いろんな意味でリベンジする気マンマンの娘がいる。怖ぁ……
娘……娘? まあいいか、娘の言葉に大切なことを思い出させてもらった俺は、改めてみんなに協力を願い出た。
俺だけだともしかしたら死んでしまうかもしれない。そんな負担をどうか、みなさんと共有することで少しでも減らしたい、と。
化物が纏う《玄武結界》を、因果操作を用いずして取り外す無理難題を実現する、今のところたった一つのその方法の大きな代償を、みんなで少しずつ肩代わりしたい。
いくら使命を果たすためとはいえ苦痛の伴うだろうその提案は、普通ならばしばらく悩むところなんだろうけど。けれど、仲間達は即答で応じてくれた。
「喜んで協力しますとも! 救世主様と同じ痛み、同じ経験をリアルタイムで共有できる──これほど栄誉なことがあるものでしょうか!?」
「栄誉かどうかはさておき、水臭いねえ公平ちゃん。私らにどんどん頼ってくれていいんだよ、あんたちょっと真面目すぎなのさね、友達だろ私らはさ」
「先生の言う通りだ公平殿。一人で抱えきれない重荷なら、友と分かち合うのが人の世の常。君はコマンドプロンプトだろうが人間なのだ、どうか背負わせてくれ。友として君の、重荷の一部を!」
何やらベクトルの違う興奮の仕方をしている香苗さんはともかく、マリーさん、サウダーデさんの言葉は思いやりに満ちている。
年若い俺を友と呼んでくださることも、気遣ってくださることも力強く励ましてくださることもすべてが優しく温かい。
コマンドプロンプトであるけど人間でもある。そんな俺を心から信頼してくれているのだと、素敵な言葉を投げかけて示してくれていた。
「ハッハッハー、言ったはずだよ公平さん。私達には私達なりに、私達の力で目の前の問題をクリアしていけるって。あなたがそんな風に死を覚悟しなきゃならないくらい頼りないわけじゃないって、このエリスさんが証明してみせようじゃないか」
「はっはっはー! 師匠の言う通りですよ山形くん。そんな一人でしんどい思いしなくても、みんなでちょっぴりずつしんどい思いをすればへっちゃらでしょう。負担の分散、これってば基本ですしね!」
「いやあ、私にも身に覚えがある話ですよミスター・公平。私もうっかりに巻き込まないように一人で探査をしようとしたら、友人達からうっかり自爆でもされたら寝覚めが悪いと止められましたよ。あなたも肩の力を抜いて行きましょう」
エリスさん、葵さん、ベナウィさんも同じく言葉をかけてくれる。ベナウィさん、それは逆にある方面においてまったく信頼されてないのでは……? 思わず訝しむ俺ちゃん。
さておきエリスさんは以前、御堂本家滞在中に俺にかけてくれた言葉を再び引用してくれた感じだ。現世の問題は現世で解決できると、そんな誇りある姿勢だね。葵さんも負担の分散をものともしない、師匠譲りの優しさと強さを垣間見せている。
そしてもう一人、今回奇しくも倶楽部との騒動に巻き込まれる形となってしまったリンちゃんもまた、真っ直ぐな眼差しで俺を見据えた。
「公平さん……無敵、剥がれたらあいつは私が必ず倒す」
「リンちゃん」
「星界拳の屈辱は星界拳で晴らす。そのためならどんな艱難辛苦も背負ってみせる……! どんな負担とて、受け継いできた功夫を否定される苦痛に比べれば取るに足らず!」
星界拳が一切通じなかった、そのことがひどく彼女を傷つけているようだ。気炎を吐いて打倒化物を掲げるリンちゃんの、瞳は使命感に満ちている。
武術家として、星界拳正統継承者として彼女もまた大きなものを背負っているんだ。そんな彼女の決意の言葉に、俺も頷く。
「……任せてくれ。必ずやつの無敵状態は無効化してみせる。だから後のことは任すよ、星界拳正統継承者シェン・フェイリン」
「うん!! ヴァール様、断獄、そして公平さん──これまで戦ってきた中でも最強のお三方をも倒すべく編み出した究極の技で、やつを蹴り砕くっ!!」
「待って? 仮想敵俺なの?」
「ワタシもなのか……敗れたのに……」
断獄以外の二人おかしくない? 今から協力しようって人達が仮想敵に入ってない?
思わずツッコむ。さしものヴァールも唖然としてリンちゃんを見ている。こいつの場合、実際に戦ってすでに倒された後なんだから余計になんで感あるよな。
微妙に釈然としないのはともかく、これでみんなの気持ちも分かった。
本当にありがたい……負担のかかる話だろうに、こんなにも快く応じてくださるなんて。改めて深く感謝する。
リーベがこれならー、と切り出した。
「これなら、どうにか問題ない範囲に収まるかもですー……でもいいんですかー? 改めて言いますけど、一人だと死ぬかもしれない苦痛を少しずつとはいえ、皆さんそれぞれで肩代わりするわけですけどー」
「つまり数が多ければ多いほど負担が消えていくわけです。なんならもっと大勢、連れてきてもいいほどですよ……どうですヴァール、知り合いで協力してくれそうな探査者達も連れてきては」
「ふむ……妙案だな。考えておこうか、どの道今日は無理だが明日には用意できるのだろう?」
みんなで負担を分かち合うなら、そのみんなの数を増やせばいいじゃん! という香苗さんの提案をヴァールが真剣に検討する。なんか大事になってきたな……
明日にできるか? という質問が来たけどこっちは問題ない。元々はリーベの分野でもあるし、あとはそれを流用してスキルの形に組み込むだけだからな。ダウンサイジングして不必要な要素を取っ払うわけだし、なおのこと時間はかからない。
「まあ、元々こちらに再現材料は揃ってますからー……んー、分かりました! リーベちゃんも覚悟を決めます!!」
「決まりだな……よし、それでは明日10時を目処に段取りを決める。作戦はもちろん、山形公平の案通りだ」
『へへ、現世とシステム領域の共同作業パート2だ。腕がなるぜ……!』
『私も微力ながら、が、頑張りますっ!』
粗方の大筋がこれで決まり、あとは細かい段取りを組むだけだ。
シャーリヒッタの言うように現世とシステム側の共同作戦になる。それも多分、動員される探査者の数もすごいことになりそう。
気合、入れていかないとな!
おそらくは倶楽部関係最後の作戦に向けて、俺も腹を括った。
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