救世主も推し活されたりされなかったりする時代です(白目)
実家が神職のアメさん、まさかの救世の光に入信します宣言。
これはヤバい、絶対にヤバい。何をいきなり言い出すのかと、俺も話を聞いていた周囲の人達も唖然として彼女を見る。
清楚さはそのままにどこか、信仰を宿しちゃってる系の瞳の光を備えてアメさんは、俺にニッコリと笑っていた。
「知った以上、私にとって先生は神であり救世主です! 実家を考えると私個人の信仰となってしまいますけど……今日から毎日先生に祈りと舞を捧げます〜!」
「やらなくていいですそんなこと! っていうか考え直しましょう、元々信じてた神様とか怒っちゃいますって!」
「そこか!? 山形も山形でちょっとズレてないか!?」
止めに入るべく説得を始めた俺に、すぐさま関口くんの指摘が飛ぶ。たしかに、いの一番に心配するのがそこかよってのは事情を知らなきゃ言うに決まってるよね。
ただあのー、システム側としては元々、彼女に信仰されてた神から恨みを買わないかが気になるわけでして。
変に厄介事に発展するくらいなら、求めてもないこっちへの信仰なんて投げ捨ててもらいたいところなんだよね。
そんな想いの籠もった説得に、アメさんは元気よく頷いて返事をする。
「もちろん、実家の信仰も大切にいたします……ですがやはり、私個人としてはより身近にいてくださる全知全能の御方をこそ推したいと! ええ、先生はまさしく推せるタイプの救世主様です!」
「推せるタイプの救世主!?」
「アメ姉……すっかりパイセンに染まっちゃって……」
推し活みたいに言い出したアメさんのはしゃぎ方がすごい。怖ぁ……そしてガムちゃん、俺が染めたみたいに言うのを止めて?
駄目だこれ、遠からず使徒が発生しちゃいそうだ。
この人多分早々に伝道師に接触を図るだろうし、そうなると元々が《召喚》について知ってるところを伝えさせてもらってる人なわけなので、香苗さんも宥さんもアメさんを使徒とすることに躊躇はないだろう。
ああっ、ヴァールに続いて4人目ができてしまう! 愕然とする俺に、チョコさんや関口くんと斐川さん、荒巻さんが口々に言ってくる。
「アメさんが山形さんの信者に……うーん。御堂さんや望月さんと繋がりができると考えれば私達にとってもプラス、なのかなあ?」
「あー、そのなんだ……年上キラーも程々にしろよ、山形」
「話がよく見えんが、山形くんが大変そうなのだけは分かった」
「頼むから早口でわけわかんないこと捲し立てるのだけはやめてよ、鹿児島さん」
「えぇ……?」
誰も止めないのか……完全に諦めムード漂うこの空間は早くも終了ですね間違いない。
ガムちゃんもニヤニヤしてるだけだし、アメさんはやはり熱心な瞳で俺を見つめてくるし。なんてこった、美女に見つめられているのにどこかありがたみが薄い。
コホン、と一つ咳払い。
とにかくここは一旦退散して、後日改めて話をしよう。アメさんの思想についてはアメさんの自由とするしかないけど、ここに至らせた始原の4体についてはしっかり釈明を聞かなければなるまい。
しっとりした黒髪ロングのお姉様を怪しげな道に引きずり込んでなんのつもりなんだと、せめて一言文句を言ったって罰は当たらないだろう。
「……ええと、始原の4体と話がしたいので直近でまた、お会いできますかね? いろいろ聞きたいことができましたので」
「あ、はい! 先生のご都合がよろしければいつでも、私の実家の神社に来ていただければ!!」
「そ、そうですか。ありがとうございます……じゃあ明後日の朝にでもお伺いさせてください。明日の昼過ぎに家に帰りますから、最短でも明後日になりますので」
「承りました〜! 一家総出でお待ちしていますね〜!」
「いえ、そんな大層な話ではなく!!」
前のめりに即答してくる彼女が怖い。ノリがすでに宥さんさながらなんよ。
一家総出とか恐ろしいこと言ってるし。娘さんを誑かした俺が姿を見せるとか、下手すると修羅場なのでは? 怖ぁ……
手遅れ感がすごい彼女を複雑な想いで見ていると、ガムちゃんが背中から密着してきて、肩に顎を乗せてくる。
この子もこの子で変に距離が近い! 柔らかくて温かくていい匂いがして困る! 覇王忍者さん離れてよ!
「覇王忍者としてはパイセンに《忍術》修行をまたつけてほしいんですけど。私もお邪魔していいですか?」
「私は構いませんけど……先生、いかがでしょうか〜?」
「内密の話をするから、時間をずらしてから来てもらえるならいいと思うよ。あとねガムちゃん離れよう? 年頃の子が無闇に男にこんなことしないの」
「ともに覇道を歩む仲じゃないっすかーパイセーン。あれあれもしかして意識しちゃってるんすかパイセーン。年下ラヴァーっすかパイセーン」
「いつの間に俺まで覇王忍者に!?」
忍術なんて使えないよ、似たことはできるか知らんけど!
やけに懐いてくるなと思ったら、俺まで同類扱いしていたのかこの子……
困って関口くん達指導者の皆さんを見る。揃って顔を背けられた。なんで?
「今や忍術については山形の、いや年下ラヴァーのテリトリーだしなあ。俺はチョコに剣を伝えるので精一杯だし、うん」
「覇王忍者……どんな忍者なんだかなあ。いやはや若いってのはすごいわ、なあ荒巻。俺らにゃとてもついていけん」
「私もまだ若いだろ! 一緒にすんなおっさん!」
他人事ぉ……
覇王忍者などという、完全なる独自路線を走り始めているガムちゃんにはさしものお三方も、もうどうしたらいいのかお手上げらしかった。
っていうかさっきから年下ラヴァー連呼やめてよ関口くん!
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