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山形とアルマとリーベのパーフェクトデスマーチ教室

 そんなこんなで解散後、サクッとお夕飯を食べてリーベと二人、俺達は件の化物を封印するためのスキルを製作した。

 コマンドプロンプト本体に接続した俺が編集メニューを呼び出して、テンプレとして用意されてるスキル製作用スクリプトを読み込み、それを編集する形で新スキル創造に取り掛かったのだ。

 俺自身が使うわけだから入力は俺がしている。リーベとアルマはスクリプトを見ながら思ったことを好きに言う感じだな。リーベはアルマの声を認識できないため、俺が仲介する形になっている。

 

『──だからそこの行で3行前のコードに指向性を持たせないと非オペレータ相手に使用した時バグるだろ! 何考えてんだこのポンコツ精霊知能が、今までどういうスクリプトの組み方してたんだこいつ!!』

「ええと……ここで指向性を持たせないと3行前の因果指定先関係で、非オペレータを対象にした際にエラーを吐くから直したほうが良いってさ」

「はー? そうならないように1行後に複数分岐条件を挟んで、意図しない挙動が起きた時のロールバックコードを噛ませるんですけどー? 大体こんなスキルを非オペレータ相手に放つパターンなんて一々個別対応する必要ありますかねー!? あらゆる状況を隙なく網羅して把握する組み方なんて雑多すぎてちゃんちゃらおかしいんですけどー! 完璧主義過ぎて想定外の挙動にひたすら弱っちいスクリプト組んでたんですねー邪悪なる思念さんー?」

『完璧主義とかそれ以前の問題だぞこの羽虫が! 不具合そのものは仕方ないにしても想定できる不具合まで放置するんじゃない、それでもシステム管理者か! 大体想定外の対象への発動なんて真っ先に想定し得る状況だろうが、なんでもかんでも意図しない挙動への対応で済ませようとするな! エラーが蓄積して最悪プログラムが落ちちゃうだろ!!』


 脳内でキレるアルマさんと煽るリーベちゃん。通訳している俺ちゃんはさしあたって問題の箇所以外のところのスクリプトを作成しつつも生暖かい目で二人のやり取りを眺めていた。

 何かしら口を挟むと両方から責められそうで嫌だし、どっちも正論だからどちらかに肩入れってのがしにくいのもある……思考の方向性、つまり考え方や性格の違いでしかないので俺からはなんとも言いにくいのだ。

 

 アルマは完璧完全なるスキルを創るつもりで今、口出ししてくれている。

 ある程度の想定外はもちろん加味した上で、それでもなるべくバグやエラーそのものが発動しないようにと細かく状況を分け、対応できるスクリプトを考えてくれているのだ。


 無論、それはかつてワールドプロセッサだったがゆえの演算能力の高さゆえにできることでリーベや他の精霊知能クラスにはなかなかできることじゃない。

 俺としてもなるほどと感心しつつも、特に予想され得る想定外についてはこちらの方針を優先してコードを打ち込んでいる。


 一方でリーベのほうはより合理的かつ効率的な考え方をしていて、つまるところ致命的なエラーだけ個別対応して他の雑多なバグやエラーについてはまとめて巻き戻し処理を行い、不発の形にすることで対応しようとしてくれている。


 ぶっちゃけると、この世界のスキルの仕様の方向性って大体こっちなんだよね。アルマ式は精霊知能の演算能力じゃ創れないし、何より一つ一つの製作に時間がかかりすぎる。よっぽど特別なスキルでもない限りある程度ファジーに対応できる形に収めたいのは、いかにも現場主義らしいリーベのやり方だと思う。

 俺も実際、考え方そのものはリーベ寄りだしね。だから普通に考えてそんな使い方しねーよ、となるパターンについてはまとめてロールバックして不発という形にして条件付けしているね。

 

 考え方の異なる二人、そのため折に触れて激論を交わしているわけだけど……俺としてはどちらも正しい部分があるしどちらも難しい部分があるため、最終的には俺が取捨選択する方式でスキル製作を進めているのだった。

 

「んー……今回はアルマ式で。非オペレータに間違えて発動するパターンはたしかに対策優先度が高いし、生き物相手な以上は雑に巻き戻しましたで済まされないことも考えられる」

「う……むー、分かりましたー。個別対応に組み込みますー」

『ほら見ろコマンドプロンプトまでそう判断してるんだよ! まったく……いくら世界が違うったってこうまで考え方が違うと腹立つとかより先に困惑が来るよ。どういうんだ、一体?』

 

 アルマが戸惑いも露につぶやく。こいつが喰らってきた世界と、この世界との考え方の差異に面食らってるみたいだ。

 いやまあ、ぶっちゃけそこは世界とか関係なしに個々人の性質による差異でしかないと思うぞ。精霊知能どころか概念存在や人間の中にもお前に近い考え方をする子はいるだろうし、なんならお前より極端な考えを持ってる子だっているかもしれない。


『群体であるがゆえの別個の性質か……完璧であるためにすべて喰らった僕には縁遠い。完全な僕は、一人で完成されていなければならないからね』


 多様性とも言い換えられるな。それら様々な意見や思想をぶつかり合わせることでより、完成度の高いものを生み出すことができるかもしれない。

 今、お前とリーベがそうしてくれているようにね。

 

『…………それもまた、一つの完全なるものへのアプローチ、かもしれないのか。興味深い……あ、そこのスクリプト文法ズレてるよ』

「え? あ、ホントだサンキュ」

 

 そうつぶやくアルマ。完璧、完全を求めるためにあえて不完全なもの同士で協力し合うことの意義について、あるいは今初めて認識したのかもしれない。

 深く考え込みながらも俺に協力してくれるのをありがたく思いながらも、俺とリーベはスキル構築に向けて突貫作業を行うのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 山形くん、リーベにさらっと「アルマ式」って言っちゃってるけど…「名付け」の話は誰にもしてなかったような…? それともシステムさんが精霊知能たちには(しぶしぶながらも一応は)通達してい…
[一言] この状況って、コマンドプロンプト、精霊知能、(違う世界とはいえ)ワールドプロセッサ、三者の共同作業なんですよね…。 システムさんの機嫌がどんどん悪くなりそう…。 作業終了後にシステムさん…
[気になる点] そういえばスキルって生まれ変わると適正変わるのだろうか?  ソフィアとヴァール辺りが転生して驚きの再会とかあり得るのだろうか(きっかけになりそう) [一言] スキル担当精霊知能「お姉さ…
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