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そして親元に帰る俺達

 伝道師の恐るべき使徒増殖計画から全力で目と耳を逸した俺は、最後に帰路についた面々を見送ることとした。

 すなわち香苗さんにヴァール、サン・スーンさん、神谷さんにウィリアムズさんが帰還するのだ……なんでもこの人達、このあと少し打ち合わせがあるそうな。

 

「S級探査者認定式を行うにあたり、御堂香苗のスピーチ原稿をチェックさせてもらおうと思ってな。普段の認定式であれば、我々クラスがそのような確認などするはずもないのだが……」

「御堂氏とは知人であり、かつ先程の様子からも何をスピーチしてくるか知れたものではありませんからな。さすがに国家レベルのイベントでアレをさせるわけにはいきませんので、具に中身はチェックしませんと」

「なんかすみません、本当すみません……どうか真っ当な原稿になるようご指導お願いいたします、みなさん」

「救世主様!?」

 

 懸念される事態、すなわちS級探査者認定式を救世の光勧誘の会に変貌させられることを怖れての措置。香苗さんのスピーチ原稿はなんとも豪華なことで、WSOの重鎮達と先代聖女の手によって確認と修正を加えられるらしかった。

 さっきの姿を見れば間違いなく妥当であるし適切である。認定式には一部マスコミや記者も取材に来るわけなので、下手を打てば世界中に伝道師のアレがS級認定の報せとともに広がってしまうわけだからね。地獄かな?

 

 いかにも不承不承って感じの香苗さんを連行して、ワームホールにて帰還するお偉い方々を心からの敬意をもって見送る。

 頑張ってください! 認定式の雰囲気はあなた方の手にかかっているのです!

 

「むう……信仰を広める絶好の機会をなぜ……」

「なぜと問うてくることにこそなぜと問いたいのだが……まあいい。とにかく話は後で聞こう。というわけで今日はここで失礼するよ山形公平、後釜」

「我が心の友、正彦にもよろしく言っておいてくだされ」

「首都圏ではダンジョン聖教過激派との絡みでまた、連携することもあるかと思います。その時はよろしくお願いいたしますね、山形さん」

「改めまして、あなた方に感謝を。またいつかお会いしましょう」

 

 口々に挨拶してくるワームホールの向こう側、うちの県の全探組のこれは、会議室だね。

 俺とリーベも並んで手を振る。最後に納得いかないとばかりにむくれていた香苗さんも、打って変わって笑顔で俺達に挨拶してくる。

 

「公平くん、リーベちゃん。家に戻られたらお声がけください、またダンジョン探査に行きましょう! お疲れ様でした!」

「ええ、そうですね……! お疲れ様です!」

「ミッチー、お疲れ様ですー!」

 

 倶楽部関係でいろいろあって、最低限しかダンジョンに潜れてないからね。そろそろ通常営業に戻りたいところだし、香苗さんの提案はちょうどよく渡りに船って感じだ。

 お互い、顔を見合わせて笑顔で頷く。そしてワームホールは閉じ、彼女達もまた帰路へと着いた。

 

 ぽつねんと、俺とリーベの二人が野原に残る。

 終わってしまえば寂しさ残る風景だ、さっきまで50人超の大人数で宴会してたのにな。諸行無常ってやつを感じるよ。

 

「終わりましたねー……」

「終わったなー……」

 

 どことなく吹き抜ける風を受け、二人つぶやく。

 いろいろあった半月だけど、これでひとまずは終わったのだ。あと10日ほどしたらまた次の戦いが始まりそうな予感がしてるけど、それはそれとして一区切りはついたわけだね。

 リーベの頭に手を置き、優しく撫でる。

 

「今回も助けてくれてありがとうな、リーベ」

「こちらこそ、いつもありがとうございますー……昨日からいろいろドタバタでしたし、ちょっと疲れちゃいましたねー。お家に戻ったらお昼寝、お昼寝!」

「そうだなあ。体力的にはまるで問題ないにしろ、徹夜までしてるものな、俺達。特にやることないなら昼寝でもしようか」

 

 化物に出くわしたり封印したり作戦会議したり、徹夜でプログラミングしたり作戦決行したり宴会したりと、せっかくの盆休みなのに昨日と今日はひたすら忙しかった。

 でももう良いだろう、ひとまずはフリータイムだ。ちょっと昼寝でもして体力を回復させて、晩ごはんは豪華にお寿司とか言ってたからそれを食べて親族みんなで休みを過ごそう。

 

 

『お寿司か、いいねえ! あ、それはそれとして公平、僕は今回の件で一番の功労者とも言えるアルマさんだけど、お礼として帰宅後は宅配ピザなんて所望するよ。当然従うよね?』

 

 

 と、唐突に脳内に響くアルマの声。

 こいつ、たしかに今回は天地開闢結界のダウンサイジングやスクリプト記述に大きく貢献してくれたけど、思いっきり恩に着せてくるな……

 まあいいけど。助かったのは本当だし、宅配ピザくらいで済むならお安い話だよ。

 

 

『え、そう? じゃあ追加で分厚いステーキに肉汁たっぷりのハンバーグにラーメンにカレーにスパゲッティにシチューにパンにおにぎりに唐揚げに天ぷらにざるそばにあと』

 

 

 そんなに食えるか馬鹿野郎!!

 秒に調子に乗り出しやがった邪悪なる思念さんに一喝して、俺は宅配ピザ2枚くらいならなんとかいけるかなと胃袋と相談しつつ、アルマへの褒美を考えるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] いや伝道師絶対諦めてないゾ 修正済み原稿でのスピーチに 絶対伝道捩じ込んで仕込んでくるゾ
[一言] 「むう……信仰を広める絶好の機会をなぜ……」 いやもう自白してますがな()
[一言] 山形君は称号効果で胸やけも太りもしないんで行ける行けるw
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