表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/1843

老人S

 バスが走ること約2時間ほど。俺のスキルの話も程々のところで打ち切られて皆、思い思いに過ごしながらというタイミングで目的地が見えてきた。

 俺はというと、隣の望月さんと和気藹々、日常生活からダンジョン探査についてまでお話している。

 

 ちなみに探査者のみなさんには結局、他のスキルや称号に関しては教えてない。あまり非常識なものをお見せ続けるのもどうかと思ったし、そもそもあまり手の内を晒したいと思う性でもない。

 なによりあのポエミー群を、積極的に見せつける気にはならないしね。なんで? と聞かれてもさあ? としか答えられない領域が多すぎるんだよ、俺のステータス。自分でも説明できないものをひけらかすつもりにはなれない。

 

 窓から見える景色は古都らしい、古めかしい荘厳な建物と最新のビルが整然と並べられている。碁盤の目とはなるほど、都市を上空から見た時にそう表現できるらしいがよく言ったものだと思う。

 隣県の組合本部はそうした町並みの中で一際古い、木造建築式のレトロな建物としてある種、異様な雰囲気を見せていた。

 

「うわー、すごっ。うちの本部とはだいぶ違いますね」

「なんでも築80年以上の、大ダンジョン時代初期の様相をそのまま伝える建物だとか。中には資料館もあったりするんですよ」

「へえ〜」

 

 前回もこのツアーに参加したという、望月さんからの説明を受けつつも俺はこの、趣深い建築物を眺めていた。

 経年ゆえかあちこち老朽化しているが、その都度、補修を試みている箇所が見て取れる。もう取り壊して新築しちゃった方が安く上がるかもしれないくらいなのに、それだけこの本部施設は、この県の探査者たちを象徴する誇りと伝統ある建物なのかもしれない。

 

 バスが2台、敷地内へ入っていく。庭園のような広場を越えたところに大型車専用駐車場があり、そこに停車される。

 やあ、着いたかぁ。バスを降りるとなんだか不思議なもんで、故郷とは違う空気、雰囲気が流れている気がする。ところ変われば品変わるというが、空気まで変わろうものとはね。

 

 降りてすぐに、体を解しがてらストレッチをしていると、バスの1号車から香苗さんが降りてきた。

 そのままこちらにやってきてにこやかに笑いかけてくる。

 

「ようこそ公平くん。私の故郷、いかがです?」

「香苗さん。なんだか、格調高いというか。やっぱり歴史ある感じはしますよね」

「それゆえ変に、頭の固いところもあるのが良し悪しですけどね。ふふ、褒めていただけて光栄です」

 

 生まれ育った実家のある土地を、褒められるのはやはり嬉しいんだろうね。いつにも増して上機嫌の香苗さんに、こちらまで嬉しくなってくる。

 

 さておきまずは組合本部に挨拶だ。ぞろぞろとまとまりなく集まって動く。なんというか、烏合の衆感すごいな……

 本部施設前にて向こうのスタッフさんや探査者さんたちが総出で並び、こちらを待ってくれていた。中央に一人立つおじさんがたぶん、本部長とかそういう立ち位置の人なんだろう。

 俺たちも並び、互いに向き合う。

 

「ようこそおいでくださいました、探査者の皆様。私は当組合本部にて本部長を務める兜と申します。よろしくおねがいします」

「お願いしまーす!」

 

 おじさん……兜本部長の挨拶に一同、声を合わせて挨拶で返す。応えて向こうのスタッフさん、探査者さん一同も、挨拶してきてくれた。うーむ、何となくだが体育会系。

 

 挨拶を終えた後、まずはここの組合本部内にてこのツアーについて説明を受ける。

 今日のところは探査はない。明日、明後日の二日間でそれぞれ午前、午後に分け、グループを変えて探査を行う。

 そのグループというのも半分はこちら側、もう半分は向こう側の探査者で混成パーティだ。踏破するダンジョンの難易度は低いみたいなので、本当にレクリエーションというか交流目的のイベントなんだな。

 

 となれば明日までは探査なしってことで、ひとまずホテルに向かいそこから自由時間なんだが……そこも実のところ、向こうの探査者さんと組んで行動する。

 あくまで交流目的なので、マジで身内だけで遊ぶのはちょっと……と、いうことらしい。まあそりゃそうだ、知り合いだけで遊びに来たんならプライベートでやれって言われる。

 

 てなわけで俺も、香苗さんと組んで相方となる向こうの探査者さんを探す。

 あんまり怖そうな人だと嫌だな、誰か優しそうな人いないかな〜。なんてことを考えつつ香苗さんと周りを見回すと、二人、探査者がやってきた。

 

「御堂! 久しぶり」

「久しぶりだねえ、御堂ちゃん。元気してたかい?」

「鈴山? それに……マリーさん!?」

 

 年の頃、香苗さんと同じくらいの男性探査者。鈴山と言っていたので鈴山さんなんだろう。と、杖を突きつつもえらくガッシリした体格の、80歳は超えてそうなお婆ちゃん探査者。西洋の方みたいだけど、ずいぶん流暢に日本語を話す。

 マリーさんって言うみたいだけど……香苗さんが随分驚いている。どうしたの?

 

「こ、この方は……イギリスにてS級に認定された最上級探査者。マリアベール・フランソワさんです」

「……S級ぅ!?」

「探査者としても最高齢の83歳で、WSOの特別理事にも就任しておられる、界隈の重鎮です。あ、その隣のは鈴山。一応同期のA級探査者です」

「いや、短い! まあ、マリアベールさんの後だし仕方ないけど」

 

 苦笑する鈴山さん。それはともかく、いきなり世界最高峰がやって来て俺ったら超ビックリだ。

 

「話は聞いてるよ、山形公平くん。マリーって呼んでおくれ。ファファファ……なるほど、これはまた、傑物だぁね」

 

 そうやって俺を覗き込むマリアベールさんこと、マリーさん。

 なんか、すごいことになってきたぞ……

この話を投稿した時点で

ローファンタジー日間、週間、月間1位、四半期3位

総合日間12位、週間13位、月間6位

それぞれ頂戴しております

本当にありがとうございます

引き続きブックマーク登録と評価の方よろしくおねがいします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ファファファ笑い···まさかファイナ○ファンタジーⅢ以外でこの笑い方を拝む日が来ようとは(笑)
[一言] てっきり介護用ベッドが変形したロボットにとりこまれて亡き夫のを探してダンジョンをさまよっているのかと思った。
[一言] 老人S(シャイニング)かと思ったがさすがに光るのは山形くんの特権だったか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ