界隈の若手を取り込もうとする宗教団体とか危険なのでは?救世主は訝しんだ
いつの間にか、探査者界隈における俺の立ち位置がよく分からないことになっていました。どうも山形公平です。
救世の光はおろか探査者ツアークランの背後にまでついているらしいシャイニング山形とは一体誰のことなんだろう、ヤマちゃん不思議である。
救世の光については百歩譲って認めなくもないよ、実際に黙認の形になってるし。下手な口出しが怖すぎてできないだけだけど。
それでも追加で、探査者ツアーの面々が自主的に集まって作ったクランにまで裏で糸引いてるーとか言われても、うへー陰謀論ー! としか返しようがないのだ。
そのうち世の中のほとんどのことについて俺が関与してるとか言い出す人まで現れるんじゃなかろうか。怖ぁ……
「──つまり、探査者ツアークランこそは救世の光と歩幅を合わせて活動するに値する組織たるにふさわしいということですね救世主様」
「探査者界隈においてはツアークランが活動し、それ以外の対外的な部分においては救世の光が受け持つ。これはまさしく救世主山形公平様の御威光を内外に知らしめる盤石の体制への一歩となると言えましょう」
「言えません」
陰謀論者よりなお恐ろしい伝道師と使徒が乗り気なのがまた怖いよ。
ブルーシートに座って二人、俺を挟んでツアーのみなさんを戦々恐々たらしめている香苗さんと宥さんに俺は即答した。
高木さんや中島さん、鈴山さん、逢坂さん達と別れてとうとう辿り着いたのがそう、伝道真っ最中の探査者ツアー参加組のところである。
そろそろ止めましょうよ! 正気に返りましょうよ! と涙ながらに狂信者を制止しようとしたところ、むしろよく来たな救世主! とばかりに両腕を取られて座り込まれてこの始末だ。
とてつもない美女が二人、左右から密着してくるのでそれは非常に嬉しいというか照れちゃうんだけどね。
ひたすら救世主の威光をうんたら言ってくるので精神的には何も嬉しくない。ツアー参加者のみなさんだって半分ちょい以上は男性だからやっかんでくるんじゃ? と思いきや盛大に気の毒そうな視線を向けてくるだけなので、どれだけこの二人の伝道が堪えたのか分かっちゃいそうなもんですよね、ハイ。
「パッと見うらやましいけど、なぁ」
「中身がアレだと、なあ」
「見ろよ山形のやつ、目が死んでるぜ」
「パック売りされてる魚みたい」
ひどい。つまり死んだ魚の目をしているのか今、俺は。
ツアーの人達の遠巻きな同情と恐怖と戦慄の視線が堪える。この人達とは普段からSNSでやり取りしてるから口さがない言葉の応酬も割とできちゃうんだけど、今この瞬間については止めてほしいの、俺の精神のためにも。
「あー、山形くん。いろいろ大変みたいだが、俺達としちゃあ救世の光とある程度は協力してもいいとは考えてるんだぜ」
「え……新田さん?」
ツアークランのリーダー役、ガテン系の大人の男こと新田さんが苦笑いしながらも俺にそう言ってきた。隣では同じく掛村さんが、女の子に囲まれながらも無言で頷いている。相変わらず恋愛SLGの主人公みたいな人だなあ。
なんならさらにその隣で一人、見るからに暑苦しい人が立ち上がって叫んでいるほどだ。
探査者ツアークラン随一の熱血派、奈良さんだね。
「シャイニング山形!! 世間がなんと扱おうがお前も俺達の仲間だ!! そんなお前を盛り立てる救世の光とだって、俺達は手を取り合って行けるはずだぜッ!!」
「い、いえその……あの、ダンジョン探査用のクランと宗教活動用の組織とではちょっとあまりにも毛色が」
「そんなのバーニング関係ないゼッ! 御堂さんに望月さん、それにあのチェーホワ統括理事やフランソワ特別理事だって絡んでるんなら、問題なく探査者界隈にもその名が轟くぜシャイニングゥ!!」
「……あの二人の名前出すのは反則じゃないですかねお二方!?」
奈良さんの熱い叫び──ツアークランのみんな揃ってうっせえなこいつマジで、みたいな顔をしているのがおつらぁい──を受けて、その内容から伝道師と使徒がやべー名前を引き合いに出しているのを察して俺も叫んだ。
いくらなんでもWSOのトップを絡めて宣伝するのはダメだよ、向こうにも迷惑がかかるし。
サークルだのダンジョン聖教過激派だのがまだ残ってるにせよ、せっかく倶楽部関係については一段落したんだ。
そこに追加で変なカルト宗教絡みのスキャンダルを上乗せするのはあまりに申しわけないんだけどそこんところどう思ってるの?
そんな感じのことを聞いたら美女二人は、動じることなくしれーっとした顔で俺に答えるのだった。
「もちろん許可は得ていますよ、それもついさっきに。WSOを絡めなければ問題ないとのことです」
「フランソワさんも問題ないと笑ってくださいました。もはや救世の光は公平様の探査者活動の基盤として活用すべき規模と段階であるとも。ツアークランに向けての伝道と協力関係の構築についても、お二人からのご意見を受けてのものでもあるのですよ!」
「…………えぇ…………?」
たぶん過去一の困惑だと思う。
ヴァールにマリーさんまでもが正式に認めた挙げ句、なんか俺の基盤とか言い出してしまったのだから。
怖ぁ……
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