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いつの間にか使徒化していた精霊知能(半月ほどぶり二人目)

 新たなる境地へと至ったリンちゃんの超必殺技・真道天覇星界拳。

 スキルとか一切なくビームを放つという荒業を成し遂げた彼女の全身全霊の蹴りをまともに受けて、あの化物──偽りの神の器はものの見事に爆散した。

 無敵でもなければすり抜けもしてない、座標改竄もできない素のままの肉体では、あの威力の蹴りの乱舞に到底耐えられなかったのだ。

 

「星界拳、天覇のシェン・フェイリン! 今ここに新たなる地平、すなわち真道へと至れり!! これぞ、真道星界拳!!」

 

 奥義を放ち終え、降着したリンちゃんが残心をもって勝鬨をあげる。真道──それこそ彼女が見出した、これからの時代に培われていく新たなる星界拳の姿ということだろうか。

 数多の探査者達の前で惜しみなくその、異質なまでの天才性を披露した彼女。一つの壁を超えて新たな地平を見出したその姿は、いつになく大きなものに俺には見えるのだった。

 

「リンちゃん、すごい!!」

「うおおおおおおシェンさんやべええええええ! 燃えてきたぜ燃えてきたぜ、マジリスペクトだぜえ!!」

「シェン! シェン! シェェェェェェン!!」

「天才……と、一言で呼ぶには失礼だな。才に溺れず鍛錬を重ねた、まさに真道の境地……見事だ、フェイリンさん!」

 

 あちこちでリンちゃんを讃える声があがる。無理もない、今しがた見せたあの技は、探査者だからこそ盛り上がらざるを得ないものだ。

 星界拳と、その正統継承者である彼女がいよいよ世界にその姿、その実力を示し始めたということだろうね。こりゃ今後、リンちゃんの周りも騒がしくなるだろうなあ。

 

 さておき俺はリンちゃんから視線を外し、爆散した化物のほうを見た。そちらへと向かい空から降りつつ、散り散りになったやつの痕跡を具に確認していく。

 モンスターではないから粒子化はしていない……つまりはやつの体内にあったものとかがある程度残っているということだ。ほとんどは蹴りで爆散したわけだけど、何かしら重要なものが残っているかもしれない。

 

 化物だったモノの残骸の前に着地する。千切れに千切れた肉の破片が微かに残る程度の現場だけど、その中でも俺はすぐ、違和感のある箇所を見つけ出した。

 明らかに人工物の、金属の光沢が見いだせるモノが数点あるのだ。慎重に近づき、それを手に取る。

 

「…………小型のエンジンって感じか? これ、やつの体内にあったってこと、だよな」

『明らかに生体的なものじゃないな。推測通りならコレがアレじゃないのか、スキルなんたらかんたらのアレ』

「スキルブーストジェネレータな」

 

 アルマに応えつつ、手の中にある金属片を見る。肉質的なものではありえない、明らかな機械部品。

 これがやつの爆散地点から出てきたってことは、体内にあった可能性が高いってことで。それはすなわち昨日の話し合いでヴァールが指摘してくれた、軍事企業ウラノスコーポレーションのスキルブーストジェネレータテクノロジーの産物であることが予想されるってことでもある。

 

 なんなら同様の金属片がまだ散らばっているから、結構な量がやつの体に埋め込まれていた可能性だってある。葵さんのAMWを見るに一つのジェネレータで増幅できるスキルは一つだけみたいだし、3つ分ジェネレータと思しき金属部品があってもおかしくはないのか。

 丁寧に肉を除き、金属部分のみを集めていく。

 

「なんだろう、発掘調査してる気分だ」

『出てくるのが宝じゃなくて人の業なあたり、君としてもずいぶん複雑な心境みたいだね』

「……技術自体に罪過はないさ」

 

 アルマに見抜かれちょっぴり口籠る。実際、悪の組織のこんな企てに人類の叡智の結晶とも言える技術が用いられていることを、率直に残念に思う気持ちはたしかにあった。

 もちろん、悪いのはこんなことに使う者達であって作られたもの、培われた技術そのものに罪はないんだけどね。そこはバグスキルと同じだ。

 

 それでもウラノスコーポという、製造元が積極的に倶楽部側に協力してたってところはやるせなく感じるよ。

 なんのためにそんなことをしたんだか分からないけど、集まった証拠を受けてしっかりと罪に問われてほしいところではあるね。


 と、せっせと金属を集めている俺にヴァールやシャーリヒッタ、ヌツェンが近づいてきた。

 リンちゃんを讃えるのもそこそこに俺同様、化物の残骸から何かを見出しに来たのかな。

 

「大丈夫か、山形公平。身体の負担はどうだ?」

「ああ大丈夫。まるで問題ないよ、お前のおかげさヴァール」

「何を言う。あなた自身の歩みが集めたこの人員だ、あなた自身の力だろうに…………お疲れ様でした、コマンドプロンプト」

 

 いつになく柔らかな笑みで、ともにしゃがんで俺の手を握ってくる。普段無表情なヴァールのこういう顔、なんだかドキドキするなあ。

 シャーリヒッタやヌツェンも次いで、ねぎらいの言葉をかけてきてくれた。

 

『父様、お疲れ様です……さすがだぜホント、あの厄介極まる天地開闢結界をモノにしちまうなんて! さすがだぜ父様!』

『かつての怨敵の力を利用しての大立ち回り、お見事でした山形様! システム側のみんなにも自慢できます、偉大なる救世主様の神話伝説の新たな1ページに立ち会えたと!』

「ヌツェン!?」

「先程伝道師と使徒からあれこれレクチャーされていたな、そういえば……精霊知能から二人目の使徒か、ヌツェンも……」

 

 あからさまに伝道済みな言動を放つヌツェンに唖然とする。いつの間に入会してたの君!?

 と思えばヴァールが遠い目をして視線を逸しつつつぶやく。どうやら見て見ぬふりをしていたみたいだ。っていうか自分が精霊知能で一人目の使徒だって認識してるあたり、この子もこの子で地味に伝道進んでるよなあ。

 怖ぁ……

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― 新着の感想 ―
[一言] こっち側の子たちは伝道速いぞ~w
[一言] ヌツェン…下地があったとは言え、えらく速い使徒化ですね。 このままシステム領域に帰還させたら…鼠算式に使徒が増えてしまうのでは?
[一言] すぅ~。まあ、元々下地(コマプロスゲーや現世知識)があったからね。 自由意思のもとだから許されてるけど、これシステム領域に対しての思想汚染だよね。攻撃だよね!? ヴェールもアルマ案件が終わっ…
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