長く苦しい戦いだった……そして案外ウブなリーベちゃん!
そんなこんなで一夜漬けで新スキルを開発した、翌日の朝。
なんとか完成にまで漕ぎ着けた俺とリーベは、得も言われぬ達成感とともに縁側に並んで座り、昇る朝日を眺めていた。
長く厳しい戦いだった……いやマジで、参考にしたものがものだったからめちゃくちゃ大変だった。
元々専門分野と言えるリーベばかりかアルマでさえ、ダウンサイジングに伴う改変作業ではてんやわんやで手こずってたんだからなあ。どれだけとてつもない規模と完成度の術式だったかがいやでも窺い知れちゃったよ。
「けどこれで、どうにかあの化物を封殺できるな」
「ですねー……思ってたよりかはコンパクトに仕上げられましたし、負担も当初予想していたよりもずーっと小さいですよー。それでも公平さん一人じゃ一生もののダメージを受けますから、負荷が大きすぎる場合には発動しないようリミッターかけてますけどー」
『ま、妥当だね。インチキさえなければ雑魚に過ぎないあんな輩相手に、そこまでリスクを負うこともないし』
リーベの言葉にアルマも同意する。今回この二人には本当に世話になったよ。喧々諤々の議論を重ねて、期待した以上の仕上がりに持っていけたのは間違いなく二人のおかけだ。
とはいえやはりリスクの高いスキルであることには変わりなく、一定以上のダメージが一人あたりにかかる場合、強制終了するように制限をかけざるを得なかったのは仕方のないところと言える。
まだステータスにはアップロードしてないけど正式に俺のスキルとして実装することは確定しているわけだし、効果も汎用性こそ低いものの使えなくもない代物ではある。今後、負担を減らすべく折に触れてのスクリプト更新はしていきたいところだな。
一人じゃ使えない上に協力者に分散する形で負担を強いるスキルとかちょっと、さすがにねえ?
「ま、今後このスキルの完成形を目指すにあたってまた二人の協力をお願いすると思うけど、その時はよろしくな」
「もちろんですー! 邪悪なる思念との協力自体は反吐が出ますけどー、そのスキルはまだ未完成ですしねー」
『この僕が手掛けておいて未完成なのは許し難いし、まあ乗ってあげるよ。でもそこの羽虫とか要らないだろ、僕だけでいいって!』
「よろしく頼むぞ、二人とも!」
当然ながら犬猿の仲な二人ににっこり笑顔で笑いかけ、俺は話を終わらせた。もうしばらくはこいつらの言い合いの仲介するのは勘弁かな……
そろそろ朝ごはんの時間だし、親族も起きてきているみたいであちこちから若干の物音がする。徹夜だしいろいろ大変だったしで、お腹ペコペコな俺達はとりあえず戦の前の腹拵えってことで居間に向かうことにした。
「おはよー」
「おはようございますー! 今日もいい天気ですねー!」
「おう公平! それにリーベちゃんもおはようさん!」
快晴の真夏日和、すでに蝉時雨のやかましい中を挨拶すると、じいちゃんばあちゃんはじめ親戚一同がご飯の準備をしながらも俺達を迎え入れてくれた。
けどどこか、視線が生暖かい。なんだろ、ニヤニヤしてる? 怪訝に思っているとリューさんと春香が、めっちゃイラッとくる笑顔で俺に向けて言ってきた。
「昨夜はずいぶん楽しそうだったなあ、二人してー!」
「一晩中二人でドタバタ騒いじゃってもー、何してたの? 不潔よ不潔!」
「…………うん!? いや違うよ!?」
「?」
一瞬、何言ってんだこいつら修羅場も修羅場ってたのにってキョトンとしたんだけど……とんでもない誤解を受けていることに気づいて俺は慌てて訂正を入れる。反面リーベはまるで気づいてないのか、首を傾げてポケーっとしている。
意外にそういう知識はないのか? トレンディードラマは見るのに、なんか偏ってるなあ。などと考えつつも俺は反論というか、釈明を重ねる。
「作戦会議してたんだよ! 昨日言ってたろ、厄介な案件があるって! その対策にリーベの力が必要だったから、それで!」
「顔真っ赤にしてるーぷぷぷー」
「何想像してるんだろねー、フケツフケツー」
「聞けや!」
言われたら連想するに決まってんだろ、ふざけんな!
くう、反応すればするほどドツボだ、ここは耐えるしかない。昔からこの手のからかいが始まるとこの兄妹、普段はそんなでもないくせに途端に息ピッタリになるから困るなー。
「いい加減にしときなさい隆太郎、春香」
と、耐え忍ぶ構えを見せ始めた俺を見かねたか二人の親、真理子さんがやってきてくれた。ピタリと止まるいとこ兄妹。
呆れつつも若干イラついてるっぽい顔で、リューさんと春香を制止してくれる。
「隆太郎、あんた彼女がいないからってモテてる公平に僻んで絡んでんじゃないわよ。馬鹿やってないで受験勉強でもしなさい」
「ぬぐっ……ぐうの音も出ねえ」
「春香……あんたの現状は今までなーんもしてこなかったあんた自身の自業自得でしょうに。こうなったからって拗ねてんじゃないわよ、頑張るか諦めるか腹ァ括りなさいな」
「なっ!? べ、別に私は……!」
「何よりね……仕事で頑張ってる人達に馬鹿みたいな絡み方してんじゃないの。いつまで幼稚でいるつもり?」
怖ぁ……調子に乗ってた兄妹が一発で黙らされてる。うちの母ちゃんのキレ方とはまた異なる恐ろしさだ。
っていうか春香はなんかあったのか、自業自得とか拗ねてるとかなんのこっちゃさっぱり分からん。
とりあえず二人とも悔しそうに呻いていて、面倒なからかい方をされることはなくなりそうってのだけはたしかだった。
「………………………………あっ」
「リーベ?」
「あっ、それってそういう、えっ……あは、あははー! やだもー、えへへー!」
「今さら!?」
そしてリーベが数分遅れで気付いて、頬を真っ赤に染めて俺の背中をパシパシ叩き始めた。遅いよ!?
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