遭遇、不穏なるモノ─それはそれとして蹴れるものなら蹴りたい!byフェイリン─
「ダンジョン内に出現した謎のモンスターの足止めに、リンちゃん一人が残ってるらしい! 怪我をしてるかもしれない、治療の準備を頼む!」
「了解です! 《医療光粉》、フルパワーで使えます!」
空中高くを自在に飛び回り簡単に事情を説明する。リーベの返答を聞きながら俺は即座に、宥さん達の気配を感知していた。
そう遠くない山の中腹、宥さんと仲間達だろう5つの気配を掴み取る。
よし。気配が分かれば転移もできる、俺は神魔終焉結界の機能、空間転移を使用した!
「宥さんのいる場所に繋がれ、ワームホール!」
手を翳せば空中に現れる人間大のワームホール。空間の裂け目の向こうには、突然現れた穴に驚くお仲間さん達と動じずに厳しい顔でダンジョンを見つめる宥さんの姿が。
俺とリーベはそのままワームホールへ突入、転移を果たした。山の中、宥さんパーティーと合流したのだ。
「や……山形くん!? そんな、え、今のスキル!?」
「遠くから瞬時に来たのか!? どういう能力だ……」
「そ、それに女の子、翼が生えてる? え? え?」
「公平様、ダンジョンはあちらに!!」
お仲間さんがたが戸惑いも露だ。とはいえ驚かせといて悪いけど今はそれどころじゃない。
宥さんだけがただ一人、迅速に今まで潜っていたらしいダンジョンの穴を指し示した。この中にまだリンちゃんが一人残っていて、謎のモンスターを相手に足止めをしているのか……!
攻撃が通らない、触れることすらできない謎のモンスター。どういう輩なのかは測りかねるが、あのリンちゃんが俺を呼ぶよう指示するほどのモノだ。
彼女の直感で、俺でなければ対処できないと悟ったんだろう。であるなら、そんなのを足止めしている彼女の身が危ない!
「リーベ、ここにいてみんなと待機! リンちゃんと合流次第そちらに送るから、治療任せる!」
「はい! ご武運を!!」
「8階層36部屋のうち、3階層目で遭遇しました! お気をつけて、公平様!」
リーベに指示を投げ、宥さんからの情報も頼りに俺はダンジョンの入り口へと潜っていった。穴の中、階段を一気に駆け下りる。
ダンジョン内、最初の通路に出た時点ではまだオペレータの気配はない。3階層目とか言ってたし、ガンガン先に進まないとな。
これが最奥とかなら空間転移で一息だったんだけど、中途半端な階層だとオペレータの気配のような目印がないとあらぬ場所と繋いでしまいかねない。
今の状況ではそれはむしろタイムラグになっちゃうし、結局全力ダッシュで現地に向かうしかないのだ。
「モンスターがいないだけマシだけどな!」
丁寧にモンスターを倒し切っているダンジョン内を、猛スピードで飛行して進む。
もしモンスターが残っていたとて瞬殺するけど、いないに越したことはないからな。ありがたいと思いつつものの数分で2階層目への階段を発見。
空を飛んだまま階段を猛スピードで降りて下階へ。まだオペレータの気配はない。
「リンちゃん、まさか足を止めて殴り合いしてるのか……? やりそうだな、あの子の性格上」
攻撃が通じない、触れることすらできない。可愛い見た目ながら星界拳正統継承者としてのプライドの塊な彼女からしてみれば、こんなに悔しい話もないだろう。
あるいはどうにか倒せないかと、半ばムキになって抗戦している可能性は大いにある。だとしたらマズイぞ、大怪我しててもおかしくない。
「逸るな、リンちゃん……!!」
頼むから無茶しないでくれと願いながらも、引き続きモンスターのいない2階層目を進む。やはりスムーズに進めて、ものの数分で下階層への階段を発見した。
ここまでで概ね10分もかけていないが、それだけの時間があれば何がどうなってしまっていてもおかしくない。焦る心を抑えて冷静さを保ちつつ、階段を降りて3階層目へ────
「いた! リンちゃん、交戦している!」
『──しぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁっ!!』
降りた途端に感知する気配。同時に階層全体に響く轟音、叫び。良かった、まだ生きてくれている!
案の定、逃げずに撃ち合いを試みているみたいだがまだ健在のようだ。ひとまず安心しつつも俺は、すぐさまワームホールを開いた!
「開けワームホール────」
『くっ──え?』
「────リンちゃん! 無事か!?」
空間の裂け目を開き、見えてきた光景に咄嗟に俺は駆けた。
敵らしき人型の影が、リンちゃんに攻撃を仕掛けようとしているのを見たのだ。そして空間を超え彼女の前に躍り出て、その攻撃を受け止める。
少しの衝撃。戦闘力自体は宥さん達なら余裕で対処できるレベルだろうけど、これは。
間髪入れずにカウンター。《あまねく命の明日のために》で繰り出したビームを敵に向け放ち、吹き飛ばす。
──手応えはない。なるほど、攻撃が通じないってこういうことか。
一旦離れて、リンちゃんの隣に立って様子を見る。
「こ、公平さん!! 来てくれた、助かります!」
「や、リンちゃん。無事で良かった、怪我はない?」
目立った外傷のないリンちゃんが、俺の名を呼び安心したように息を吐く。
どうやら無事みたいだけど……今のやり取りだけでもわかる。かなり危険な状態だったね、リンちゃん。
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