風の吹き始めた世界を、一緒に
化物の残骸からウラノスコーポ製っぽい機械部品を、どうにかこうにか回収し終えて俺はみんなの元へと戻っていった。
シャーリヒッタとヌツェンはそろそろ幽霊体だと怪しまれるので帰ってからの凱旋になる。
今回、新スキル《神魔終焉結界─天地開闢ノ陣─》を使用するにあたり負担分散と軽減に大きく寄与してくれた、総勢50人もの友人知人の皆さん方。
俺の、短くも濃厚な探査者人生の中で培い結んできた絆。そして今この時に集いし縁の数々。
かけがえのない仲間達とも言える彼ら彼女らは、すでに作戦成功と勝利を受けてものの見事に盛り上がっていらっしゃる。まるっきり宴会の様相だよ。
「おっ! みんなぁシャイニング山形の御大将が帰ってきたぞー! 統括理事も一緒だー!!」
「うおおおシャイニング!! バーニングだったぜ山形ッ!!」
「サウダーデほどではないが喧しいのがいるな……しかも戦闘中ですらないというのに。知り合いか?」
「ああ、うん。前にお世話になったんだ、頼れる探査者仲間の一人だよ」
みんなして暖かく迎え入れてくれるけど、一人常に騒がしく熱血している奈良さんがとりわけ目立つね。
ヴァールをして直球でうるさいと言わしめるとはある意味すごい。そんな彼は探査者ツアー組のみんなと仲良くブルーシートを広げて座り込み、お菓子やおつまみを食べまくっている。
いや早いよ! なんなら酒瓶とかビール缶とかもあるし、いつ用意した!?
先程までの修羅場が嘘だったみたいに盛り上がる、宴会会場と化したこの現場。どういうことかとヴァールを見やれば、彼女は無表情に薄い笑みを浮かべてどこか、楽しそうに言った。
「作戦が終わったとて、それでは解散とする……では味気ないだろう? せっかく広々した野原を貸し切りにしているのだ、作戦完遂を祝して終了後は軽い野外パーティーでも開こうかと、最初から手配しておいたのだ」
「そ、そうなのか。お前にしては見切り発車だな……失敗するかもしれなかったのに」
「それはないさ。こと今回に関しては確信があった」
前もって祝勝会の準備とか、異様に用意がいいな今回は。さすがにちょっと後先考えてもいいと思うぞ? と思ったものの、ヴァールには不思議と確信が──今回の作戦が成功し、俺たちの勝利って形で終わる確信があったらしい。
俺をじっと見つめて、微笑んで告げる。
「あなたの考えることだ、絶対にうまくいくと信じていた。何より、あなたを慕う者達がこれ程までに集結したのだ。失敗などするはずもない……いつだって物事は、勢いづいたほうに天秤が傾くものなのだから」
「ヴァール……」
「《風さえ吹かない荒野を行くよ》……寒々しい荒涼の大地をただ一人歩まされることになったあなたは、それでも紆余曲折を経て多くの人を希望で照らし、世界を救い、また光とともに絆を集わせた」
俺のファースト・スキルを引用して語る。ヴァールの目は、清々しい達成感と満足感に彩られている。
春先。探査者になり、香苗さんに出会い、アドミニストレータとなった。そうして邪悪なる思念との戦いを繰り広げていき、最後にはコマンドプロンプトとして覚醒した。
そして今。大ダンジョン時代を終えた矢先に迎えた犯罪組織・倶楽部の野望を余すことなく打ち倒すに至るまで……
わずか半年程度ながらも歩んできた道程のすべてを、彼女は振り返って言うのだ。
「この光景こそはあなたが芽吹かせた大地、あなたが吹かせた風。そしてあなたがもたらした時代だ。大ダンジョン時代が終わったことを、今頃になって強く意識しているよ」
「……俺だけじゃなくて、みんなで成し遂げたことだよ。もちろん、お前とソフィアさんも一緒だ」
「ああ────ああ、その通りだな。あなたがワタシ達を引き連れて、みんなで至ったこの瞬間だ」
みんなで一緒に、みんなと一緒に前に進んで来れた。その結果としての今、この時だ。
現世の者達と、システム側のモノ達がともに語らい、笑いあい話し合い手を取り合って問題解決に取り組む。それこそがこれからの時代、未だダンジョンの数多残る世界には必要なものなのかもしれない。
あるいはそこに、概念存在さえも含めて──すべての魂は等しく価値がある。そう信じる。
だからこそ、これからも俺達は互いに力を合わせて時代を切り開いていけるはずだ。未だ残るサークルやダンジョン聖教過激派、あるいは異世界の神の問題に対しても、今回と同じように解決策を模索していける。
そう、心から思う。
「行こう、ヴァール。俺達もまだまだこれからなんだよ。新しい時代を、みんなで一緒に生きていこう」
「…………ああ。ワタシも、あなたも、みんなも。まだまだこれからだ」
さしあたっては目の前にいる、ヴァールと顔を合わせて笑い合う。手を差し出せば、彼女はそれに応えて握り返してくれた。
かつてからこれからへ。新しい時代を託した俺達だけど、まだまだやれることはいくらでもある。なんたって人生って長いしな!
「公平くん! お疲れ様です、成功しましたね! 我々救世の光の完全勝利です!」
「使徒ヴァールもお疲れ様でした。偉大なる救世主様の神話伝説にまた一つ、尊い歴史が刻まれたのですね……」
「怖ぁ……さっそく宗教活動が始まろうとしてる……」
「フッ、これもまた、当たり前の日常ということだろう? 救世主様」
俺の姿を見るやいなや駆け寄ってくる香苗さんと宥さん。
なんかこれ、また伝道ショーが始まる気配がするなあ……ヴァールもちょっと乗り気っぽいけどマジなんだろうか。
苦笑いしながらも彼女たちに手を振る。たしかに言うとおり、これだって俺の、俺達の愛すべき日常なんだ。
まだ見ぬ明日へ踏み出すように──俺は、素晴らしい仲間達の元へと歩き出した!
これにて第二部完結です!ご愛読ありがとうございました!!
あとがきを30分後頃に投稿しますのでそちらも併せてご覧くださいませー
明日からは引き続き後日談のほう更新していきます、よろしくお願いしますー
コミカライズ版スキルがポエミー、本日更新しております!ぜひともそちらもご覧ください!
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