燃えよフェイリン！精神的にも物理的にも！！
作戦の第二段階、発動した香苗さんの《究極結界封印術》により俺のスキルが封じられていく。さすがは最終決戦スキルだ、天地開闢結界であるのならば問題なく封じ込めるか。
それに伴い化物の身体からあらゆる権能が消え去り、通常の生物と変わらない因果のみが存在するのを確認した。
狙い通りだ！ 天地開闢結界によるバグスキルの上書き、そしてそこからの権能封印によりあらゆる状態変化を無効にする作戦は、今ここに完成したのだ。
高らかに叫ぶ。
「成功した！ あらゆる結界は剥がれて今、あのモノはなんの力も持たないただの器に過ぎない！」
『極めて弱体化させたとはいえ、やっぱり僕の天地開闢結界を封印されるの腹立つなあ……おい公平、これ終わったらあのスキルをブラッシュアップするからそのつもりでいろよ。こんな不完全なスキル認められるものじゃないし』
アルマが脳内にて愚痴る。案の定、かつて自身の絶対性を確保していた究極の力がこんな形で再利用されたことに不満を持っているみたいだ。
《神魔終焉結界─天地開闢ノ陣─》のさらなる改善を求めてきてるけど、まあ思惑はともかく改良しないといけないのはたしかだと俺も思っているよ。
一人だと使った時点で死ぬようなスキル、おっかなくてステータスに残していたくもないからね。能力だってもうちょい、名前の大仰さに見合う感じにはしたいし。
そう、今言った通りこのスキルで発動する天地開闢結界は本来のものとは違い、恐ろしく弱体化している。
まず無敵状態を付与することは変わりないのだが、持続時間がわずか1分しか保たない。紛れもなく永続だった本家本元とはえらい違いなんだけど、こうしないと消耗が本気で凄まじいことになるからね。
次に発動した時点で俺の身動きが取れなくなる。というのもこのスキルのスクリプト制御に俺の存在そのものを噛ませているので、発動した後に俺が好き勝手動くとその時点で発動が無効になるのだ。
これについてもこうしないと、とてもじゃないけど制御が効かなかったから仕方ない。アルマめ、なんていう権能を使ってたんだかなあ！
『僕の時は4つ分の異世界から得たリソースがあったからねえ。それさえなしにここまで天地開闢結界を制御できているのは、さすがだと言えるよ、コマンドプロンプト。ただやはりまだまだ煮詰める余地はある。今回この作戦に用いるために急造したにすぎないんだから、どうせ造ったんだしもっと突き詰めていこうよ』
脳内のアルマさんのお言葉。たしかにこいつの場合、よそから奪った無限に近しいエネルギーでいくらでも結界を維持できていたからな……今こうしてスキルを制御してるとよく勝てたもんだと実際、信じられない気分になるよ。
そして今後の改善について意気込みを語るけど、たしかに急拵えのスキルではあるからね。たった一晩でこれだけのクオリティに仕上げられたのはさすがはリーベとアルマだと思うけど、時間をかければより完成度の高い形に持っていける可能性だって十分あるのだ。
いわば一夜漬けの試験対策のような出たとこ勝負スキルなわけだね。
しかしてうまいこといったわけだし、この場での目的を果たした以上はひとまずこれで良しとするか。
ここまで来たら残るは最終、第三段階。
リベンジに燃える若き戦士に、すべてを託すばかりだ──！
「あとは極めるだけだ！ 任せるよ、リンちゃん！！」
「我らが救世主様のお力添えと、天より授かりし我が力のコラボレーション！ すべては今、人の身にて神の器を打ち破るため──すなわちあなたのためですシェン・フェイリン！！」
「はいっ！！」
俺と香苗さんのエールを受けて、星界拳正統継承者たるリンちゃんが力強くも叫んだ。
その身体から一気に蒼い焰が吹き出て燃える。体内にて蓄積した生体エネルギー、いわば気というかオーラというかチャクラというかそういうアレが彼女の周りに激しく吹き荒れる！
言っちゃなんだけどいよいよ人間離れしてきたな、リンちゃん！？
「何あれ、えっ……なんもないのに人の体が燃え始めてる、怖っ……」
「ふ、フェイリン……！ 半月前のフェイリンとは全然違うっ！？」
「なんと……！！ あの年でここまでの功夫とは！！」
「ファファファファッ！！ フェイリン嬢ちゃんめ、本当に将来が楽しみな子だよ！」
アンジェさん、ランレイさん、サウダーデさん、マリーさん。
名だたる探査者のみなさんが揃ってリンちゃんの放つエネルギーに驚愕し、その天賦の才が限りないことに強い衝撃を受けている。
いや、アンジェさんだけは至って真っ当にドン引きしてるけど。普通に人体発火現象だからね、怖いよねそりゃ。
「星界拳正統継承者！ 天覇のシェン・フェイリン！！」
「あおいうえいういいおええおああいいえあああ」
「────今こそここに新たな境地、新たな地平を示すッ！！」
完全に無防備となった化物に宣言し、リンちゃんは天高く右脚を挙げた。
ここからが最終段階だ──彼女の星界拳で、偽りの神の器を粉々に破壊する！
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