もはや何してもバズるフェーズに移行しつつあるシャイニング救世主さん(15)
アンジェさんやエリスさん達を見ていると、不意にブルーシートの離れたところから何やらざわめきが聞こえてきた。
なんじゃらほい? と見てみると、そこにはとんでもない美女が二人、すごくいい笑顔で探査者ツアーのグループを相手にドヤ顔で向き合って立っている。
銀髪にスーツ姿の美女と、亜麻色の髪に白シャツ、ロングスカートを履いた美女のコンビ。
そう──我らが香苗さんと宥さんがコンビを組んで、慄くツアーグループの方々に向け高らかに宣言していたのだ。
「折角の機会です。伝道を開始しますよ、使徒宥」
「ええ、伝道師香苗。我らが救世主様の素晴らしさを、遍く世に広めるために」
「怖ぁ……」
これはいけない、すっかりと伝道モードになっている!
本来ならばずっと見ていたいくらいにお美しい次元が違うレベルの美女達が、ひたすら目を背けたくなる恍惚とした表情であらぬ方向、まさに虚空を見つめていらっしゃるよ。
これにはツアーの人達もドン引きだ、大人の人達は酒を呑みながら沈痛な表情をしてるし、未成年の探査者さんはお、おう……みたいな顔してスマホを構えている。
動画を撮るのか……伝道師の奇行がまた一つ世に広まってしまうよ。
そうでなくとも春からこっち、凛としたクールなA級トップランカーさんってイメージだったはずの香苗さんは今やすっかり、どこにでもいそうな普通の少年を崇める謎のカルト宗教にドハマりした残念伝道師さんってことになってしまっているってのに。
プライベートでも伝道師としてブレない姿を晒してるのは数多の目撃情報からすでにネットで拡散済みなんだけど、ここでもさらに上乗せされてしまうのか?
「さすがにアレは止めたほうがいいんじゃ……」
「止めてどうにかなるものでもないだろう。というかそろそろこう、言わせてほしいことがあるのだが」
「ヴァール?」
「その、なんだ……もう、そろそろ諦めたほうがいいのではないか?」
「ヴァール!?」
俺の肩を叩きつつ、どこか遠い目をして諭してくるまさかのヴァールさん。やめろよ急に、どうしたんだよお前!?
いかにも諦めの境地というか、本質的に無関係だからか若干面白がってさえいる気がする程度には口角を緩く上げている。そんな彼女は俺にまあ飲めお疲れ様だ、とコーラの入ったコップを勧めてきつつ、思うところを話し始めた。
「客観的に見てももはや、救世の光の勢力拡大は止められる状況にはないぞ。動画チャンネルも150万人を突破しているし、あなたの実力や言動についてもいよいよ世界的に広まりつつある。特に名のあるS級達はすでに御堂香苗の配信を通してあなたを観察、解説する動画を出し始めているほどだ」
「あ、私見ましたよいくつか。みんな真面目に解説して真面目にドン引きしてましたよ、はっはっはー!」
「ドン引きしてたんですか!? こないだまで影も形もなかった俺とか組織とかがなんでそんなところにまで……」
「それだけ世間的に見てもあなたの行動が派手に過ぎた、ということだ。ワタシからしても、ここまで目立つ探査者はこれまでになかったからな」
葵さん言うところの有名探査者の人達による、俺の解説は少し、いやかなり気になるから後で調べて見てみようとは思うけど。
そもそもそんな動画が出始めた事自体が異質といえば異質だ、俺まだなって半年のペーペーだぞ!
アンジェさんが話に乗っかってきて、ランレイさんやマリーさん、エリスさんに葵さんまで興味深げに耳を傾けてくる。リーベに至ってはヴァールと逆の方から俺にもたれかかりつつニヤニヤしている始末だ。なんだこの構図。
この半年に起きた俺にまつわる事柄の、とりわけ世間の認知度の高かった点についてヴァールが語る。
「発端のシャイニング山形、御堂香苗、望月宥。ドラゴン騒ぎを経てマリアベールとの繋がりを得、直後にソフィアやワタシ、ベナウィと知り合った……その時点ですでに日本国内では複数回、いわゆるバズり現象となっていたようだな」
「その時点で大概よね、公平……探査者になって3ヶ月かそこらで人脈がすごいことになってるもの」
「うむ。加えて竜虎大学でフェイリンと模擬戦をしただろう、アレも人気爆発の一助となった。今度は世界規模だ」
「り、リンも言ってました……ビームを出すシャイニング山形さんの姿はネタ的にも美味しすぎるって」
「ネタ扱い!?」
いやまあ、いくら探査者だからっておもむろにビームを放ちだしたらそりゃネタにもなるか。魔導系や魔法系スキルとは確実に違うと分かる形で放っていたからね、俺。
あとリンちゃんの星界拳もバズりに貢献したんじゃないかなとは思う。何せあの蹴りはインパクト抜群だ、本気出したら足の付け根から消えて見えるってなんだよ。
「そして今回倶楽部の件で、"あの"シャイニング山形がまた活躍していると世間に知れた。特に今回マリアベール、サウダーデにベナウィが参戦していたことで各地のS級が一気に反応した形になるな」
「あー……S級の中でも特に有名な師弟ですからね。しかもS級認定式を控えている香苗さんの存在もいつものようにあって、余計に人目を引いたわけですか」
「そうだな、葵。これをもって名だたるS級と何故か肩を並べるシャイニング山形、という構図が改めて浮き彫りになり、いよいよ世界が彼の存在に注目し始めたことになる」
「怖ぁ……」
ぶっちゃけ今回、戦闘って意味ではほとんど何もしてないんだけどね俺。終始アシストに回っていたわけだし、メインで相手してたのは決して表に出せない概念存在とかだし。
だけど世間的には大御所や期待の新星の群れに混じっている謎のルーキーって見えちゃって、それで余計に悪目立ちしたみたいだ。
なんか、いよいよ洒落にならない規模になってきてるなあ……
世界的な話題になりつつあるらしい事態に、とはいえ全然気持ちの追いつかない俺である。
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