前提の話でしょう。マリーさんとそんなシリアスな戦いになるとは思えないし、発動できないスキルなんて、ないのと同じだよ、同じ。
『ぐぬぬ……なら、まだ及びませんね悔しいですがっ。でももうちょっとすれば追いつき追い越せですよ! あなたの力は、こんな程度のところで敗北感を味わうものじゃないんですから!!』
お、おう。そうか、まあ無理せず頑張るよ。
何やらヒートアップしている脳内に多少引きつつ、俺は本題に入る。
「それで、俺に反応したっていうスキルは……もしかしてこの、《ディヴァイン・ディサイシヴ》ですか?」
「御明察。詳細はこっちの紙に記載してあるよ。いつ何がきっかけで変な反応を示すか、それこそ一生をかけて待ち続けてきたからねえ」
嬉しそうに皺の刻まれた顔を笑顔にして、マリーさんは一枚の紙をテーブルに置いた。
スキル《ディヴァイン・ディサイシヴ》の効果についてだ。
スキル
名称 ディヴァイン・ディサイシヴ
効果 救世技法/現在封印中
──救世技法? なんじゃそら。
意味の分からない効果に困惑していると、脳内で声が響いた。
『あー……決戦スキル持ちですか。公平さんと接触できたんなら、そりゃ封印は解かれてますねー』
と、リーベの声。おいおい、なんだか不穏だな。
マリーさんを見る。楽しそうに微笑んだまま、彼女は続けた。
「ここに書いてあるとおり、何やら封印中だったんだけどね。君を見た瞬間、音声アナウンスが流れたのさ。《救済者確認、救世技法のロックを解除します》ってね」
「救済者ぁ……?」
「公平くんを、システムさん側も救世主と認めている!?」
思わぬ言葉に、思わず香苗さんが興奮しだすのを横目にしつつ、俺はリーベに問いかけた。
リーベさんや、さっき何か反応してたな? 何、これ。
『んー……と。まあ説明するとそのスキル、決戦スキルと言いましてこちら側の用意した切札なんですよ。あなたの本当の敵、邪悪なる思念の本体を弱体化させるために作られた、謂わばアドミニストレータを補佐するためのスキルですねー』
アドミニストレータを、補佐するスキル? 何ともはや、ずいぶんと重要そうな話が出てきたな……
リーベ、続きを聞かせてくれるかな。場合によっては言葉を選びつつだけど、マリーさんにも伝えないとだし。
『構いませんよ。ええとー、邪悪なる思念の本体は強力すぎて、アドミニストレータだけでは到底、勝ち目がなかったんですよ。ですのでシステムさんは決戦に備えて、ヤツの力を大幅に削ぐ特別なスキルを4つ、用意して人間に与えたんです。ヤツを殺しきるために、ヤツを滅ぼしきるために。それが決戦スキル《救世技法》ですねー』
突如与えられる情報の洪水。うーん、物騒な上に容赦がない。
興奮する香苗さんが、何やら経緯をマリーさんたちに熱弁しているのが見えるが今は無視して、俺はリーベの言葉から情報を噛み砕いて整理した。
アドミニストレータ──俺のことだろう、もはやそこは疑うべくもない──だけの力では、恐らく邪悪なる思念の本体には勝てないとシステムさんは考えた。
そこで、邪悪なる思念の力を一部、削ぎ取るスキルを特別に作り、人間に与えたのだ。それが救世技法なる4つのスキルであり、マリーさんの《ディヴァイン・ディサイシヴ》はその一つだと言うことだろう。
だけど、疑問は残る。
マリーさんは70年前にこのスキルが発現したと言っていた。俺と接触するまでにずいぶん開きがある。これは、一体?
『……決戦スキルは所有者が死ぬか、スキルの使用が困難になった場合、他の資格者に引き継がれる仕組みになっているんですよ。増えることも減ることもない完全に一点物、唯一無二のスキルなんです』
は? スキルが引き継がれる? 別の誰かに?
聞いたことない話だ。スキルは遺伝しないし譲渡や交換もできない。できて精々、取得条件の判明しているスキルについてレクチャーするくらいだと覚えているんだが。
『ええ、普通はそうですねー。ただ決戦スキルだけは、アドミニストレータになり得る人がいつ現れるか、システムさんにもわからなかったので特別仕様なんです。ですから今回、こうして封印が解除されたのも、完全にたまたまなんですねー』
なんだそれは……肝心なところでアバウトというか、出たとこ勝負というか。システムさん意外といい加減だね?
頭を抱えつつも俺は、呆気に取られるみんなに顔を向けた。
この話を投稿した時点で
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