つながる縁、広がる世界
「あううう……人いっぱい、怖いよぉ……! ささささサウダーデ・かかかか風間さんとかいらっしゃるしぃぃ……! さ、サイン欲しいけどここここ怖いよぉ、帰りたいよぉ……っ!?」
「姉ちゃん、しゃんとする! 星界拳美少女姉妹ユニット、売り出すタイミング!!」
「あっはっはっは! リンちゃんってばしっかりしてるわねぇー!」
「あんたもしっかりしておくれよ、馬鹿孫」
お次はまさかの関東からのゲスト。
能力者犯罪捜査官として首都圏に渡りサークルと戦っているはずの、アンジェリーナ・フランソワさんとシェン・ランレイさんまでもがそこにいた。
それぞれ祖母のマリーさん、妹のリンちゃんと久々の顔合わせに談笑している。
お忙しい中、それでも駆けつけてきてくださったんだ……!
「ふむ……これだけの面々を集めてみせるか、探査者歴わずか半年程度の少年が。やはりさすがは救世主といったところかな」
「サン・スーン事務総長。あなたまで来日されていたとは……それも公平殿の事情についてもご存知の様子」
「うむ、風間くん。私も一応立場上、説明を受ける機会に恵まれたよ。なんなら彼のお父上ともよく酒を飲み交わしているほどだ、ハッハッハ!」
「おっ、羨ましいですねえ。私もミスター・正彦ともう一度呑みたいところです」
サウダーデさん、ベナウィさんと楽しげに話しているのはWSO事務総長のグェン・サン・スーンさんか。
夏休み入ってすぐの説明会に参加してくださった、大物然とした老爺だ。
以来あまりお見かけしなかったんだけど、父ちゃんと飲みに行ってたりしたのか……
なんか最近父ちゃんの外呑みが多いとは思ってたけど、何してるんだうちの父ちゃん! 相手はお偉いさんだぞ!?
「おいおいおい……すごい大物があちこちにいるぞ! あっちにはダンジョン聖教の神谷司教だ! 山形のやつ、いつの間にこんな……!」
「かーっ、山形くんすごいなぁ! 御堂さんのいう救世主ってのも、いよいよ真実味を帯びてくる光景だぜこいつは」
「たった一人の探査者、それも新人のピンチにこれだけの数が駆けつける……もうなんか、格が違うってこのことなんでしょうね」
一方で別なところには関口くん、斐川さん、荒巻さんがいて、有名探査者達の集いを見ては何やらテンション高く盛り上がってるね。
葵さんも含めておかし三人娘の教官役なわけだけど、彼らも応援に駆けつけてきてくれたのか……ってことは、もしかして?
付近を見ればその3人、おかし三人娘もいるのが見えた。やっぱりいてくれたか、相変わらず仲良さげに集まって何やら話している。
というか……どこか緊張してる?
「ちょ、チョコちゃん……先生の危機だから来てみたものの、これって私達、場違いじゃないかしら……」
「た、たしかに……と、とりあえず関口さんの側にいとけばいいだけだとは思うけど」
「ふふーん? 覇王忍者としては大物達に顔を売るチャンスですね。パイセンが用意してくれたこの機会、バッチリステップアップに活かしてみせましょうか」
「ガムちゃん!?」
「なんでこの状況でそんなこと言えるんだろう……」
怖ぁ……覇王忍者が覇王への道を邁進しようとしてるじゃん。
チョコさん、アメさんが周りの先輩探査者達に慄き、すっかり萎縮してるのとは裏腹にガムちゃんだけはこの機会を逃してなるものかと不敵な笑みを浮かべている。
強かだなー。別の意味で戦慄してる二人にもニッコリ笑う、彼女はやはり独特の思考を持つ天才のようにも俺には見えた。
春先に探査者になって以降、歩いてきた道程の中で触れ合ってきた人、ともに過ごした人達が今、こうして勢揃いしてくれている。
シャーリヒッタとヌツェンも呼んでと、ほぼほぼ50名。探査者関係のイベントでもない限り、なかなか集まらないような数が今、この場に集結してくれていた。
すべては俺の新スキルの、負担を極力まで分散するために……!
「みんな……集まってくれたのか……!!」
「ええ、その通り。あなたが辿ってきた足跡、その中で手を差し伸べ続けてきた結果が今、ここに現れているのです」
「香苗さん……」
「伝道師として今日ほど喜ばしい日もありません。改めて我らが救世主が、世界を導くに足る御方だということを再認識できたのですから……!!」
香苗さんがやってきて、心底から誇らしげに言ってくれる。
俺の辿ってきた道、やってきたことの結果がこうしてこの局面を生み出してくれた。その言葉に、俺もどうしようもなく感動を禁じ得ないでいる。
こんなにも、たくさんの人と関わってこれたんだ。
こんなにも多くの人達と、俺は、探査者として生きる中でつながりを持つことができたんだ……!
「ハッハッハー。これもひとえに公平さんが頑張ってきた成果だよ、ねえ葵?」
「はっはっはー! ですねー師匠。人とつながり、世界とつながり、そしてそれらが自分を助ける……本当、素敵な光景です。私もいつか、こんな風になれたらいいですね」
「なれるさ、君なら……いや誰にだっていつだって、チャンスはある。生きることは、つながろうとすることの連続なのだからね」
エリスさんと葵さんも、眼前に広がる光景に笑い合いながらも圧倒されたように言葉を重ねる。
世界とつながる、人とつながる……大仰に聞こえるけど、きっとそれはそんなに難しいことじゃないんだろう。がむしゃらにひた走ってきた俺でも、こんな風になれたように。
自然とつながっていく因果がいつしか、こんなにも大きなうねりになっていくことさえあるのだ。
山形公平というこの俺の、一つの集大成。
つながる縁が創り上げたこの光景を、俺は一生、忘れることはないだろうと強く思うのだった。
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