同期とつるまない癖にしっかりその世代の顔みたいになってる気まずい男
その後簡単に段取りも決まり、話し合いは概ね終わった。
俺とリーベは化物を封殺するための本命スキルを用意することになったし、ヴァールはスキルの負担を肩代わりしてくれる人達に話をつけてくれることになったのだ。
「スキルの条件に"範囲内のオペレータの総数分、消費を分担する"というのをつけますからー、なるべくオペレータを集めてきてくださいよヴァール」
「分かった。本件に関わった探査者達を可能な限り招集しよう。さすがにそれ以外の無関係なオペレータまでは動員できないだろうが、とにかく頭数を増やす」
「大体オペレータが20人を超えたあたりから、行動に支障が起きないレベルにまで負担が減っていくと思いますー。なのでなんとしてもそれ以上は用意してくださいー!」
「それほどまでの負荷を一人で担おうとしていたのか、公平殿……無茶がすぎるな。そういう時は周りを頼るのも、今後上に立っていくだろう者の責務と思うぞ」
リーベとヴァールの打ち合わせを聞いていた、サウダーデさんが俺に苦言を呈してきた。俺としては苦笑いして頭を掻くしかない。
一応、神魔終焉結界で負担を大幅カットできるはずではあるんだけどね? それを加味しても下手したら死ぬまであっただろうことを踏まえると、なんの反論もできない。
反論できないんだけど……それはそれとして上に立つ者って何?
いつの間に俺は今後、誰かの上に立つような感じになってるんだ。疑問というかただ困惑して彼に尋ねると、筋肉隆々の修行僧スタイルの探査者は強い眼差しと渋い微笑みで答えた。
「未だ自覚はないだろうが……公平殿、君は立派に探査者達を牽引するだけのカリスマがある。近い将来、必ずや君を筆頭にしたニュージェネレーションが集団的に台頭してくるものと、俺や先生、ベナウィは見ているよ」
「えぇ……?」
「ファファファ! 戸惑うのも無理ないさね、この子はそんなつもり微塵もないんだから。だが永年生きてりゃ分かるのさ、望む望まないを問わず上に立つことになる子ってやつの風格がね」
「ミスター・公平は間違いなく遠からずS級になりますが、それだけに留まらず多くの若い探査者達の象徴になるでしょうね。マリアベール様のように、あるいは私の世代のアイオーンと同じように」
「怖ぁ……」
いつの間にやらS級師弟が勝手に俺を見込んできている。やめてよ怖い。
ニュージェネレーションもへったくれも俺、ほとんど同年代と絡みないロンリーボーイなんだけど。明らかに本流から離れてる異端児なんだけど。
いやマジで、探査者の雑誌とかでそういう呼ばれ方してるからね、俺。
なんか"特集! 直近5年間のニューフェイス! "なんつって国内の新人にスポットライトを当てた記事をこないだ見かけて読んでみたんだけど、ものの見事に俺が独立枠になってたし。
なんでも俺の直近世代は繋がりが強いみたいで、主にGWのドラゴン騒動で結託した探査者ツアーの人達が一大勢力になってきてるんだとか。
他にも北海道から東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州に沖縄と各地域で新人達がグループを組み、遠征したり交流したり勢力争いしたりと例年になく活発に行動しているそうだ。
おっかしいな俺もその一人のはずなんだけどな……
記事だと名指しで"シャイニング山形は別枠。彼だけは立ち位置と確認できる人間関係が異質すぎてどの分類にも当てはまらない。救世主バンザイ"みたいなことがつらつら書き並べられていた。
まさかライター信者かよ!? と戦慄しつつも、せめて探査者ツアーの人達に混ぜといてくれよ……と深い悲しみを背負ったのも記憶に新しい話だ。
そんな異端児俺ちゃんが新世代の象徴とか、それこそ同年代の人達から袋叩きに遭っちゃうよ。
そう言うと香苗さんが喜色満面の笑みを湛えて、俺に向かって笑って言った。
「いよいよ我らが救世主様が探査者界隈にてその尊くも偉大な存在をお示しあそばれる時が来たのです新たな時代混迷を極めるニュービー達に光差す進路を示すまさしく導き手となるためにご安心ください我々救世の光とりわけ伝道師たるこの香苗と使徒たる宥リーベちゃんヴァールソフィアさんシャーリヒッタヌツェンほか随時追加されていく信徒達が御身のご活躍を讃え支援し御助力させていただきますとも」
「新人のそういうのにS級が口挟むのずるくないですか!?」
「ワタシはともかくソフィアを使徒扱いにするのはやめてくれ!」
『オレも使徒か? 娘のほうがいいんだけどなァ』
『さ、さすがに世間体的にまずいかと、シャーリヒッタ姉様』
しれっと追加でシャーリヒッタとヌツェンまで使徒扱いしていくスタイル。これもう精霊知能全員使徒扱いされそうだな……あとシャーリヒッタよ、内輪で擬似父娘するのは構わないとするけど世間に周知させようとするのはやめてくれ。マジで世間体が終わるから!
ヴァールもなんだかんだ自分が使徒だと思っちゃってるみたいだし、救世の光は一体どこに向かっているんだろう?
そこはかとなく恐ろしい気分になりつつも、とにかく! と俺は無理矢理、それこそ光ってみんなを強制的に落ち着かせつつも告げた。
「えー、集合は明日10時! それまでに俺とリーベはスキルを用意しますし、ヴァールは探査者を集める用意をします! 決戦はダンジョン内だと人数的に狭いため外界の、近くの野原に誘導して行います! 《玄武結界》封印後はリンちゃん!」
「ん!」
「……君に任せる。あんなインチキ化物、倒せなくても君の強さや星界拳の偉大さはなんら変わりないけど、リベンジしたいと言うなら頼むよ」
「分かりました……!! 星界拳、今こそ新たな境地へ至る時!!」
リンちゃんが力強く答える。《玄武結界》封印中に俺は身動きできないかもだし、事実上の後始末は彼女に任せよう。
そうして今日のところは解散した。明日に備えて、準備しないとね!
ちなみに帰り際、うちの一族と仲間達で集合写真を撮らせていただいた。
なんならサインも貰ったりして、うちの親族もホクホク笑顔だ。なんかすみませんねほんと。
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