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そして帰っていく仲間達

 隣県から来た人達もみんな帰って、いよいよごくごく身内の仲間達が残る湖西地域の広い野原。

 倶楽部との戦いに、ともに立ち向かった者達や関東から来た人達。あとはWSOやダンジョン聖教のお偉い人達まで一箇所に集まって、お祭り騒ぎのあとの余韻残る空気を楽しんでいる。

 

「ふーむ、いささか呑みたりませんねえ。どうです師匠、昼ではありますが二次会というのは」

「えぇ……?」

「大層呑んでいた気がするのだが、まだ足りないのか……」

「この人も将来、肝臓をどうかしちゃいそうですねー」


 ベナウィさんが特に酔った様子もなく二次会を提案するのを、ヴァールやリーベと並んでドン引きの視線で見る。

 結構飲んでたよこの人、サウダーデさんと競い合うようにガバガバ呑んでたのを見たもの、俺。それでもまだ呑み足りないってどんな感じなんだろう、率直に疑問である。


 対して誘われたサウダーデさん、こちらも弟子に負けず劣らず呑んでたと思うんだけど、まるで平時と変わらぬご様子だ。

 そこまでお酒を好むわけではないけど、呑むとなれば相当に呑める質の人みたいだね。そんな彼は、少しだけ考えてからやがて、一つ頷いて答えた。


「相変わらず呑助なやつだ……まあ別に構わんが。俺も特にやることはなく、さりとて酒精を入れた身で寺院の観光というのも気が引けるものでな」

「それじゃ私も参加しようかね、二次会。せっかくだし先輩に葵ちゃんもどうですかい?」

「ハッハッハー、行く行くー」

「はっはっはー! わーいお酒だー」

 

 昼前からもう呑んじゃった以上、そんな状態であちこちうろつくのも気が引けるらしい。それ故と言ったらなんだけど二次会に参加する意向を表明したサウダーデさんに、マリーさんも乗っかった。

 彼女は彼女でチビチビながら呑んでいたけど、やはりまだ足りないらしい。しれっとエリスさんと葵さんを誘って、あっという間に二次会組をそれなりの人数にしちゃったよ。

 隣でぼそっとリーベが呟く。

 

「知りませんよー……無理な飲み方してまた肝臓やっちゃっても、もう治療はしませんからねー」

「後になって泣きついても無駄だからな、マリアベール……せっかく寛解まで持っていけた体だ、永く楽しみたいなら自重と節制に努めることをお勧めする」

「う……ファ、ファファファ! の、ノンアルコールにしときますよ、ファファファ私だってもう齢83だ、成人したてみたいに弁えず呑むようなことはしませんさね、ファファファー!」

「怖ぁ……」

 

 飲む気だったな、この人も……師弟三代でなんて呑兵衛達だろう。特にマリーさんなんて精霊知能二人から釘さされてるじゃん。


 リーベの《医療光粉》にヴァールがサポートする形で治療を施されたマリーさんの肝臓は、事実上寛解状態にまで持っていくことに成功した。

 だけどそれは若かりし頃のようなデタラメな飲み方を再びできるようになったというわけでは決してないのだ。ましてやもう高齢な彼女がそんな呑み方したら、肝臓以前にいろいろ危ない。

 

 その辺もあり割とガチめに忠告する彼女達に、マリーさんは慌てて笑って誤魔化すばかりだ。

 周囲も呆れて彼女を見る中、お孫さんのアンジェさんと相棒のランレイさんもまた、苦笑いして祖母を窘めていた。

 

「いつの間にやらリーベちゃんに治してもらってたみたいだけど、無茶しちゃ駄目よお婆ちゃん。やっと隠居したと思ったら途端に酒の飲み過ぎで倒れるなんて、いくらなんでもワイルドすぎだし」

「えへへへ……わ、私達はもう首都圏に帰りますけど、お体は大切にしてくださいね……」

「孫に諭されるとは、これまた祖母冥利に尽きるのかねえ……というかランレイの嬢ちゃん、あんたこそ飲み過ぎじゃないかえ? 真っ直ぐ帰れるかい?」

「ご、ごご心配なく! わ、私も星界拳士ですから!」

 

 孫娘の心配というのが、もしかしたら照れくさいのかもしれない。つっけんどんに返事しながらも、マリーさんは口元を緩めている。

 あとランレイさんの体も心配してるね……ビール瓶片っ端からラッパ飲みしてたもんなこの人。それこそ無茶苦茶な呑み方と言わざるを得ない姿だったさっきを思うに、しっかり帰れるかどうか不安になるのも無理はない。

 

 しかし当の本人は多少、顔を赤くしている程度で足取りもしっかりしている。なんならリンちゃんばりのすさまじい速度の蹴りを2、3発空中に放つ始末だ。元気すぎるだろ。

 これが星界拳士か、と少なからぬ戦慄をもって眺めていると、やれやれと肩をすくめてヴァールがワームホールを開いた。

 次元の裂け目の向こうに移るのは、ホテルの一室?

 

「あ、私らの滞在してるホテルだ」

「今日はいきなりの呼びかけにも関わらず来てくれて助かった、二人とも。帰ったらシャワーを浴び、水分をしっかり摂取してしばし昼寝でもして酒気を飛ばすがいい。神奈川とステラにもよろしく言っておいてくれ、近々そちらに向かうとな」

「ありがとうございます! か、神奈川さん達への伝言、承りましたあ!」

 

 相変わらずアンジェさんとランレイさんには甘い、ヴァールが優しく微笑み帰路を示す。ついでに神奈川さんとステラへの伝言も頼んでと、部下への気配りもバッチリって感じだな。

 頷き、ワームホールを潜る二人。関西の山奥から一瞬で首都は高級っぽいホテルの室内にたどり着いた彼女達が、最後に俺へと笑いかけてきた。


「じゃーね、公平! あんたも今度こっち来るんでしょ? 一緒にチンピラ集団と笑えないほうの狂信者どもを叩きのめしましょ?」

「笑えないほう……? え、ええまあ。微力ながら協力させてもらいます。よろしくお願いしますね、お二人とも」

「こここ、公平さんが来てくれるなら百人力です! よ、よろしく!!」

 

 笑えないほうということは笑えるほうの狂信者がいるのか。どこのどなた達だろうね、怖くてとても詳しく聞けないや。

 それはともかく。俺が首都に向かうことまで把握済みらしいアンジェさんとランレイさんは、合流を待ち侘びると笑って手を振り、自分達の居場所へと戻っていった。

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― 新着の感想 ―
[一言]  最近だけど地元の駅とかで聖書くばってる人を良く見るようになってね、時期的なものなのかクラブ勧誘みたいだなと思ったよ。はっ!もしかして倶楽部が大きくなれたのも同じような活動をしていたのか!
[一言] 笑えるほうのは蹴散らすの大変そうw 何度でも蘇りそうだしw
[気になる点] なんか…二次会ではエリスさん絡みで騒ぎになりそうな…? ※(外見は未成年にも見える)エリスさんが気になった店員、身分証の提示を求める→つられて全員の身分証を提示→超大物(WSOのトッ…
感想一覧
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