神だろうが人だろうが、やらかすやつらはやらかす時にやらかすものなんです
朝ごはんは皿いっぱいの卵焼きにこれまた皿いっぱいのウインナー、山芋のとろろと梅干し、漬物、そしてお味噌汁に白米だ。
朝の清々しい空気の中で食べるとやっぱり美味しいね。襖を開けて外が見える開放的な環境なのも日常的ではないから新鮮で楽しい。あ、でも虫が寄ってくるのだけは良くないね。
『とろろご飯美味しいね……これわさびとも合うんじゃないか? ちょっと試してみてよ公平、ああウインナーもちゃんと食べなよ、シャッキリした茹で加減で最高じゃないか』
脳内のアルマがあれこれ言ってくるのを、今回ばかりは素直に従う。なんせ徹夜であれこれ手伝ってもらったからね、ご褒美ってわけじゃないけど今日一日は、食べたいって言ったものは優先的に食べようと思うのだ。
自分用に小分けしたとろろにわさびを入れて醤油を垂らしてかき混ぜ、ご飯を盛った丼に入れて食べる。旨い! ウインナーも噛めば歯ごたえのいい音を立てて肉汁が飛び出し、これもまた美味しい。
「ほらたくさん食べろよ公平、リーベちゃん! これからお偉いさん方と大仕事なんだろ!」
「なんかよく分かんないけど、盆の最中にまで大変ねえ……怪我とかしないでね」
「もちろん、大丈夫。ちゃんと帰ってくるから安心して、婆ちゃん」
俺とリーベがこれから決戦に赴くと知り、じいちゃんがしきりにご飯を勧めてくる。
一方でばあちゃんが不安げな様子で気遣ってくるので、俺は微笑みとともに力強く頷き、安心させようと余裕の素振りを見せた。
やっぱり孫が今から死地へ、なんて怖いに決まってるよなあ。
さっさと終わらせて落ち着かせなきゃな。せっかくの盆を、一年ぶりの親族の集まりをいつまでもこんな空気でいさせたくないし。
決意とともに、そんな話もそこそこに俺達はご飯を食べ終えた。食器を片付け、歯を磨き、準備を整え出陣の構えを見せる。蒼コートの神魔終焉結界にも袖を通しいざ、決戦だ。
「頑張れよ、公平!」
「リーベちゃんも気をつけてなー」
「成せばなる! 気合で行けよ、二人とも!」
「お夕飯はお寿司だからね。絶対に無事で返ってくるんだよ」
一族みんなの見送りを玄関にて受ける。なんと夕食も豪華に寿司らしくやる気の出る話だとにっこりしちゃうよ。前準備に時間をかけた分、決着自体はすぐ終わると思うし、サクッと終わらせて寿司にありつきたいところだ。こればっかりは新スキルとリンちゃんに期待だな。
絶対に無事に、生きて帰る。そしてお寿司を食べてまた、日常へと帰るのだ。そのためにも頑張らなくっちゃな!
「よし、じゃあ行ってきまーす!」
「行ってきますー!」
そして俺達は歩き出した。この近くにある野原にて決戦は行われるため、そこが集合場所だ。到着次第段取りを進めるし、例の新スキルのアップロードと俺のステータスの更新もそこで行う。
あの化物の誘導もそこから俺が行う手筈になっているね。やつの座標は捕捉してるから、空間転移で引き摺り込むなりどうとでもできるから、そこは問題ない。
ただやはり問題は、新スキルがしっかり機能するかどうかってところだな────と?
「称号更新。ワールドプロセッサからもメッセージか」
「当然見てるでしょうし、シャーリヒッタからの話も耳にしてるでしょうしねー」
突然の称号更新。そろそろ来るかな? って思ってたから驚きは少ない。
家の敷地を出て歩きがてら確認する。ワールドプロセッサ、この事態に何を思う?
名前 山形公平 レベル925
称号 人の罪、神魔の驕り。今こそ断罪の時来たれり
スキル
名称 風さえ吹かない荒野を行くよ
名称 救いを求める魂よ、光と共に風は来た
名称 誰もが安らげる世界のために
名称 風浄祓魔/邪業断滅
名称 ALWAYS CLEAR/澄み渡る空の下で
名称 よみがえる風と大地の上で
名称 目に見えずとも、たしかにそこにあるもの
名称 清けき熱の涼やかに、照らす光の影法師
名称 あまねく命の明日のために
名称 風よ、遥かなる大地に吼えよ/PROTO CALLING
称号 人の罪、神魔の驕り。今こそ断罪の時来たれり
解説 そうして見よ、救世は異界の神にも訪れるべし
効果 半径1km内の概念存在の気配を感知する
《称号『人の罪、神魔の驕り。今こそ断罪の時来たれり』の世界初獲得を確認しました》
《初獲得ボーナス付与承認。すべての基礎能力に一段階の引き上げが行われます》
《……肉体を滅すれば、残るはかのモノの魂のみ。漂着したこの世界でなお、利用されている異界の神を救わねばなりません。頼みます、コマンドプロンプト》
…………そうなのか、やはり。称号と解説、そしてワールドプロセッサの声に納得する。
リーベが首を傾げて尋ねてきた。
「どんな感じですー?」
「ああ……逃れ流れ着いた先でもなお、人と神魔に利用されているかのモノを救え、ってさ。どうやらこの世界のモノ達は、異世界の神に対して取り返しのつかないことをしているみたいだな」
半々だとは思っていた。異界の神が主導となってこの事態を引き起こしているのか、あるいはこの世界の人や概念存在がたまたま発見した異界の神を、いいように利用しているのか。
だがこの言い分だと……残念ながら、後者のほうが正しいらしいな。この世界の者達が、悪辣に異界の神を使い潰そうとしているんだ。
あるいは一番の被害者と言えるだろう。
邪悪なる思念に世界を滅ぼされ、命からがら波動の海を渡ってたまたま流れ着いたこの世界にあってなお、身勝手な者達によって利用されている。
そんなかの神にこそ救いの手は差し伸べられなければならない、と。ワールドプロセッサは、そう訴えかけているわけだった。
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