使徒が増えるよ!やったね伝道師!!(ヤケクソ)
案内されておかし三人娘のいるスペースにたどり着く。関口くんや斐川さん、荒巻さんもいて彼女達の関係者が勢揃いって感じだ。
みんな興味津々に俺を見てくるんだけど、とりわけアメさんの反応が中々ヤバい。正座して三つ指立てて、深々と頭を下げて俺に言ってくるのだ。
何よいきなり!?
「先生。この度はお呼びいただきありがとうございます。不肖鹿児島天乃、少しでもお役に立てたのならば本望でございます」
「怖ぁ……え、え、何? なんなの関口くん、アメさんえーっと、どうされたの?」
「いや、分からない……香苗さんのあのチャンネルでも見て毒されたんじゃないかと疑ってるんだけど、本人はなんとも」
「毒された」
すごい表現したね今。分からなくもないのが怖いけど。
見れば彼女の指導役である斐川さんに荒巻さんも面食らっているし、パーティーのリーダーにあたるチョコさんに至っては絶句しているほどだ。
なんてこった俺のせいでアメさんがどうかしちゃったのだろうか。俺っていうか俺を崇める例の人達のせいで。うわ、ヤバいよこれ!
いや、だがちょっと待ってほしい。まだ伝道師さんが冤罪の可能性はある。たしかこの人、スキル発動中になんか気になること仰ってたんだよ、始原の御方々がどうのこうの。
なんか気になるから後で確認しようって思ってたのを振り返り、少しの間考える──
そして俺は、アメさんに困惑も露に確認した。
「あの、もしかして。始原の4体を喚び出したらなんか言われました?」
「はいっ……! その、この世界や先生について詳らかにご説明いただきました」
「えぇ……?」
何やってんだあいつら。何を説明してるんだ、アメさんに。
心底からドン引きしてしまう。隣でガムちゃんが心配そうに背中を擦ってきて、アメさんが不安げに近づいてきた。
もちろんアメさんに非なんて一切ないので安心させるように微笑みつつ、内心にて考える。
以前アメさんに教えた、ノーコストで《召喚》できる原初の神々、こと始原の4体。ネムレス、ノナメ、ムメ、ゴンベという、今やなんの役割もなくシステム領域に近しい階層でダラダラやってるだけの、いわば概念存在のプロトタイプだ。
彼らを喚び出して戦力の頭数くらいにはしてみてもいいかもってことで、彼女があいつらを喚び出せるように仕向けたのは俺なんだけど……どうやらそれが思い切り裏目に出たらしい。
「ええと……4体ともが総出で説明したんですか?」
「あ、はい。初めてお喚びした際に、事情を説明したところなるほど分かったじゃあ言うね、と」
「何が分かったんだ怖ぁ……」
何がじゃあなんだか。それでどうして何も知らない新人探査者に、言わなくてもいいこの世の裏側についてあらかた説明してしまったというのだ。
重ねて言うけど何やってんだあいつら。いや別に話すなとは言ってなかったけど普通話すかそんなこと。システム側について漏れることがどんなに危険なことか、分かってなかったのか? そんな馬鹿な。
唖然とする俺を怪訝そうに見つめるみなさん。そしてアメさんだけはしきりに心配そうに見つめてきている。居た堪れない。
よっぽどな顔をしていたんだろう、彼女は俺の手を取り安心させるように微笑んで言ってきた。
「あの、もちろん他の誰にも詳しくは話していません。先生がどのようにお考えになって始原の御方々との交渉権を私に委ねてくださったのか、重々承知しているつもりです」
「え……え? えーっと?」
「御方々は仰っていました。先生がそうしてくださった私であるならば、真実を知る権利があるはずだ、と。先生の弟子として認められた私には、知る義務があると」
いくらなんでもそんなことないよ──つい言ってしまいそうになった口をどうにか噤む。
さては始原の連中め、いらない気を回したな。あるいは面白半分か本気かはさておき、自分達を初めて召喚した鹿児島天乃を相当気に入ったのかもしれない。
元より彼らは概念領域とシステム領域の狭間に位置するモノ達だ。それゆえ両者に対する知識もバッチリ持っているし、500年前から始まった邪悪なる思念との戦いについても事の顛末に至るまでおそらくは把握しているだろう。
そんな連中が、言って良いこと悪いことの判別もつかないとは思えない。それを話すことの危険性を分かった上で、それでもアメさんを話すに値すると判断したのだ。
よっぽど気に入ってないとそんなことにはならない。
これは、俺の読み違えもあったな──始原の4体にそこまで気に入られてしまうほどに概念存在と相性がいいらしい、アメさんを見る。彼女はひどく、申しわけなさそうにしていた。
「先生……その、余計なことを知ってしまった自覚はあります。ごめんなさい」
「アメさんは何も悪くないですよ……こうなることを予期できなかったこちらのミスです。むしろすみません、知らないほうが良いことを知らせてしまって」
「そんなことはありません! むしろこれで、私も決心がついたほどですから!」
「え。決心?」
「え。アメさん?」
申しわけないのはこっちなんだけど……それよりなんだろう、嫌な予感がする凛とした表情を浮かべているよこの人。
ガムちゃんともどもえっ? てなって見る。チョコさんに関口くん達も、何やら言い始めたアメさんに嫌な予感が走ったみたいだ。顔を引きつらせて身構えている。
そしてアメさんは宣言した。
瞳に、どこかっていうかすぐそこでなんか演説してる美女二人にも負けないほどの──狂信の光を宿らせて。
「はい! 私、鹿児島天乃は……今より伝道師御堂香苗さんの元に行き、真なる信仰の徒としての道を歩めるよう弟子入りを志願したく思います!!」
「アメさん!?」
「アメ姉!?」
「アメ!?」
まさかの宗旨変え! 神職の娘さんがそれはまずいですよ!?
今度こそとんでもないことを言い始めたアメさんに、俺達は揃って彼女の名を叫ぶのだった。
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