リンちゃん様の美技に酔いな……(恍惚)
まさかの場所でまさかの再会。
宥さんは言わずもがなだけど、まさか彼女に同行してリンちゃんまでもが来ているなんて。驚きの連続で固まる俺に、カンフー少女はにこやかに愛らしく微笑みかけてくる。
次いで車から、宥さんの配信している動画でも見たことのある年上の美人おねーさん方が出てくるのも見つつ、俺は困惑とともにリンちゃんに尋ねた。
「と、特別ゲストってリンちゃんのことなんだね」
「うん! 探査、依頼を受ける時にたまたまお会いして誘われた! 配信に出たら人気者! 私頑張るよ、しぃやぁぁぁぁぁぁっ!!」
たまたま会ってたまたま誘われてってことか。これで相当な目立ちたがり屋でもあるリンちゃんには渡りに船の声がけだったろう。
やたらやる気満々に星界拳特有の、早すぎて足の付け根から先か見えないほどに早く鋭い蹴りの連打が放たれる。
うーん、実力が上がってる……
最終決戦後、いや大学で模擬戦した時より一段も二段もキレを増しているのは、テンションが高いってだけが理由じゃなさそうだ。毎日鍛錬してるんだろうね。それもモンスターとの実戦の中で。
わずか短期間でも驚くほどに成長する、それがこの子の一番すごいところだと思うよ。宥さんのパーティーメンバーのお姉さん方も、唖然として蹴りをぶっ放すリンちゃんを見ていたりするし。
初めて見るのかな星界拳。初見はまず間違いなく呆気にとられるよね、漫画みたいなこと普通にやってるんだものなあ。
「え、すご!?」
「あ、足が消えるくらい早いんだ……やっばぁ」
「やっぱすごいね彼女! こんなスゴイ技を撮れたらもう、それだけでバズっちゃうかもよみんな!」
そして口々に驚愕と、そして期待と興奮に染まった反応を示すみなさん。
探査動画を撮影しに来て、しかもゲストはリンちゃんと来た。そりゃー期待するよね、どんな神業が披露されるのかって。
実を言うと竜虎大学で行った、俺との模擬戦が動画サイトにアップロードされてからというもの、ネット上でのリンちゃんの人気は日増しに高まってきていたりする。
単純にめちゃくちゃかわいい女の子がめちゃくちゃとんでもない動きで蹴ったり跳ねたり飛んだり、挙句の果てにはなんか気功エネルギー的なアレで燃え始めるんだもの。人気出るに決まってるよねそんなの。
まあもっとも、模擬戦の相手がいろいろ噂ばかりのどこぞのシャイニング山形さんなせいで、極々一部ながらネットユーザーの中であらぬ方向に話が飛んでたりするんだからやっぱりネットって怖いよね。
リンちゃんも救世の光信者だとか、ハーレム救世主のハーレム要員じゃないのかとか、ロリコン救世主野郎許すまじとか、幼女から老婆まで誰でもいいのかとか……
リンちゃんへと言うか、ほとんど俺への罵詈雑言じゃねーか! って感じのコメントをたまーに見かけたりする始末だ。
本当にごく一部なので好きにしたら良いけど、ほどほどに、ラインを超えない程度にしといてほしいかなってのは正直思うよね。お互いのためにも。
ネチケットって言葉を昔に見聞きしたことがあるなあ……などと思っていると、宥さんにお仲間さんの一人が話しかけているのが見えた。
クール系の美女さんだけど、やはりリンちゃんの美技に酔いしれたみたいだ。ちょっと興奮した感じで、早口で語りだしている。
「宥に感謝だね。まさかA級の超新星、あのトップランカーであるシェン・ランレイさんの妹でもある彼女と知り合いだなんて」
「感謝するのは私ではなくこちらの救世主、偉大なる山形公平様にするべきよ? 公平様こそが私とフェイリンさんとの間に縁をもたらしてくださった、まさしく縁結びのお力をもお持ちの御方なのだもの!」
「へ、へぇ……」
「そ、そーなんだー……」
「誤解です! 著しく甚だしく誤解です!!」
おっと返り討ち。すかさず俺への称賛の言葉を並べ立てる救世の光幹部、伝道師に次いでの第一使徒さんの毎度ながらのお言葉にパーティーメンバーの方々はスンッてなっている。
強制的にテンション下げられちゃってるよ怖ぁ……誤解だと叫ぶも、振り向き俺を見る皆さんの顔はどこか怖怖としていらっしゃる。
"ああ、例のあの宗教の人達が崇めてる救世主さんだったね……"みたいな目をやめてほしい。即刻やめてほしい!
というか縁結びの権能なんて持った覚えないよ! 概念存在じゃあるまいし!
なんとも反応に困りながらも、俺は咳払いをしながらも必死で話題転換を図ることにした。
「え、ええと! えーごほん! あの、ところで皆様が宥さんのパーティーメンバーの方々で?」
「え……あ、ああはい、うん。そうだよ、えっと、救世主さん」
「ごめんね名乗りもせずにドン引きしちゃって。せめて名乗ってからドン引きするべきだよね、うん」
「ドン引きしないで?」
見事に俺にもドン引きしているっぽい美女達。俺は別に何もしてないんですけど!
でも気持ちは分かるよ、ドン引きしちゃうよね、うん……かく言う俺自身も、伝道師や使徒の奇行には度々困惑しがちだからか、それなりに気持ちが分かってしまう。
何回怖ぁ……って言ったか分からないよ。いやまあ、元からの口癖だから伝道師に関係あろうがなかろうが怖ぁ怖ぁと鳴いてるんだろうけども。
まあ、本人達が楽しくやってくれているんだから俺としては何も言いはしないけど、と達観の域に至りつつ。
ともあれ自己紹介しなくちゃねと、俺は彼女達と向き直った。
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