コマンドプロンプトによるスキルトリビア集(厄ネタは除く)
偽りの神の器を倒し、宴会が始まってからはや3時間ほどが経つ。時刻は概ね12時前、お昼時だね。
みんなすでにいろいろ食べたり飲んだりですっかり盛り上がってるけど、ちょっと騒ぎすぎたみたいで全体的に疲れたムードが漂っている。
こうなるとそろそろお開きって感じはあるよね。こないだの終業式のあとに行った焼肉パーティーとかも、最後のほうは大分心地よい疲れからの気だるさでみんな、あうーってなってたし。
頃合いと見たかヴァール、ではなくソフィアさん──1時間くらい前に人格を入れ替えて、以後は彼女が参加していた──が立ち上がり、みんなに告げた。
「みなさん、宴もたけなわではございますがそろそろこの辺で一旦、お開きとしましょうか。本日はWSOの急な要請に応じてご協力くださり、まことにありがとうございました」
『お疲れ様でしたー!!』
微笑み、頭を下げるWSO統括理事。柔らかで美しくもなお威厳とカリスマを放つ彼女の前に、酔っ払ってる人も食いすぎた人も、もちろんそうでない人達もみなシャキッとして居住まいを正していく。
うーん、ヴァールにも出せないこの迫力。人間でありながらも精霊知能とともに150年以上を過ごしたソフィアさんの、こういう統率力こそが統括理事として君臨してきた中で養ってきたものなんだろうな。
さて、帰るとなるとみんなテキパキ片付けていく。お酒飲んでる人達もぶっちゃけ、レベルがそこそこ高いと肝臓機能も強化されるから呑んでもすぐに覚める。
ゴミ一つ残さず清掃して、あっという間に元の何もない野原が広がるばかりの土地に戻った。はぁ、なんかいろいろ終わった感あるな、今ようやく実感が湧いてきた気がする。
倶楽部関係の話も、これで終わりか。
貴重な高校一年の夏休みを大体、三分の一ほど使っての騒動だったけど……終わってみれば大団円になってくれてよかった。
誰も、何も犠牲にならないのが一番だからね。改めて背伸びして身体をほぐし、解放感を堪能する。
「んー……! 終わったぁ〜。はあ、夏休みもあと半月かぁ」
「ハッハッハー、お疲れ様だね公平さん」
「はっはっはー! 学生さんの夏休みは長くて羨ましいです」
「あ、エリスさん。それに葵さんも」
と、そこに今回の件で知り合うことができた素晴らしい仲間達が話しかけてきてくれた。
能力者犯罪捜査官のエリス・モリガナさんと早瀬葵さんのお二人、師弟揃ってのご登場だね。
さっきもそこそこ話をしたけど、改めて今回、倶楽部を追って来日してそのまま、俺と香苗さんの護衛まで請け負ってくださった彼女達への労いを述べる。
「お疲れ様ですお二人とも。終わりましたね、倶楽部との一件も」
「そうだね……でもまだ、サークルだのなんだの関連組織がいるんだから完全解決とはいかないんだよねハッハッハー」
「ちなみに山形さんも首都圏にお呼びがかかってますから、今回の件は終わってもまだしばらくは一緒に行動ってな感じかもしれませんね。その、夏休み的にはアレですけど」
「う……」
残る面倒事というか、厄介者どもの話に絡めて個人的な、ごくプライベートなところでつらい現実を再度、突きつけられてしまった。
残る半月の夏休みもラストスパートの一週間くらい、首都圏行って香苗さんのS級認定式だのサークルやダンジョン聖教過激派の相手だのをしないといけないっぽいんだよなー。
つまりは実質、俺に残された夏休みってば本日8月14日から認定式のある25日あたりまで、ほぼ10日しかないことになる。
ふざけんな! と言いたいところだけどサークルのほうに概念存在の一勢力、悪魔が絡んでるっぽいから捨て置くわけにもいかない。ヴァール直々に頼んできてもいるわけだからね。
そこは仕方ないとするんだけれど……一点、問題が残ってるんだよなー。
俺は頭を掻いてぼやいた。
「困ったなぁ、他はともかく自由研究がまじで手つかずなんてすよ。最悪セミの抜け殻でも集めて標本っぽくしようかと思ったんですけど」
「なんでセミの抜け殻……? 公平さんもたまに不思議ちゃんになるよね」
「自由研究かあ、なつかしいなー。葵さんも若かりし頃やりましたよ、"環境の違いによるスキルの効果の増減"みたいなテーマで、あちこちで《雷魔導》を放って威力を目測で記録してましたねー」
「えぇ……? そ、そういうのありなんですかね、学生的に……」
不思議ちゃん呼ばわりされてしまったことはともかく、葵さん自由研究で普通に探査者であることを前面に押し出してたんだな。
探査者であり、ましてやコマンドプロンプトである俺が自分の専門分野で研究とかしたら、それっていろいろインチキ過ぎやしませんかねと自重してたんだけど……ぶっちゃけもう時間ないし、なんかそれでもいいかなーって気がしてきた。
うーん、悩むなあ。
「自由研究なんだし問題ないでしょう、たぶん。私の時も普通に通りましたし。山形くんもなんかスキルの計測とかしてみたらどうですか?」
「んー……たしかに……そっちのが楽っちゃ楽ではありますね……」
問題がなさそうな内容にする必要はもちろんあるけど、それで通るなら楽なほうが良いに決まってる。そもそもやる気があんまりないし。
スキルの計測とかよりは、俺の持つ知識からサクッと豆知識みたいな雑学をまとめる形にするのもいいかもなあ……
なんかちょっとやむを得ない形ではあるけど、自由研究を探査者方面で行うことに乗り気になってきた俺だった。
本日コミカライズ版ポエミー更新されております!
それを記念して12時にも投稿しますー、よろしくお願いしますー
ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いしますー
【お知らせ】
「攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」のコミカライズが配信されております!
pash-up!
( https://pash-up.jp/content/00001924 )
様にて閲覧いただけますー
能勢ナツキ先生の美しく、可愛らしく、そしてカッコよくて素敵な絵柄で彩られるコミカライズ版「スキルがポエミー」!
漫画媒体ならではの表現や人物達の活き活きとした動き、表情! 特にコミカライズ版山形くん略してコミ形くんとコミカライズ版御堂さん略してコミ堂さんのやり取りは必見です!
加えて書籍版1巻、2巻も好評発売中です!
( https://pashbooks.jp/tax_series/poemy/ )
よろしくお願いしますー!




