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すごい技術って大体ワルにも利用されているよね

「まず最初に言っておきますが……俺にはすでに、やつの正体について粗方の見当はついています」


 話し始め、俺がそう切り出すとこの場の一同が揃って視線を向けてきた。驚き、興奮、興味、好奇心……いずれにせよ俺の言葉を嘘とは思っていない。

 さすがにこんな場面で変な見栄から嘘をつく理由もないからね。そう、俺はやつの正体を看破した。おそらく正答だろうという、確信さえあるほどに。


 もったいつける必要もないし、俺は単刀直入に真実を明かした。

 モンスターとさえ呼べない、因果も魂も持たないあの化物の正体とは、それは。


「……あれは倶楽部によって作られたモノ。やつらがサークルやダンジョン聖教過激派と組み目論んでいた野望の結晶、その一部」

「野望……言ってましたね、たしか異世界の神をこの世に呼び出すとか、神の器とか」

「ええ。あの化物はおそらく、呼び出した異界の神を収めるために創られた肉体です。本来この世界のどこにも存在しないはずのモノをこの世に降臨させるための、ボディなのだと思われます」

「やはりか……調査の結果、試験体と思しいナニカが近畿拠点にいたことは取り調べで判明している。青樹をバグモンスターにして囮にした際、火野の手によって逃されたと予測されてはいたが、まさか越境していたとは思わなかった」


 ヴァールが困惑しきりに、自分達の調査で得た情報と俺の推測を併せてコメントしている。見るからに半信半疑っぽいな。

 だが、そうとしか考えられないのだ。魂がないのも器に過ぎないからだし、因果がないのも本来この世界にあるはずのないモノのための身体だからだし。


 何よりやつの体質──バグスキル《座標変動》《次元転移》《玄武結界》の3つが肉体に組み込まれているのは、異世界の神の規格に合わせたその肉体を、現世に固定化させるために必要だったからだ。

 現世に存在できるだけの規格に、単なる器だけでは到底足りなかったんだろう。その穴埋めに倶楽部3幹部のバグスキルを再現し、補填する形で存在を安定させたのだ。


 突拍子もない発想だけど前例はある。すでに俺はそれを知っている。

 異世界からの遺物たる対概念存在用決戦兵器、聖剣とそれを管理すべく作られた精霊知能、ステラだ。

 彼女は己のステータスを聖剣と紐づけすることで、本来この世のものでないモノの存在を確立させることに成功している。

 それと同様の理屈を用いたのだろう、倶楽部は。


『ちょ、ちょーっと待ってくれよ父様』

「どうした、シャーリヒッタ?」

『存在確立のための要件を満たすために必要な分、連中がバグスキルを利用したってのは分かるがよ……やつらにできんのかそんなこと。いくら権能持ちの概念存在がバックにいるったって難しいと思うんだが』

『シャ、シャーリヒッタ姉様に私も同感です。バグスキルのみならずスキルはシステム側にしか干渉できない領域。人間や概念存在だけでは到底、そんな芸当ができるとは思えないのですが……』

「ん……」


 シャーリヒッタとヌツェンが、困惑も露に反論する。

 たしかに、オペレータのスキルましてやバグスキルを人間や概念存在だけで弄るなんてのは、本来であれば考えづらいところではある。システム側しか把握してない領分だし、権能だろうが技術革新だろうが難しいと思わざるを得ないよね。


 ここについては俺も、正直そんなことできるのか? って思いは少なからずある。システム領域を介さずにスキルを弄れるなんて、いくらなんでも滅茶苦茶にすぎる。

 普通にワールドプロセッサがキレる案件だし、下手するとシャーリヒッタによる粛清だって行われかねない。


 だが、そうとでも仮定しないと説明がつかないんだよなあ、やつがバグスキルを3つ、スキルではなく体質という形で備えている理由がそれ以外に考えつかないのだ。

 思わず口ごもる俺に、ヴァールが挙手をして発言した。


「そこについては我々のほうから提供できる情報がある」

『え……ヴァール?』

「先日火野、鬼島を捕縛した一件についてだ。やつらの隠し拠点を発見できたため調査したところ、いくつかの新事実が発覚した。バグスキルへの干渉、流用についてはそこから類推できることがある」


 そう述べた彼女の顔は無表情ながらどこか厳しい。さっき言ってた新事実ってことなんだろうけど、口ぶりと顔つきからしてあまり面白い話でもなさそうだな。

 倶楽部の隠し拠点をWSOは捜査していたみたいだけど、そこにあの化物についての資料があったんだろうか?


 固唾を呑んで耳を傾ける俺達に、ヴァールは続けて固い声色のまま、言うのだった。


「倶楽部、サークル、そしてダンジョン聖教過激派に対して技術提供を行っていた企業の存在が明るみになった。ウラノスコーポレーション……軍事産業にまつわる大企業で、取り分けスキルの解析や利用に関する技術で革新的な発明をいくつもしている会社だ」

「え……ウラノスってたしか、葵さんの」

「ああ。対モンスター用兵装AMWの開発元であるな。連中はAMWを使用するに際しての、スキルブーストジェネレータテクノロジーを過激派に提供していたのだ」

「…………なんとまあ」


 まさかの繋がり。裏社会のみならず表社会の大企業さえ、連中に関与してたのか。

 葵さんの愛用武器、フーロイータ。彼女の持つ《雷魔導》を増幅させるスキルブーストジェネレータを内蔵するAMWの製造元であるウラノスコーポレーションが、倶楽部に関与していたのだ。


 ダンジョン聖教もだけど、何やってるんだ社会的立場もあるような人達が……

 呆れる俺に構わず、ヴァールは続けて言った。


「そこから見えてくることがある。バグスキルの解析、流用あるいは増幅について、おそらくはウラノスが出処の技術が使われているということだ。バグスキルもつまるところはスキルだ、解析技術に長けたあの連中ならばそのくらいのことはしてのけるだろう」

『システム領域の領分に、人間達が明確に手をかけてきてるってことか……喜ぶべきか嘆くべきか。犯罪なんぞに利用してなけりゃあな』

『スキルブーストジェネレータ……人間はとんでもないことを考えますね……』


 シャーリヒッタや、本職とも言えるヌツェンでさえも感心しつつも呆れ返る技術力の高さとその悪用。

 今のところ推測だけれど、そうなるとあの化物にはスキルブーストジェネレータに近い技術が使われていて、バグスキル体質はそれによるものだと考えたほうがいいのかもなあ。

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― 新着の感想 ―
うわぁ、ウーラノスコーポはやっぱり闇の企業だったか……
[一言]  どんな高尚な目的を持つ組織でも時間が経ち人が増えたり入れ替わるとどんどん腐るからねぇ、悪用されない知識も技術も存在しないとさえ言える、腐らないようなルール作りでわなくて自浄作用をいかに作る…
[一言] ブーストできるってことはアドレス割り出してるんだからコピーもできるよね多分…。
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