夏休みの昼はやっぱりお蕎麦か素麺かなーって
いつまでも野原にいるわけにもいかないので、俺とリーベも親元の家に帰ることにした。リーベの《空間転移》によって開かれたワームホールをくぐり、見慣れた屋敷の広々した空き地に一瞬で移動する。
時刻は正午を少し回ったくらいで、居間のほうからはテレビの音声と家族や親戚の話す声が聞こえる。察するにお昼ご飯を今から食べるかってところみたいだな。
「なんだかんだまだ食べ足りないってのはあるな……ベナウィさんのこと言えないかな?」
「お酒のおつまみばっかりでしたし、彼とはまた話が違うと思いますよー? 公平さんはあちこちうろついていろんな人と話していましたしー、一か所に座って浴びるほどお酒を飲んでた人と同一視は難しいですねー」
「すごい量飲んでたもんな、ビール」
二次会組筆頭、ベナウィさんの先程までの飲みっぷりを思い返してつぶやく。作戦が終わったあとはひたすら飲みまくってたのになんでそこからまだ、呑み足りないなんて話になるんだろうか。
お酒好きな人ってそんなに飲めるものなんだなあ、単純にジュースに置き換えてもあんな量飲めないよ、俺。
リーベも小腹が空いてますーとか言ってるし、それじゃあなんかつまませてもらおうかなーと玄関から入って居間に向かう。みんな元気そうに騒いでるし、特に何か変わったことがあったわけでもなさそうだね。
神魔終焉結界を解いて私服になりつつ、団欒の場へ顔を出して俺達は挨拶した。
「ただーいまー」
「ただいま帰りましたー! みなさんお疲れ様ですー!」
普通のテンションな俺と、めちゃくちゃハイになってるリーベ。いやこの子の場合これが素ですらあるという大変な陽キャ具合なんだけど、隣の俺が地味だから余計明るく見えちゃうんだね。
朝ぶりに見る一族の皆さんは揃ってざるにてんこ盛り入ったお蕎麦を食べている。付け合わせは例によってお刺身と山菜の天ぷらか、見た目からして空腹を刺激してくれるよ。
「あっ、帰ってきた! みんな、公平とリーベちゃん帰ってきたわよ!」
「おかえり2人とも! どうだった、なんか知らんがうまく行ったか!?」
「兄ちゃんにリーベちゃん、大丈夫だった!?」
「お帰り、二人とも怪我はない?」
まずもって母ちゃん、父ちゃんや優子ちゃんが反応した。それと同時に台所から婆ちゃんが出てきて、心配そうに尋ねてきたりする。
そりゃー心配するよね、呑気な盆休みにいきなり探査者のお仕事だって言って飛び出したんだもの。婆ちゃんだけじゃなく、洋介さん御一家や夏子さんの子供達、二宮夫妻まで不安そうに見てくるほどだ。
申しわけないなあと頭を掻きつつ、せめてもう心配いらないよと伝えるべく俺は答えた。
「うん、大丈夫。俺とリーベはもちろん、誰一人怪我人だって出ずに終わったよ」
「公平さんってばそりゃもう大活躍でしたよー! 昨日家に来たメンバーに加えて、公平さんの探査者友達が総勢なんと50人以上も集まっちゃって! それでみんなで力を合わせて頑張ったんですねー!」
しなくてもいいものを、殊更に俺の活躍とやらを吹聴するリーベ。
たしかに結果としては50人を超える大所帯で力を合わせた形にはなるけど、言っても半分以上は友人というか知り合いレベルだし、ツアークランの探査者の多くに至っては知人の知人みたいな感じでさえあるんだよなあ。
そもそもサン・スーンさんとか神谷さんを友人だなんて畏れ多くて言えるわけもないし。それを軒並み友人ですと言い張るリーベは、なかなか面の皮が厚い精霊知能だと言わざるを得ないよねこれ、怖ぁ……
かなり話を盛ってきた陽キャの口車に乗せられて、リューさんと春香が驚愕の声をあげた。
「50人……!? 嘘だろ公平、いつの間にお前そんなたくさんの友達を!?」
「去年まで知人を5人言うのだって怪しそうだったのに! 大丈夫? 騙されてない!?」
「むごい」
いくらなんでももうちょっとオブラートに包みようがあるだろ、去年までだってさすがに知り合い5人くらいはいたよ!
リューさんと春香の兄妹息ピッタリの俺ディスりに心の汗が止まらない。リューさんのリアクションはまだ分からなくもないけど春香に至ってはもう、俺のことなんだと思ってたんだろうねこいつ!
ぼやきながらも空いてる席、ちょうど夏子さんとリューさんの間辺りにリーベと並んで座る。
と、ちょうど爺ちゃんが追加で俺たちの前、テーブルの上にデデン! とお蕎麦を置いてくれた。すっごい量だ、フードファイトかな? ってくらいある。
俺の頭を大きな掌でわしゃわしゃと撫でて、爺ちゃんが言った。
「公平、それにリーベちゃん。二人ともよう頑張ったなあ……っ!! 腹減ってるだろ、今日の昼は蕎麦だぞ二人とも!」
「ん、ありがと……へへ、ちょうどお腹空いてたんだ。いただくね、爺ちゃん」
「ご馳走になりますー」
褒められてちょっと照れつつ、それ以上に嬉しくて笑みをこぼしつつもお蕎麦を食べ始める。
なんやかや腹も空いてるし、リーベやリューさんもいるならこの量でも割と食べ切れそうな気もするね。
お椀に蕎麦つゆをいれて、わさびなんか溶いちゃって。うずらの卵に刻みのりとネギを突っ込んで、それらに麺を絡めて食べる。
空腹もありすごく美味そうだ……いただきますと呟いて、俺は麺を啜り始めた!
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