倶楽部案件だョ!全員集合!
地上へのワームホールを通り抜けてダンジョンの入口前、リンちゃん達が待つ地点へ向かう。
ヌツェンとシャーリヒッタには一旦お帰りいただいたけど、ヴァール達との話し合いの中でまた呼ぶだろうな。二人とも俺のたどり着いた答え、気になってたみたいだし。
「あおえおあえういおえうええおうええい」
「……2日以内にまた来る。大人しくしてろよ」
呻く化物は一旦放置だ。ああして結界に封印した以上、2日は身動きが取れない──その間、神魔終焉結界を展開し続けてないといけないのがつらいところだが、一応これ着脱できるからね、服だし。
ひとまずの時間稼ぎとしては問題ない、と言ってしまえる程度のことだった。
「ふー。ただいまー」
潜り抜けたワームホールを閉じればすっかり平穏な山の中って感じ。これで目の前のダンジョンの中に、得体の知れない化物がいるのでなければ最高だったんだけどね。
最奥まで行きコアを回収して、脱出することでダンジョンごと消し去れないかと一瞬考えたものの……因果も魂もないアレはおそらく、ダンジョンが消されてもその場に居続けるだろう。
そうなると干渉しづらくなる分、余計にややこしくなるかもしれない。どうあれ2日経てば封印結界も解けるし、そうなるとどこぞかに《座標変動》するのは目に見えてるからな。
「公平さん!」
「公平様! ご無事でしたか?!」
「リーベ、宥さん。ああ、俺は無事です」
待機していてくれた宥さんとリーベが迎えてくれた。近くにはリンちゃんが、宥さんのお仲間さん達に何やらスマホを向けられつつインタビューを受けている。
あれは……動画撮影か? 悪いがもう無理だ、ストップをかける。
「……ごめんなさい宥さん、いきなりで悪いけど今回の件は例の案件に関わってます。動画撮影とか配信は控えてもらえますか?」
「! 倶楽部ですね……分かりました。みんなごめんなさい、ちょっと聞いてくれるかしら!」
以前、翠川の騒動の際にも現場に居合わせていたことのある宥さんはさすがに話が早く、すぐさま仲間達の動画撮影を中止させにかかってくれた。
あの化物を撮影してるかもしれないから、後でWSOやらに提出してもらうかもしれないな。いずれにせよ、決してシャバには出せない類の映像となってしまったのは間違いなかった。
「リーベ。リンちゃんの容態とヴァールへの連絡は?」
「リンリンならそもそもノーダメージでしたが念のため、《医療光粉》で治療済みですー。ヴァールについても治療中、自分のスマホで連絡してましたよー」
「了解。なら、しばらくしたら来るか……みんなへの説明は集合してからでいいか?」
「手間ですしね、了解ですー」
リーベからの説明も受け、ひとまず息をつく。ヴァールのことだ、すぐに動いて対倶楽部メンバーを引き連れみんなで空間転移とかまでしてもおかしくはないな。
なら、それまではこの場で待機か。さっさと解決策が見つかれば良いんだけど、そう上手いこと行くかな……
と、来たか。早いな。
俺の目の前にワームホールが現出し、一同がそちらを向く。事情を知ってる宥さんやリンちゃんはともかく、お仲間さん達はさっきから驚きの連続だろうな、申しわけない。
「しかしフットワークの軽い。こちらとしては助かるけど……」
「────事態が事態だからな、こういう時に迅速に動けるかどうかこそ、上に立つ者の資質と言える」
「ファファファ、ヴァールさんは昔っからとにかくスピード主義でしたねえ」
「ハッハッハー、さすがは長年国連組織のトップを務めるだけのことはあるわけだねー。ヤッホ公平さん、何日かぶりー」
ワームホールから続々と現れる人々、仲間達。
WSO統括理事のヴァール筆頭に特別理事のマリーさん、S級探査者でもある能力者犯罪捜査官のエリスさん。
「はっはっはー! 帰省先でもトラブルに縁があるとかすごいですねー!」
「それだけ物事の中心に近い位置に、公平殿がいるということだろう。時代を象徴する探査者にはよくある話だ」
「あー、私の世代でもいましたねえ何人か。私自身もそうでしたし、師匠の世代でも師匠自身がそうでしたでしょう」
エリスさんの弟子である葵さん。S級探査者師弟でありマリーさんの弟子であるサウダーデさんと、彼の弟子であるベナウィさん。
「──ここが、救世主山形公平様の故郷とも呼ぶべき地」
そして。
最も新しいS級探査者にして、なんの因果か俺を救世主として崇める自称伝道師。
御堂香苗さんその人が最後に現れたのだ。
「すなわち聖地というべきでしょうああ我が心と身体に信仰が満ちていきますいずれどこかのタイミングで聖地巡礼を果たしたいとは思っていましたがまさかこんなにも早いタイミングでそれが叶うとはしかして原因が倶楽部にあることを考えると決して喜ばしいことではなくまして帰省中の救世主様ようやく迷惑組織が壊滅して日常を取り戻したはずの公平くんやただただ偶然探査業に励んでいただけの我らが使徒宥やフェイリンさんが遭遇してしまった災難に乗りかかる形で巡礼を果たしてしまったことにそこはかとない罪悪感を覚えるのもまた事実であれば今回はまことに残念ですが巡礼者としての立ち居振る舞いではなくあくまで探査者および伝道師として日常的な御堂香苗としての振る舞いをメインとしたほうが良いのでしょう聖地巡礼とはそれそのものを目的とするべきなのでありついでの用事程度の意識で行うのは信仰する神そして救世主たる山形公平様を蔑ろにする行為に他ならないのですから今回はそう強いて言うならば下見つまりは本番の聖地巡礼に先駆けてのデモンストレーションと捉えるべきなのですねよく理解しました救世主様さすがとしか言いようのない御神託です」
「何も言ってませんが!?」
「お怪我はありませんか? あなたに会えて幸せですが、あなたの帰省が邪魔されてしまったことを思うと率直に複雑ですね……」
怖ぁ……最初からトップスピードじゃん。
どうやら句読点くん達もお盆ということで帰省中らしい。それはそれとしてと言わんばかりに直後にしれっと普通のテンションに戻るのスイッチのオンオフ激しすぎるでしょ。
まあ、最後の人はいつものこと過ぎて反応に困るけど……
ともに倶楽部と戦ってきた、頼れる仲間達が今また、ここに集結したのだった。
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