全盛期の救世主神話伝説コピペとか作られてるレベルでネタ扱いされている男
宥さんやリンちゃん達のワゴン車が遠く、道を走って消えていくのを見届けてから、俺は再び親戚達のところまで戻った。
完全にガン見されてたし、間違いなくからかわれるから億劫だぁ。でもまあ、そーです彼女達が僕の自慢の友達ですって自慢するのも悪くはないかもね。
「ただいまー」
「お、おい公平! お前マジかよ、普段からあんな美女美少女とくんずほぐれつしてんのか!?」
「してませんけど!?」
いきなり何言い出すかなこのいとこの兄ちゃんは!? とんでもない馬鹿なことを言い出したリューさんを見ると、顔を真っ赤にして顔を引きつらせている。
何この反応、誰かデマでも吹き込んだの? みんなを見回すと一人、あからさまに顔を背けるやつがいた。ズズーイ、とその子に近づき顔を覗き込む。
「春香くん? 君なんか変なこと言ったろ」
「ふぇっ!? べ、別に……何よいきなり、人のこと疑っちゃって」
「春香ちゃんってば、ネットでよくある公平さんのハーレム救世主伝説を捲し立ててましたよー。いやー爛れてますねーネットの中の公平さんー」
「ネットの中の兄ちゃんフケツー」
「ネットの中の俺ぇ! いやさ違うよ、春香ぁ!!」
何を鵜呑みにしとるんだお前、ネットの噂なんて全部真に受けたら俺は妖怪か都市伝説になっちゃうだろ!
俺も以前、興味本位で調べた結果呆れることになったいくつかの噂──やれハーレム要員だけを集めたマンションがあるだの、才能ある美人探査者は俺を見ただけで惚れてしまうだの──を、思い返しつつ叫んだ。
幸いにしてそれらの噂はガチトーンではないというか、あくまでシャイニング山形伝説みたいな悪ふざけのノリで語られてるのがほとんどだから相手にもしてないけど、リアルでそんな与太話を本気にするやつがいるとは思わなかった。しかも親戚。
何考えてんだとじーっと見つめると、顔を赤くしてボソボソと春香は言い訳をし始めた。
「べ、別に私だって信じちゃいないわよあんな馬鹿馬鹿しい話……でもさあんな、芸能人かってくらいのキレイな女の人達に囲まれてたらつい、思い出しちゃって。ゲームの中だけハーレムなリュー兄をからかってやろっかなーって」
「止めろ! ゲームの中だけとか言うな!」
「そうだ! 最近ゲームでも物足りなくて自分で小説とかも書いてるぞ!」
「…………そ、そうなんだ」
異世界チーレムかな? 聞いてもないのにカミングアウトしたリューさんに微妙な空気が流れる。
受験勉強はどうしたと言いたくなるほど趣味に生きているなあ……夏子さんがあーあ、みたいに苦笑いしてるよ、これあれだな、真理子おばさんの耳に入れるな。
聞いちゃった以上は話すしかないよね、夏子さんの立場としては。受験勉強そっちのけでゲームして創作してってフリーダムすぎる。去年の俺さえ超えてるよ。
あーでも2年後、俺も同じことやらかして同じ目に遭わないとも限らないんだよな。大学進学するとしたらの話だけれど。それを思うと反面教師に思えてきたよ、この人。
みんな微妙な目でリューさんを見てると、自分が鳴いちゃった雉だと気づいたらしい。つまりは撃たれるのが確定してるね。
顔を青ざめてオーノー! と叫ぶ彼をよそに、今度は優子ちゃんが話しかけてきた。
「宥さんにリンちゃん、ダンジョン探査?」
「ああ、この辺の山にいくつかあるみたいだ。そのどれかを探査しに来たんだってさ、動画チャンネルの撮影がてら」
「公平様ーとか言われてたわね、あんた」
と、夏子さんも寄ってきてニヤニヤ笑ってきた。啓太くんと恵ちゃんも一緒で、やはりキラキラした目で俺を見上げている。
どうしたんだろ、やけに期待の眼差しだ。
「本当にシャイニング山形なのねー……ねえ、よければだけどこの子達に光ってあげてくれない? 好きなのよそういうの」
「どういうの? いやまあ、別に減るもんじゃなし構わないけど……」
「! シャイニング兄ちゃん、光るの!?」
「……兄ちゃん、光るの?」
夏子さんのお願いに、啓太くんが特に顔を輝かせる。うーん、こっちのがよっぽどシャイニング。
恵ちゃんもちょっとそわそわしてるし、そんなに見たいものなんだろうか? そういえば御堂分家の子供達も、光って光ってとせがんできてたなあ。
ま、いいかせっかくだし。
ウケ狙い半分で俺は、ちょっと離れてからおもむろに光りだした。
「よいしょー」
「うわ……うわわわー! シャイニング兄ちゃん、光ったー!」
「光った! ピカピカー!」
「わお。本当に光るのね……夜でもこれなら安心ねえ」
あら実用的。夏子さんのコメントはともかく、啓太くんと恵ちゃんのはしゃぎぶりはちょっと楽しい。
光量を眩しすぎない程度に抑えつつ近づき、頭を撫でる。怪人ピカピカ男に捕まった子供達の図だけど、これ近場の駐在さんとかに見られて騒ぎにならないだろうな? ちょっと不安になる。
「うおっ、公平が光った!?」
「しゃ、シャイニング山形……トリックとか動画だけの演出とかじゃないんだ」
「兄ちゃん、すっかり持ち芸にしてるねー」
「宴会の場でもドッカンドッカンウケそうですねー」
リューさんや春香も、初めて生で見るシャイニング山形のシャイニングっぷりに唖然としている。春香さんや、演出じゃないんだなあこれが。
そして優子ちゃんとリーベに持ちネタ扱いされてしまったけど、もうなんかそんなところはあるよね、たしかに。
それもこれもみんなして面白がってくるのがいけないんだ。俺は至極真面目に光ってるだけなのに。
真面目に光るってなんだよ、とセルフツッコミを入れながらも俺はしばらく、その場でピカピカし続けていた。
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